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【映画】サンセット・サンライズを観て※盛大にネタバレ書きまくり

クドカンと菅田将暉ってどうなんだ?と横目で見ているうちに公開からかなり経った先週映画の日でようやく観賞。満席。
とにかくクドカンの脚本の良さに尽きる。
ドラマ『不適切にも程がある』でも存分に見せてくれた日本社会独特の『空気』を説教臭くならず、観た人それぞれがさも自分で見つけたと思わせるくらいのさりげなさで立ち上がらせ、それを笑いで表現する手腕が見事。
コロナ禍の自宅待機から繋がっただけではしゃぐリモート会議のシーンは笑ったし、リモート飲み会なんか今でも離れた友人同士でも開催出来るのに、結局あれは、すぐ会える距離にいるけど会えないからやっていたのだなと。
東京で感染拡大した際の異常なまでの警戒と排除。
ソーシャルディスタンスや三密。
コロナだけでもテーマは尽きないのに、地方過疎化による空き家問題や結婚相手不足問題(井上真央をマドンナとして4人の独身男が見守る構図)が手際よくコミカルに散りばめられる。
そして東日本大震災。
東京出身の菅田将暉が『たまたま東北に生まれなかった俺は一体どうすればいいんだ?」という問いかけに竹原ピストルが『たまに思い出して見てくれればいい』と答える。
最初は自分なりに同情したり寄り添ったりもするが、実際は他人の不幸や傷を肩代わりなんて出来ない。時が経てば自分の生活に追われ忘れてしまう。
でも、それでもいいよと。
たまに東北思い出して、こっち見てくれよ。そんで来てくれたらご馳走してやるからよ。
クドカン作品は笑いの中でこの『たまには思い出そうよ』を常に入れている。
戦争や震災、コロナといった出来事だけでなく、その時に我々日本人はどの様に振舞ったのか。
主役の菅田将暉はもちろんだが、井上真央がとても良い。
若い頃は井上真央と同じ系統だった気がする池脇千鶴はすっかり性格俳優だし、中村雅俊の訛りっぷりはさすが。
そして何よりこの映画最大の手柄は次々登場する魚料理の美味そげ。
奇しくも同時期公開の孤独のグルメの向こうを張った飯テロ映画でもある。

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