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【宮下さんの小説で感じたこと】美味しい料理を見せつけて、食べさせてくれない作家さん
宮下奈都さんの「よろこびの歌」と「終わらない歌」の二作を読んだ。
この作品は前編、後編とかではなく、どちらも完結しますから、そこは安心です。たまにありますよね、初めから上下でだせよって作品が。
さあて、終わらない歌を読み終えました。表紙の絵も素敵ですね。
結論は「よろこびの歌」に劣らない秀作。
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「終わらない歌」はすばらしいエンディングの内容だった。
あたしは、ひさびさに最終章は読み返したよ。
盛り上がる興奮をもう一度味わいたかったんだよ。たっぷり味わえたよ。
この作品も前作のよろこびの歌と同様な構成で進む。
高校を卒業して2年後、前作からは3年後の少女たちを順番に追いながら
最終章に結び付けていくスタイルだ。一話目の主人公は前作と同じ玲だ。
だが、あたしは違和感を感じ、これはおもしろくない始まり方では?
と思えた。
玲が自分の歌に悩んでいるのはわかるが、居酒屋で見かけた男性店員さん
(あまり良い人ではないようだ)に淡い恋心を頂いた様子。
これは、この小説の内容に合わないと感じたが、特になにごともなく
次の女子の悩みへ。各話とも前作と同じく多感な女子を描くのがうまい。
作家さんの特徴として大きな事件が無く坦々と進ませること、これはあたし見たいにドキドキしてしまうタイプには助かる。
たとえば、ここで失敗か~、とか、ドロドロな人間模様や関係、恋焦がれ、変な男へとか、家族の問題、陰湿な嫌がらせ、駆け引き、共依存で逃げられない親子問題とか、こんな内容が入らないのが嬉しい。
あたしはアマプラで映画を見ていて、この展開はいやだと思うと早飛ばしてしまうほどだ。
もうひとつ(あたしはこっちが気になる)この作家さんは
美味しい料理を見せるだけ見せ、食べさせてくれないのだ。
前作のよろこびの歌も、この終わらない歌も、最後の演奏や舞台のシーンが無い。公演シーンのあと、どれだけ同窓生が周囲が感動や感激したかとか、彼女らの喜びや達成感を描いてほしい、そして読者は共有したいのだ。
そこが描かれていない。
幕が開く、幕が開くだろう、と予感させて終わるのだ。
だから余韻にしたれない。
とりあえず、前作の高校生2年生を描く「よろこびの歌」の感想はこちら。
(例によって、あたしは世間でいう感想文ではなく、あたしの感覚や感情を
記していますのでご容赦ください。)
【よろこびの歌】
あたしは、出足でつかみが無いと思うと読まずに、処分する。
自分に問題があるのか、本の問題なのか。
この本を読み。良いものは良い。と素直に思えました。
これは秀作。女子高生たちの瑞々しさがすばらしい。
この本は同じクラスの女子たちの連作だった。一話目に引き込まれ、
あれ~残念と思ったら、またひきこまれた。
もう彼女たちの心のうちがリアルでどんどん先が見たい。
あっという間の読書。
主人公の玲は付属を落ちて心に蓋をして自分を見せない、
ところが、ここで語られる女子は、皆、心にふたをして学校生活を送っているのだ。おもしろかった。そんな彼女たちを通して玲がさらに浮かび上がってくる。そんな彼女たちの姿を通して玲を描く演出がすばらしいと言えます。
最後に、再度言いますが、この作家さんは美味しい料理を見せるだけ見せて食べさせてくれないのです。
あ~美味しかった、感激した~とはなりません。そりゃそうだよね、
食べてないんだからね。
宮下奈都さん、美味しい料理は「食べさせてください」よう。
食べないとわかりませんよう。