日本人街で反日デモ発生 ―店舗は厳戒態勢、邦人には領事館から外出禁止令―
あれは確か2005年のことだったと思う。地元の日本人街で中国人留学生主導による反日/抗日デモがあったのは。後の発表で500人くらいが集まったと聞いている。
ヨーロッパにいる中国人は多いと言われるものの、街中で遭遇する頻度が高いという印象は、私はなかった。500人というのは大きな数字だった。
地元は法治国家で、「もう法律が何が何でも絶対」みたいな国なので、デモを行うにあたっては当然届出が必要だし、警官が（双方の）見守りとして付いてくるし、暴れたりしたら即逮捕なので暴徒化せず終了したと思われる。
私はその場には行かなかったのでデモ隊の具体的な主張はわからなかった。
それも当然で、日本大使館からは「日本人街でデモが予定されている」という情報とともに「外出は控えるよう」通達が邦人に対してあったからだ。
私の記憶では日本に対するデモはあれが初めてではなく、動物愛護団体が「鯨を食べるな」デモをやったことがあって、その時は「デモがこの地区で行われる」という情報が来ただけだった記憶がある。外出禁止令的なものが出たのは異例だったと思われる。
中国国内での抗日運動の過激さを鑑みての注意喚起だったのかもしれない。
でも前日の金曜日、学校帰りに日本人街の書店の前を通ったが、ガラス窓には木材が打ち付けられ、かなり異様な光景になっていた。他の店も幹並みシャッターを下ろしていた。
どの店もここまで施錠しているのは初めて見た。
ショックだった。
私の地元がこんな厳戒態勢になって略奪に備えているなんて。
2005年という年は日本で何が起こっていたかというと
日本の教科書が改定された
日本が国連常任理事国入り
東シナ海/尖閣問題が再燃
首相/国会議員の靖国参拝
中国の日本大使館/料理店に投石などがあった
（「愛国無罪」という言葉がネットで話題になった）
これくらいのことが同時にあった時期だった。意図的に日本政府がまとめて対中関係にメスを入れたのかはわからないが、中国がこれらのことを利用して反日感情を意図的に利用したことは想像に容易い。
現地メディアのリアクションは薄かった。と言うかそもそもローカル紙でもデモには触れていた記憶がない。世間的には「どっちもロクでもない」という風潮はあったと思う。アジア人は全員中国人で全員（いろんな意味で）汚いと。
あとは報道はなかったが、日本人コミュニティの間では中華レストランでゴキブリ入れられた話があったくらいか。
思うところ
ぶっちゃけ自分の街で「反〇〇国デモやるよ」って言われるとすごく嫌な感じはする。主催国の人らが悪いとか、そういうことではなく「ここでやらなきゃダメ？」とシンプルに言いたくなる。特定の国に対して講義を行うと言うことはその国を敵対視していると言うことであって、平和的ではない。それをわざわざ自分の住むところでやられるのは現地人としても迷惑千万だったと思う。
いわゆる「敵国」でなくても、「どの国が悪い/嫌いか」という風潮はどこの国にもあって、そういうキャンペーン（銅像が建てられるとか）が積極的に行われてる地域もある。
そうすると想定していない場面だったり、予想だにしていなかった相手から歴史や政治の問題について糾弾されることもある。
「なぜあなたの国は戦争犯罪を犯したのか？」
「なぜそれについて謝罪をしないのか？」
「なぜ戦犯国なのに戦後賠償をしないのか？」
「罪の意識はないのか？」
これらの質問にしっかり答えられる日本の10代はどれくらいいるだろう。
少なくとも私は10代の頃は答えられなかったし、今でも答えられる自信はない。
一方で世間で観測していると
「勉強していないから」
「よく知らないから」
などの理由で会話から離脱する人が多いらしく、あまり好ましい印象がない。
「好ましい印象」とは書いては見たけど単純に「私が嫌」なんだと思う。
歴史や政治について「勉強していない」「よく知らない」と答えると、相手には「国が教育していない＝歴史と向き合っていない国」と伝わってしまうのだ。
無関心なら無関心でもいいと思う。
私も歴史について深く興味があるわけではないし。
でもだからといって母国を勘違いされるのは嬉しくないし。
とは言っても文化圏によっては「無関心＝幼稚」と取られることもある。
そこで、何も考えてないなら、せめて「それらしい切り返し」を準備しておいてほしいと、国際社会に出て行く人に対して思う。
「人や国によって様々な立場があり、それらを尊重しているので、自分は明言したくない」
「自分は特段良い生徒ではなかったので、もっと詳しい人を見つけて議論してはどうか」
「あなたと個人間でする話ではない」
言い方は他にもあると思う。
回避方法を身につけておくことも悪いことではないのではないか。