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村上さんの最新作「 一人称単数と、猫を棄てると、村上T 」についての三つの短文【 本の紹介 】
「 猫を棄てる 」
内容も文章のトーンも、これまでの村上春樹とは違うという点で、興味深く読みました。村上さんはこれまで家族や戦争のことは、小説は別として、ほとんど語ってこなかったから。
個人的な文章ではあるし、メッセージ性というものは、あまり感じられないけど(村上さん自身も言及しているように)、一気に読めてしまいますね。
父との思い出の断片として、猫を棄てる体験が語られているのが、やはり印象深かったです。
そう言えば、少し前の嵐の夜に、娘に「ねえ、何で屋根の上に猫がいるの?」と問われ、一緒に窓の外を見上げるという出来事がありました。
娘に、というよりは、隣の家の屋根瓦の上に見えた小さな猫のシルエットに、きっと登ったまま降りられなくなったんだね、と答えました。雨に打たれ、足を滑らせないように、じっと動かずにいる小さな命。
それから昨日の朝、家の前を小さな黒猫が元気に横切り、「あっ!あのときの黒猫だ!」と娘が表情を輝かせたのでした。
このような日常の断片の、どのページが娘の中に残るかは分からないけど、可能な限りたくさんの断片を集めていきたいですね。
文章のお手本として、また、全ての「子」に「父」がいるという普遍的な事実からも、多くの人にさりげなく薦めたいです。
「 一人称単数 」
「 僕たちの言葉がウイスキーだったら良かったですね! 」
という会話を、焼き鳥屋のマスターとしていました。店内に村上春樹のエッセイが飾られているのを見つけたから。
「 実はちょうど新刊の短篇集を読み終えるんですけど、村上春樹は黒ビールですね 」
「 ん? 」と、マスター。
「 黒ビール、好きな人は好き。最初はそれで良かったのに、世間が無理矢理にプレミアムビールにしてしまっている気がします 」
「 なるほど。それは、分かるかもなあ 」
「 村上T 」
村上春樹が集めてきた(いつのまにか集まった?)Tシャツの数々が、写真付きで紹介されています。村上エッセイの良さは、気軽に楽しめる点にあると思います。
Tシャツを身につけるように。
でも、村上さんは、目立ちたくないので、ほとんどのTシャツは着ていないようでした。(年中Tシャツのボクには、もったいなく感じます)
(完)