見出し画像

初めてのインドスイーツは植民地の味

先日、元上司だった方と美術館に行った帰りにお食事をした。近くのお店を調べたら南インド料理屋があって、メニュー表を見ると、カレーだけでなくラッシーの種類やら一品料理やら、ポロッタに始まるありとあらゆるパンやら、比較的ありがちなクルフィ以外のスイーツやら、とにかく豊富で私の興味を引いたのでお付き合いいただいた。

私はローズラッシーに、野菜のドーサとチキンカレーの日替わりセット。そして人生で初めて食べるインドのデザートに選ばれたのはこちら:

_人人人人人人人_
> ケサリバス <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

説明しよう。ケサリバスとは

Kesari bat or kesari baat (Kannada: ಕೇಸರಿ ಬಾತ್) is a sweet Indian food that is common throughout the country. The classic ingredients used for its preparation are semolina, sugar, ghee (usually), water, and milk. The sweet is more commonly known as Jonnadula Halwa in certain parts of northern India.

Kesari bat - Wikipedia

セモリナ、砂糖、ギー、水、牛乳を練った菓子で、スパイスはサフラン、カルダモンを用いる。「ケサリ」はインドの多くの言語でサフランのことを指す。カルナータカ(インド南部の州)発祥とされる。地域によってはデザートだけでなく朝食として食されることもあるという。

匂いをかいで一言。

「ドイツのクリスマスの匂いがする…!」

私が大好きなSpekulaziusとかなり類似した香りだ。Spekulaziusはフランス語ではspéculoos(スペキュロス)と呼ばれ、北西ヨーロッパのクリスマスの定番菓子の一つ。クッキーの一種で、生地にスパイスを練り込んで焼いたものである。

とても美味しい。

そんな感想と共に頭の中の歴史書がパラパラと開きはじめた。

この香りの正体はインドからやってきたスパイスたち。しかしこれらがどうやってヨーロッパまで渡ってきたのかと考えると頭を抱えたくなるものがある。貿易だけならまだ平和だが、植民地時代も想起される。
私たちの食卓を彩るスパイスは厳しい歴史の上に、人々の苦しみの上に成り立っている。現実は残酷だ。

私は決して良い生徒ではなかったから、実際のところどのような経緯があってよくは知らないが、S&Bのサイトによると複数の国家がインドのスパイスを巡って争い、それをフランスが植民地として勝ち取ったいうことのようなので、フランスのスペキュロスとインドのケサリバスの香りが似ているのは偶然ではなさそうだ。

あまり食事をする時にそういうことはいちいち考えないタイプだと思っていたが、「故郷」から遠い場所で「故郷の香り」を嗅ぐと「あれ?」と不思議に思うものなのだなと思った。

ケサリバス、朝食として食べられることもあるだけあって甘さ控えめでとても美味しいので初めて食すにはおすすめ。もうちょっと怖いもの見たさがある方は「世界一甘い」と一時期バズったグラブジャムンをどうぞ。缶詰で買えます。


関連記事:

#料理 #グルメ #インド #インド料理 #アジア料理 #スイーツ #デザート

いいなと思ったら応援しよう!