「あなたに日本は合わない」と言われてきた
私が学生時代「大学は日本で行きたい」と話すと、現地人にいる日本人たちは口を揃えて「え〜?あなたはこっちで大学行って就職したほうがいいんじゃない?」と言っていた。「日本は本音と建前がすごくあるし、人間関係も希薄だし、いじめもあるし」と引き留めた。「仮に帰るとしても帰国子女が多い大学にしといた方が良いよ」とICUの帰国子女オンリーのクラスに入ることを強く勧められた。
ある日、高校でアメリカ人の友達に「日本に行ったら帰国子女はいじめられるってみんな言うんだけど…どう思う?」と相談すると「俺も同じだよ。アメリカに一時帰国してた時いじめられたよ」と話し始めた。「異分子が煙たがられる」のは「日本だから」ではないことを、彼の話を聞いて、初めて知った。
実際に日本に帰国し、比較的国際色豊かとは言えない大学に入ったが、帰国子女は嫉妬されて煙たがられる…なんてことは一切なかった。むしろ私がこのnoteに書いているような地元の事件簿や社会の雰囲気を語ると「そうなんだ!イメージ変わった!」「リンジェさんの話面白いね。聞いてて飽きないよ」といった感じでむしろ歓迎された。
「東京は閉鎖的で人間関係が希薄。」これは東京に住む人でも実感する部分はあるのではないか。満員電車では鮨詰めで身体的距離は限りなく近いのに心的距離は遠い。とても不思議な街だと思っている。一方で、就職活動の一環で行っている会社では意外なことに上長の方が私の父を知っていることが発覚して話が広がったりと、密なネットワークがあることも知った。
距離が近いような遠いような、その不思議な感覚は私は大好きだ。くだらないことで見ず知らずの人が介入したりヤジを飛ばしたりしてこないし、好きな服装で出歩けるし、でもいざ人に助けを求めるととても親切な人が多い。ものは捉えようだと感じている。
本音と建前は確かにある。でもこれは世界のどこだって一緒なのだ。アメリカ人が陽気に"How are you doin'?"と聞いてくるのはフレンドリーさで挨拶しているのではなく「お前何者なの?怪しいやつじゃないよね?」と疑ってかかっているからだ。私の地元も大体そんな感じで、挨拶しない人はひどく毛嫌いされる。治安の悪い場所こそ本音と建前は必要で、お互いに「探り」を入れるのである。
日本人の本音と建前もお互いのコミュニケーションや人間関係を円滑するために存在していて、別に日本人に特有のものではないと、私は考えている。
日本から出てきた日本人がくれるアドバイスは「日本は窮屈だから」という前提で成り立っていることが多い。理由は簡単で、彼ら/彼女らは日本社会が合わなかった人たちで、その人たちに「海外で育ったが日本に行く」と言えば「やめた方が良いんじゃない?」と忠告してくるのは自然だ。
そもそも忠告してくる人は意地悪ではなくあくまでも親切で言っていることは踏まえておきたい。でもその人たちの言うことを聞いて地元に留まっていたら私の精神障害は悪くなる一途を辿っていたと思うし、日本人のマインドセットや文化を正しく理解できなかっただろうし、その後日本でしたたくさんの素敵な出会いにも巡り会えなかった。
自分の道は自分で決める。自分の道は自分で切り開く。
これは精神を病んでいたり、迷いがある時こそ重要な考えであり、自分の人生をより良くするために必要な選択だと実感している。自分の環境を変える必要性が出てくる時期というのは人生で必ずあるはずなのだ。
もしこれを読んでいるあなたが悩んでいて、新しい環境を必要としているなら、周囲に相談した時に言われるであろう社会や、あなた自身に対する偏見なんて気にしないで、少しの勇気を持って飛び込んでみよう。何かが変わるかもしれない。
この時大切なのは自分自身が飛び込んでいく先の社会に対して偏見を持たないこと。「へえ、こういう世界なんだ」とフラットに捉える心を持っておこう。
これが北ヨーロッパから日本へ来た私からの、悩める人々へのアドバイス。
いや、アドバイスというほどでもないのだが、周囲の声が全てじゃないということは伝えておきたい。
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