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【カズト・コバヤシ Bookレビュー】あらすじ紹介 評論

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好きな小説・文学・エッセイの名場面名文の紹介から評論までご笑覧ください。
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#創作大賞2023

歌舞伎狂言「三人吉三廓初買」河竹黙阿弥 レビュー ー流転する宝剣と循環する貨幣ー…

 ここまでのあらすじをもとに、宝剣(庚申丸)とお金(百両)のそれぞれが次々と人の手を渡っ…

歌舞伎狂言「三人吉三廓初買」河竹黙阿弥 レビュー ー流転する宝剣と循環する貨幣ー…

 「月もおぼろに白魚のかがりもかすむ春の空」。歌舞伎「三人吉三廓初買(三人吉三巴白浪)」…

ノスタルジアと蒐集の情熱ー四方田犬彦「女王の肖像 切手蒐集の秘かな愉しみ」ー

 小学校一年生のとき祖父は切手を集めるように言った。祖父は自分のコレクションから選んだ切…

完璧な声の肖像 マルグリット・ユルスナール 「ハドリアヌス帝の回想」1話

 古代ローマの賢帝の一人ハドリアヌスが死期を待つベッドの上で自らの人生を語る歴史小説であ…

圧倒的想像力と魔術的表現ースティーヴン・ミルハウザー「マーティン・ドレスラーの夢…

 アメリカにスティーヴン・ミルハウザーという小説家がいる。生まれは1943年で「最後のロマン…

星一徹の晩餐あるいはアーティチョーク

 星一徹は、息子の飛遊馬に、一度だけ、レストランでご馳走をふるまったことがある。 普段は…

ドラマ「響子」向田邦子・久世光彦 レビュー ―石の眠りを覚ます鑿の響き―

 向田邦子原作のテレビドラマ「響子」は石材屋の家業を下支えする主人公の響子とその家族・従業員との交流を昭和の色彩も彩り濃く描いている。ドラマの場面設定と登場人物の心情を抑制したトーンで丁寧に表現した佳作である。    ドラマの底流にあるのは、石と石を穿つ鑿(のみ)という対になるモノである。石は何十億年もの時間の間に結晶と化した元素の集まり。鑿はそれを意の形へと変幻させる工具である。それぞれに特殊な力が宿っている。石には2つの力がある。1つには自然を鎮め、祖霊を鎮魂し、社会の秩