小中一貫校という新しい仕事の観点
小中一貫校の語り口も以前に比べて毛色が変わってきた。いつものようにおんなじこと言っていても注目されなくなった大学教員と教育委員会が「新しさ」だけにとらわれる病を発症しただけのこと。
「少子化」というマジックタームはいろいろ便利にはたらくようだ。しかしこの言葉を発する意図と覚悟がはっきりしている人間にまだお目にかかったことがない。小学生並みの説明に使う便利な言葉という程度の認識しかないのであろう。別に人口を維持する考えを否定するつもりはないが、その先に何があるのかを語らないのにただ人口が減っていること、減少傾向にあることをあげつらってなんの意味があるのかということ。
人口比で予算が決まる問題や人口動態にエビデンスを取られてしまう課題があるなら人口にさわる前にやることはいくらでもあるということです。シムシティでもやってみればわかりますが人口というのは予測できることが何もないため、予測したことによって予期しない副作用が出てしまう方が多くなってしまいます。
もちろん統廃合をすることのメリットはいくつか存在する。しかし統廃合をうまく活用して教育の効率化を図っているところを見た事がない。特に都市部の一貫校は土地の問題で逆に非効率になっていたり、鮨詰め状態を誤魔化すことに注力したりすることになってしまっている。特に学校を4階立て以上にすることはいろんな意味で好ましい話ではない。
故に施設一体型というのは、そもそも動機に不純なものを多く含んだ教育に資するものの少ない行為になってしまうことが多くあるということです。ボロボロの施設がピカピカになるのは非常に歓迎すべきことなのですが、あれこれあって非常に使い勝手が悪くなることに馬鹿みたいに税金が使われたんだなぁと思うと公共事業がコストを下げながら利用価値を上げる方法を探究できない行政構造は利権の温床であることを再認識させてくれます。お役所と議会は上から下まで綺麗に腐り切っているんですよね。腐った人間でなければ正常を保てないようにきちんとシステム化されていることがよくわかります。この人たちが現場の人間にしっかり迷惑をかけてくれるワケなんですね。どうにかしないとギリシャや中国の二の舞になってしまうと心配しています。
それはさておきもう一つ、施設はこれまでのまま小中一貫を進めようという考え方が最近多く見られます。形だけ。すでにこの時点で胡散臭さ満点ですが・・・
これは問題が非常に多い。
なぜにこんなものが生まれてくるのか?先の病が発症しているのと同時に自治体の中には予算がないけど、なんかしなくちゃなくなってしまう教育委員会というものが存在しているようです。仕事をしているフリをしなくちゃいけないというのはリストラされたお父ちゃんが公園で弁当を食べる図を思い浮かべますが、実際役所の中にはそういう部署が散見されるという噂を聞いた事があります。電話した時に後ろがうるさいくらい盛り上がっていたことも2度や3度ではないからね。声で名前がわかったやつもいました。なかなかないよね、電話口にいない人の名前がバレる役所。現場に過酷労働を強いておいてそれは無いと思いますよ。
それましたが、そうしたことに加えて学校現場ではキャリア教育というわけのわからないお仕事体験の真似事みたいな事が取り入れられています。キッザニアでやれよと思うのですが、なんだかなりたいものは決めておかなければならないという脅迫観念が経済界から要請されているそうです。そんなんだから独創的な商品が開発できなくなったんじゃ無いのか?日本の経済界。人のことに口出す前に自分たちの業界が隆盛する方法をよく考えた方が良くないか?
さておきそうした教育スタイルが効果があるどうかも実証されないままに強制的に導入されること自体が不思議なことです。教育にはどうとでも理屈がつけれたことはこれまでも歴史が証明しているし、同様に何かやっていればどう転んでもそこそこの成果が上がることも証明されています。
さればこそどの方向に向けても立派に顔向けできる教育政策ということが重要になってきます。やっぱりなかったことにするとか現場の方で無かったことにしてあげるような強制物というのはどうだろうと思います。キャリア教育は後者になりそうです。というかなってます。
おそらく金のかからない、口だけでできる、キャリア教育の実践事例として役立つ、一貫した形で効果が見込めそう、連携が図れているように見えて問題解決の早期化に繋がりそうという空虚な根拠が隠れもせずダダ漏れになっています。
そしてこれらは何一つ成果として残せないだろうということです。その阻害要因が現場の多忙と学校間文化の差異ということになります。つまりコミュニケーションを円滑化しようとしているという意図は見えますが、枠組みだけではうまくいかない難しさがあるんだよという実現困難性の要素をギュッと詰め込んだパッケージなんですよ。そりゃうまくいかんでしょ。
とにかく小中一貫をやりたければ、教育的なメリットを中心として設計して合意の取りやすい組織が初めから用意されていなければならない。こうした試みが外部主導で成功することなどあり得ないということです。基本的に学校組織での一貫校というのは公立ではあれば教育委員会が、私立であれば理事会が主導することが多いのでまず成功しません。よほど優秀で人たらしな人間が嘘八百を並べたててそれらしく見せかけた時に一時的にうまくいったように見えるだけです。
特に利害関係もないのですがこれまでのフリースクールや新しいオルタナティブスクールも民営の高校や大学も同様です。田舎の方ではそろそろ先にできていた義務教育学校を元の学校形態に戻すところも出てきていると聞きます。
きちんとした検証とロジックと共通理解が図れる最大限の努力を持ってして今の学校組織にようやくタメを張れるぐらいの困難性を持つ小中一貫という考え方を安易に進めるべきではない。知識と能力のない事がはっきりしている教育委員会制度内部の職員たちはイラナイことをして現場に迷惑をかけないようにしてくださいね。というのが今の小中一貫校に対する回答です。