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「お子様スパゲティ」というご当地メニュー

日本には「ナポリタン」というケチャップで味付けをしたスパゲティがあるんだとか。私は来日15年、未だ食べたことがない。具材もたくさん入っていて美味しそうとは思うのだが、「ケチャップ味のスパゲティ」という響きだけで嫌な思い出が蘇る。

私の地元には"Kinderspaghetti"=「お子様スパゲティ」と呼ばれるご当地メニューがある。厳密にはイギリスなどでも食べられているらしいのだがよく知らない。
まだインスタント食品があまり普及していない時代の話である。この「お子様スパゲティ」の作り方は簡単。

  1. スパゲティをモッリまで茹でる(アルデンテでは不十分)

  2. 皿に盛る

  3. ケチャップをかける

これだけ。トマトソースの間違いではない。ケチャップである。
ハイネマンというカフェ併設のコンフェクショナリーで、私がまだ幼かった頃「お腹空いてない」と言ったので、やむを得ず頼んだ「お子様スパゲティ」。もうご想像できるかもしれないが、私は一口だけ食べて「もういらない。お腹いっぱい。」そう言った。
ちなみにハイネマンはシャンパントリュフチョコレートがお手軽で超美味しい。立ち寄る機会があればお土産に大量購入することを強くおすすめする。

小学校の友達の誕生日会に行った時も夜のご馳走はこの「お子様スパゲティ」。地獄だった。明らかに茹で過ぎたスパゲティにケチャップを巨大ボトルからかける友達の母親の姿は今でも忘れられない。皿の青い縁取りも相まって最悪の組み合わせだった。

お味だが、口に入れた瞬間ケチャップのトマト由来の強い酸味が鼻に抜け、糖類の甘みがブヨブヨになった麺と絡み合い絶妙な不協和音を醸し出す。これ以上は語らない。

いくら子供だからって馬鹿にしてるんじゃないのか。子供だって「味覚ぐらいあるわ!」と強く訴えたい。歯がなくても食べられるという点では離乳食としては評価できるかもしれない。あと作り手が楽できるという点でも。

現地人はいわゆる「ビオ志向」であり、子供に肉を与えるのは悪、そしてケチャップはトマトだと信じ込んでいる。食に快楽を覚えることも罪であり、「美味しいもの」を子供の頃から覚えられては将来苦労するだけ、労働に勤しまなくなるという地域信仰がある。

日本に来て、チューブ入りのトマトソースがあると知った。もうこれでいいじゃん。これ海外輸出しようよ…。商機あるって…。

とはいえ、近年は工場の衛生状態も良くなり、インスタント食品も豊富になった結果、子供向けのパックになったボロネーズソースが売られているようだ。

一方で"Kinderspaghetti"でレシピを調べるとケチャップではなく、トマトペーストベースで味付けし、複数種類の野菜を加えたレシピも発見できた。

しかしAmazonの商品はHiPPという離乳食メーカーのものなので味が仮に良かったとしても麺はブヨブヨだろうし、レシピの方は味付けが塩胡椒のみなので味に深みはなさそうだ。


ということで、私がパスタ×ケチャップの組み合わせを克服するにはまだかかりそうだ。何がダメってあの酸味がダメなのだ。ナポリタンはケチャップを絡ませて火を通すので酸味はかなり飛んでいるとは思うのだが。

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