ドラマ「響子」向田邦子・久世光彦 レビュー ―石の眠りを覚ます鑿の響き―
向田邦子原作のテレビドラマ「響子」は石材屋の家業を下支えする主人公の響子とその家族・従業員との交流を昭和の色彩も彩り濃く描いている。ドラマの場面設定と登場人物の心情を抑制したトーンで丁寧に表現した佳作である。
ドラマの底流にあるのは、石と石を穿つ鑿(のみ)という対になるモノである。石は何十億年もの時間の間に結晶と化した元素の集まり。鑿はそれを意の形へと変幻させる工具である。それぞれに特殊な力が宿っている。石には2つの力がある。1つには自然を鎮め、祖霊を鎮魂し、社会の秩