投げだしたい気持ちとその気持ちの裏側
父の、ため息が聞こえる。
父の、ため息に上書きするかのように、私のため息。
同じ話しの繰り返し。
わかっている、
私だって、いつかは通る道。
買い物を届けると
『ベッドを移動させてくれよ!』と父。
「私これから、仕事なんだ」
………(聞こえないふり)
はあ〜、やっぱりか。
何をどう言っても、聞き入れないのである。
やるとなれば、周りがどんな状況であっても、我を通す人だった…。昔からだ。
ベッドを解体する、
ほこりで、咳がでる。
(喉がいたい)
敷いていたゴザをはがす。
昔ながらの足の長い画鋲が
かたまって、抜けない。
なんだか、
悲しくなってきた。
母のものが、ひとつずつ、
消えていく。
私は仕事をキャンセルしたイライラもあり、
手を出す父に、
「危ないから、手を出さないで!離れてて!」
離れて欲しい…今の私の気持ちだった。
ベッドの枠組が重い。
腰の悪い私には悲鳴だ。
と、
何か痛みが走り、
何だか変だ。
ふとみると、
左手中指から血が…
そうです。
お察しの通り…
爪が剥がれました。
(まぢかよ!痛い…)
父は、私の事に気づきもしないで、
指示をだしている。
ああ〜逃げだしたい。
私が離婚をしたとき、
(理由はDV)
父は、私をけなし、
お前は俺のお荷物だ!
消えろ!(略)
と、言った親父の怒鳴ったあのときのことは、
もう水にながしたつもりだった。
そんな私の気持ちなんて
これっぽっちもわからず、
認知の病院で、父は医師に
『なんでもしてくれるんですよ』
と、
私のことを自慢している。
親父よ、
老いていく姿をみて、
1人にはさせられないと
思う反面、
私は
逃げだしたい気持ちでいっぱいなんだよ。
医師が「デイサービスや、ショートステイをやってよ。
娘さんが、かわいそうだよ」
と父に、言ってくれた。
(同じ医師が私の担当医)
その帰りの道のこと
デイサービスに行くと決めたのだった