考えても仕方のないことでくよくよするのは「ヒマだから」
「そうやって思い詰めるの大変じゃない?肩凝らない?
なんかさあ、悩むのが森井君の趣味なのかなーって。
忙しそうにしてるけど実はヒマなの?」
過ぎたことをぐるぐると悩み続けるタイプだった私に衝撃が走った。
「俺は仕事で手一杯なんでね、そんなこと考えてるヒマないな」
これは、フラジャイルという医療系漫画の中で、強烈な変人であり極めて優秀な病理医の岸先生が、若手の臨床検査技師の森井君に言ったセリフだ。
私がこの漫画を読んでいたのは2016年、まだ金融機関でOLをしていた頃だった。
このセリフに出会った時、頬をスパッとビンタされたような不思議な感覚だった。バチンッではなく、スパッ。痛いけどなんだか気持ち良い…いつもなんとなくもやもやしていたものが一気に晴れたような気がしたのだ。
それ以来、余計な事を考え過ぎて抜け出せなくなりそうな時は「ヒマ過ぎるからだ」と考えるようになった。
そんな時は、意識的に「集中して取り組める何か」をするようになり、驚くほど軽やかで有意義な人生になったような気がする。
2018年、当時まだ婚約者だった夫が、会社の研修制度で1年間南アフリカに住むことになった。事前学習や準備の時間も入れて「1年半くらいはほとんど一緒にいる時間がとれないと思う」と言われてしまった。
今までの私なら、寂しさや不安を押し殺しながら、なんとか連絡したり会いに行ったりするのを我慢していただろう。
しかし、考えても仕方のないことでくよくよするのは「ヒマだからだ」という考えが備わっていた私は、とにかく一人で楽しく集中できることをしようと、すぐに気持ちを切り替えた。
実際に、夫が出国するまでの2か月の間に「ENJOY ENGLISH!」という謎の英会話の本を作った。一応帰国子女で、当時は夫よりも英語ができた私は、夫が異国の地で困らないように出会いそうな場面を想像して、YouTubeや書籍の情報をもとに英会話の事例集のようなものを作ったのだ。
共通の知人の写真などを切り貼りして登場人物にしながら、目次は92項目、手書きで300ページ以上…怖い…自分でも怖い…。作るのはとても大変で手間も時間もかかったが、寂しさを感じるヒマがないほど没頭することができた。(普通に勉強にもなった)
紛れもない自己満だったがそれで良いのだ。余計なことを考える余地がない、そのプロセス自体が重要だった。
夫が出国してからは、
・TOEICの勉強&受験(2か月間、単語集『金のフレーズ』だけをやりまくって150点くらいUPした)
・食育実践プランナーの資格取得
・野菜スペシャリストの資格取得
・糖質OFFアドバイザーの資格取得
・料理教室に通う
・推し活をする(三代目 J Soul Brothers、back numberのライブに行く)
・母親や女友達と旅行に行く
など、とにかく忙しく何かをしていた。
これが本当に達成感・満足感を得られる充実した日々だった。(もちろんスキルアップもした)
他のことを忘れるくらい何かに打ち込む時間があることは、人生をとても豊かにしてくれると思う。
そして、これだけ忙しくしていたおかげで、夫と離れている寂しさや不安もかなり紛れ、いわゆるメンヘラにならずにすんだ。
夫にはいつも「なんだか忙しそうだね」とか「楽しそうだね」と言われて、そんな自分が誇らしかった。
もちろん人生にはきちんとぶつかって考えるべき壁もあるのだろうが、意外とそうでないことも多い。
今、もやもやとした負の感情や思考から抜け出せないと思っている人は、身体を動かすでも、人と話すでも、黙々と作業をするでも良い。なにか没頭できることを探してみると、無駄な悩みや不安からいつの間にかあっさりと解放されるかもしれない。