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チームが一番長い時間を過ごす場所

チームがシーズンを通して一番長く時間を過ごす場所はどこか?
試合会場ではなく、
トレーニングジムではなく、
クラブの事務所でもなく、
練習会場です。

先日Bプレミア参入クラブが発表されました。アリーナや売り上げ・入場者数が主要な参入基準となっていましたが、少し違う視点で各クラブを見てみたいと思います。

練習会場

Bリーグ所属チームの練習環境はさまざま。
クラブハウス・練習会場を保有するチームもあれば、公共施設に頼らないと練習ができないチームもまだあります。
直接的にお金を生み出すわけではないので、練習会場に大きな投資を出来るチームは貴重です。
ただ、練習環境がチームに大きな影響を与えます。

カンブリア宮殿で、ある居酒屋の社長さんが話していた言葉です。
アルバイトの教育にお金・時間・人材を一番多くつぎ込む
なぜなら、アルバイトがお客様と一番近く、そして長い時間接するから。
その質の向上が店あるいはグループ全体の利益につながると。

チームにおける練習会場も同じことが言えると思います。チームが一番長い時間を過ごす場所の環境の向上が、クラブ全体の向上につながる。
キャリアの多くをジプシー(複数の体育館をローテーションして使用)で過ごしてきた経験から、本当に心からそう感じます。

B.premierの練習場規定

2026年からの新リーグにおいて、「練習場およびウエイトトレーニング施設規定」が新設されました。

https://www.bleague.jp/files/user/about/pdf/r-40.pdf

練習場およびウェイトトレーニング施設規程 第4条〔設備要件〕

新リーグが必須条件として練習会場の整備を盛り込んだことは、我々現場の人間にとって、続々と建設される新アリーナと同じかそれ以上に大きな意味を持ちます。
「開幕の3か月前までに報告」と記載があるため、現時点で必須条件ではないようです。
「練習場は原則1箇所」となり、複数の公共施設を日替わりで使用するジプシーはNG、練習会場の整備もBプレミアに向けて一気に加速しそうです。

各チームの練習環境

元企業チーム(Bリーグでは死語かな)は、練習環境が恵まれています。
ただし、練習会場・クラブハウスを整備するチームが増えてきているので、企業チーム有利だった練習環境のパワーバランスに変化が起こっています。

Bプレミア参入が確定した22クラブのうち元企業チームは
A東京・渋谷・川崎・三遠・三河・名古屋Dの6チーム。
それぞれ母体企業の体育館が練習会場・クラブハウスとなっています。

各クラブの施設をピックアップしました↓

■長崎ヴェルカ

新アリーナにクラブハウス・練習会場が併設

B3参入当時からリーグトップクラスの環境であり、
さらに、わずか数年でこの旧クラブハウスから新アリーナ併設の新クラブハウスへ移行する資金力とスピード感は突出しています。
NBAレベルの施設だと外国籍選手の間で話題になってました。

■千葉ジェッツ

■レバンガ北海道

■群馬クレインサンダーズ

オープンハウスアリーナ太田のサブアリーナが専用の練習場

■広島ドラゴンフライズ

明日の練習会場が見つからない、、、
毎日、苦しみながら東奔西走していた遠い昔に夢見たクラブハウスが完成。
市内外の体育館・学校施設に連日くまなく連絡し、プロだといっても認識してもらえず、「ドラゴンズ?」とよく間違えられ、社用車もなくGMの奥さんの車を数時間借りて、前所属チームから譲ってもらった備品を載せて練習に向かっていた日々は遠い昔の話ですね。

■横浜ビー・コルセアーズ

ついに「たきがしら」にも冷暖房が!
練習中に体育館内で蜃気楼が見えるほど暑かったんです (泣)

■神戸ストークス

2025年4月オープンのGLION ARENA内に、専用の練習場・クラブハウスを併設。個人的に長崎に次ぐ、注目の施設です。


現時点で、Bプレミアには届かなかったクラブでも、練習環境の整備がどんどん進んでいます。

■秋田ノーザンハピネッツ

https://www.jreast.co.jp/akita/square/

■熊本ヴォルターズ

■ライジングゼファー福岡

■香川ファイブアローズ


各チームの練習環境が、どんどん向上していますね!

環境と仕事

マネージャーの仕事とチームの環境は非常に深く・密接に関係しています。そのためマネージャーの仕事の中に、クラブによって「存在する仕事」「存在しない仕事」があります。

専用練習場があれば、練習のための体育館を探し予約するという作業は必要ありません。この作業に、時間とメンタルをすり減らし、祝日・年末年始・ゴールデンウィークの存在をどれほど憎んだことか。

また、チーム荷物を車に積んで運び、移動し体育館におろし、また練習後に積み込み事務所に戻るという作業、ジプシー(複数の公共施設を日替わりで使用する環境)であることが多かったので自分にとっては普通であり必然でした。
クラブハウス・専用の練習会場がある環境では、これまで必然だった作業(移動・搬入・搬出)が無くなることで、こんなにも時間に余裕が生まれるのかと本当に驚きました。
罪悪感を感じるほど余裕があり、その分手間のかかる作業に時間を割くことができ、何より心休まる時間が生まれました。

公共の体育館も環境はそれぞれで、
・冷暖房
・駐車場
・シャワー
・控室
・床
・リング
・使用時間の制約
などなど、すべての設備・条件が整った施設は少なく、どこも一長一短でその選定も悩みどころです。もちろん、そもそも選択肢がないという状況も首を絞められるような苦しみです。
そして、プレッシャーリリースの付いたのリングがある体育館は貴重です。いわゆるダンク禁止の体育館がすごく多いです。
練習中にダンクしなかった選手が、環境の整った他クラブに移籍して、めちゃくちゃダンクするキャラに変わってること多々あります。
経験者として断言しますが、練習環境はプレーに影響します

また、リクルートにおいても練習環境が重要な要素となります。良い選手やスタッフを獲得するために、彼らに見合う報酬を準備することがまず第一ですが、彼らが本来のポテンシャルを100%発揮できる環境を用意することも同じくらい重要だと感じます。
なぜなら、彼らのスタンダードが高い基準にあるから。良い選手、良いスタッフだからこそ、環境面でのミスマッチが起こり得ます。
練習環境を理由に加入に至らなかったケース、加入後に練習環境を理由にチームを離れたケースは過去に何度かありました。

個人的に、Dライズ(10年ほど前に4シーズン活動したブレックスの下部育成チーム)で育った経験から、環境は与えられるものではなく勝ち取るものであり、今ある環境でベストを尽くすことが未来につながると信じているので文句は言えませんが、発信をしないと分かってもらえない側面もあります。
Dライズって何??という方は、こちらの記事も読んでみてください↓

苦しかったコロナ渦のシーズン

圧倒的にイレギュラーな対応が必要だったのは、19-20・20-21のコロナ渦のシーズンです。リーグ中断や多くの制限の中で非常に苦しいシーズンでした。苦しかったのは我々スポーツ界だけではないですが、自分たちの仕事が不要不急とされる状況はもう経験したくないのが正直な気持ちです。

ウイルスが流行しリーグ中断となった19-20シーズンは、これまで使用させていただいていた企業の体育館が受け入れを停止、そして市内・市外の公共施設も休館となり、練習会場を失いました。
市や県の対応次第で、各施設の休館時期や受け入れ対応にズレがあったため、使える体育館を求め西へ東へ、市外へ県外へ、野を超え山を越え、本来のスケジュールや移動距離、体育館の環境は後回し、床とリングがあればOKという状況で何とか練習を続けました。移動時間とコートの環境を考えると、果たして練習すべきなのかも分からない状況でした。ただし、週末に試合があるかもしれないので、練習をしないという選択肢は無く、体育館が見つからなかった日は河原でラントレという日々でした。
勝つためにより良い環境を整備する立場の人間として、本当に苦しい日々であり、改めてバスケットが出来ることに感謝する経験となりました。

体育館はどこにでもある

練習会場の候補となる施設が多いことがプラスなのかマイナスなのか。
どの地域にも公共の体育館が複数存在し、学校や企業の体育館を含めれば、その数は多く、それらを組み合わせて使えば最低限の活動はできます。練習会場を保有することが絶対条件ではない。クラブにおいて優先順位が上がらない理由のひとつでしょう。

特殊な競技環境が必要なスポーツに比べれば、どこにでもある体育館で活動できるバスケットボールは恵まれているので、贅沢な悩みなのかもしれません。

そんなの関係ねぇ

マネージャー的に気になるポイントである練習環境ですが、選手はどうなのか。

僕の不安を気持ちよく吹き飛ばしてくれた選手がいます。
広島ドラゴンフライズのリーグ参入初年度に加入した竹内公輔選手です。
トヨタ(現:A東京)、アイシン(現:三河)と当時からリーグ屈指の資金力と環境を持つ2チームを経験してきた彼が合流直後のインタビューで語った言葉です。

「シャワーや冷暖房のない体育館で練習するのはキャリアで初めてだが、戸惑ったのは最初だけだった。」

心強い言葉でした。
彼に限らず、変えられるものと変えられないものを認識し、自分の仕事に集中する頼もしい選手たちに支えられています。
もちろん、そんな選手たちに甘えてはいけないし、
練習環境はプレーに影響する
すなわち
結果に影響する
これは断言できます。

このエピソードは、こちらの記事でも紹介しています↓

まだまだ変化の途中にある日本のプロバスケットボール、
Bプレミア参入クラブが発表され、結果的に現B1と同じようなチーム数になり、いろんな声が聞こえますが、新アリーナの建設ラッシュとともに練習環境の向上に着手するクラブが増えるだけでも、その影響力は大きいと感じています。
チームの環境がどのように進化していくのか、とても楽しみです!
それではまた次の記事でお会いしましょう!

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