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shogoshimizu
【詩】竪琴
あのひとが歌う。
するとわたしはたちまち竪琴になる。
身体じゅうがかき鳴らされて
わたしはさまざまな音色をあげる。
それは悲鳴に違いない。
声なき悲鳴。
それでもあのひとは歌うことをやめない。
雲雀が天に向かってさえずるように。
健やかな者は自由だ。
あなたは歌っていいのだ。
あのひとが歌うと
わたしはからだじゅうの力が抜けてしまう。
こころのなかに、虹が架かる。
晴れの日が百日続く。
それは災厄に違いない。
いつまでもいつまでも鳴り響くのだから。
たましいがずたずたになる。
ひきちぎられて
そうであるうちに
わたしはわたしである
原形を無くす。
こころのなかで
静かに感動して
静かに拍手を贈っているのだが
届くことはない。
決して、気づかれることはない。
竪琴が、壊れた。