美味しいラオスのコーヒーが日本では珍しい理由
どうも、Jongです。
2週間ほどラオスという国にいました。村上春樹さんの紀行文集、「ラオスにいったい何があるというんですか?」の中のラオスです。本の題材のように、ラオスにはいったい何があるんですか?というのが一般的にはラオスの強いイメージだと思いますが、実はラオスにはコーヒーがあります。そうです、COFFEEです。しかも、かなりの美味しいコーヒーがあります。浅煎りにして飲んでみたくなるような文脈のコーヒーです。
ラオスには、ボーラウェン高原と呼ばれるラオスのコーヒーの栽培、滝、伝統的な村で知られる風光明媚な高原があり、今回は、その周辺のコーヒー農家さんのところに住み込みコーヒーの栽培、精製に触れてきました。
以前、KOHIIさんでもラオスのコーヒーについて寄稿したことがあるので、そちらもぜひ合わせてお読みください。
0.何故、美味しいラオスのコーヒーは日本で見つけ難いのか。
ここで本題です。
”何故、美味しいラオスのコーヒーは日本で見つけ難いのか?”
”美味しい”は、とても主観的で、曖昧な基準なので、嚙み砕いてかくと
・明るく爽やかな酸を持ち、甘味があり
・栽培地特徴(テロワール)によるコーヒーのキャラクタが明確な
美味しいラオスのコーヒーはなぜ日本で見つけ難いのかという問いです。
決して既存の市場で販売されているラオス産の豆が美味しくないと否定するわけではないけど、今回の産地訪問を通して、ラオスという生産地に今以上の潜在性を感じたのが正直な感想です。シンプルにカップクォリティーの高いラオスのコーヒーを日本で紹介してみたいという想いも日に日に強くなっています。
その理由について、考察を述べていきます。
1.格付け(Grading)されていない。
”先月に精製を終えたばかりのニュークロップがあるんだ。飲んでみるか?”と農園のお父さんが元気に話しかけてくれて、内心 ‘ラッキー!‘と思いながらしたカッピング。
もちろん、ラオスの産地にIKAWAのような精度が高く、高価な焙煎機があるわけがない。あるのは直火で使う手廻しの焙煎機。必然的に焼きムラはできるので、生焼けにならないようにだけ意識して”カラッ、カラッ”という音に乗り、約10分ほど焙煎機を廻し続ける。
カッピングした品種はティピカ、カティモール、イエロトゥーラ、ジャワ(Java), ラオスはよくロブスタの生産がメインだという印象があるけど、決してそんなことはなかったです。精製方法はナチュラルとウォッシュド。カッピングの感想としては、それぞれのコーヒーが明確なフレーバーを持っていました。フレーバーノート、少し言いすぎじゃないかと思うコーヒー豆を見ることもありますが、そういうことではなく。
しっかり、特に中でも私が訪れた年のカティモールのナチュラル、イエロカトゥラー、ジャワのナチュラルはよかったです。というか、そもそもディフェクト(欠点豆)がはじかれていることに感動しました。
しかし、次に続く農園のお父さんの言葉に衝撃を受けました。
”これはコモディティで販売しているコーヒーだよ。”
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そもそもラオスは、コーヒーの格付け基準が明確ではありません。
だから、ここまで品種を分け、精製方法を分け、ディフェクトを取り除くまで手間をかける農家さんは数少ない現状。
ケニアのようにスクリーンサイズ(コーヒー豆の大きさ)で分類することもなければ、エチオピアのように欠点豆も割合で等級を決めたりもしない。だからといって、グアテマラのように農園が位置している標高で格付けしてもいない。
だから、スペシャルティグレードの豆もコモディティグレードの豆も混ざって買い取られています。それでは、時間と手間をかけて栽培している農家さんのコーヒーの味わいがそのまま飲み手に伝わるはずがない。
2.シングルで飲まれることが少ない。
1.の理由とも関連するが、ラオスのコーヒーは、日本でシングルで飲まれることが少ないです。ラオスのシングル・オリジンコーヒーを出しているロースターさんをご存じでしたら、ぜひ教えて頂きたいです。
ソースは不明で、業界の噂話に程度ですが実はかなりのブレンドコーヒーの中にラオスの豆が使われているらしい。缶コーヒーだけではなく、焙煎豆もです。
しかし、ブレンドされているだけでは、ラオスという産地を飲み手に認知してもらうことは難しいです。そのうえ、格付けされず、良いコーヒーも、コモディティグレードのコーヒーも混ざって輸入されるラオスのコーヒー、ロースターからしてもシングルで提供のは難しく感じられます。
3.言語の問題
1.と2.の理由を読んだうえで、中にはこんな疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
”ならば、味にもこだわりコーヒーを栽培されている農家さんから、直接コーヒー豆を仕入れたらいいのではないか?”
確かにそうです。ラオス語が話せるならば…
21世紀グローバル社会の中で、言葉が通じないことを理由に壁にあたることはないと思い込んでいたのですが、実はごく単純な課題があります。
ラオスの農家さんの人、英語を話せないんです。もちろん、ラオスだけではなく、日本のコーヒー業界の中に勤めている方でも、英語が堪能な方、意外と少ないです。
英語が話せるラオス人+英語が話せる日本人(コーヒー業界)が出会える確率、これは道ですれ違った女性に恋に落ち、その場で告白したら付き合える確率と同じくらい低いです。
4.地理的要因
Google Mapでラオスを検索すると気づくこと。
そうです。ラオスは内陸国です。
ラオスと国境を面している中国、タイ、ベトナムには陸路でコーヒー豆を輸出することができます。しかし、日本となると一度、タイやベトナムの港まで運んだ豆を、また船で運ばなければならない。
ここで発生するコストにより、ラオスのコーヒー豆の価格は上げざる終えないです。
トップスペシャルティコーヒーの一杯に対して1000円や2000円を払うコーヒーラヴァーな消費者もいる中で、ラオスという産地の物珍しさからすれば、買われないこともないと思いながらも、”物珍しさ”による購入は持続的ではない。またトップスペシャルティコーヒーのクォリティーに相応するクォリティーがラオスのコーヒーにあるかと言われれば、まだ課題が多いのも現実問題なので、「カップクォリティー≠価格」の現状はラオスのコーヒーを伝えるにあたって直面する課題です。
終. それでもラオスの美味しいコーヒーを日本に伝えたい。
現地で出会ったコーヒーの感動。
この感動的な体験を早くも多くの人に共有したく、ウズウズしているのですがそれ以前に現実的に直面している課題がたくさんあります。
・・・
少し話はそれますが、今回の農園訪問で最も大きな気づきは ”コーヒーは誰かの手によってつくられている” ということ。頭ではわかっていたけど、リアルな体験をすると、帰ってきてからの日常のコーヒーにおける意味合いが変わってしまいました。それは、単に美味しいとか、美味しくないとかではなく、一杯のコーヒーの意味を考える、考えれば考えるほど複雑な気持ちになります。
商社さんを通してコーヒー豆を購入しているうちは、その一杯のコーヒーの意味を考えるという感覚の当事者にはなれないのだろうなという気持ち。
だから、課題が多いとしても、それでもなんらかの形でラオスの美味しいコーヒーを日本で伝える機会をつくりたいと思う今頃です。他ではなく、自分が知っているお父さんがつくったコーヒーを日本でも飲みたい。
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