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命なりけり さやの中山 ~青春18きっぷの旅 4日目~

青春18きっぷの旅の4日目、以前から行ってみたいと思っていた場所をやっと訪れることができた。
 
その場所とは、静岡県掛川市にある「小夜の中山(さよのなかやま)公園」である。
 
行こうと思ったきっかけは、ある和歌との出会い……というよりは、厳密に言うとその和歌への「着目」である。 

昨年(2024年)、筆者は『西行 歌と旅と人生』(寺澤行忠著、新潮選書、2024年)を読み、そこに載っていた次の和歌に着目した。
 
年たけて また越ゆべしと 思ひきや 命なりけり 小夜(さや)の中山
 
この和歌は『新古今和歌集』に採録されており、筆者は同書を何度か通読したことがあるのだが、この歌に着目したことはなかった。
 
だが、改めてこの歌を読み、心を強く揺さぶられた。
 
まさかまた小夜の中山を越えることになるとは……命があったからだなぁ……
 
西行は自身の感慨を「命なりけり」という一句に込めている。
 
ちなみに、「命なりけり」という表現は、すでに『古今和歌集』に用例があることも後に知ったが、いずれにせよ、命があることの素晴らしさを西行の歌は教えてくれる。
 
そんなわけで、筆者はこの和歌が詠まれた「小夜の中山」(かつては「さや」、現在は「さよ」と読み、「佐夜」と表記することもある)を実際に歩き、西行の歌碑を見ることにしたのである。
 

金谷駅


1月3日午前、藤枝駅を出発した筆者は、島田市の金谷駅に上陸した。イマドキの方法で調べたところ、金谷駅から小夜の中山公園までの所要時間は1時間10分と表示された。しかし、そんなに甘くはなかった。筆者はこれまで全国各地を旅したが、あそこまで険しい道はなかなかないだろう。

険しい道


途中で休憩しながら、金谷駅を出発して約2時間後、筆者はようやく西行の歌碑がある場所にたどり着いた。歌碑の向かいには茶屋があり、そこでやっとゆっくり休むことができた。
 

西行歌碑


西行はこの小夜の中山を通ったことが2回あり、1回目が30歳のとき、2回目が69歳のときだという。38歳の筆者ですら息も絶え絶えだったが、あの道を69歳で通過したというのは驚嘆に値する。
 
タクシーで金谷駅に戻ろうかと考えていたが、周辺案内図を見て「事任(ことのまま)八幡宮」という『枕草子』にも出てくる神社があることを知り、行ってみることにした。西行の歌碑から事任八幡宮までは一転して下り坂や平坦な道が多く、徒歩40~50分ほどを要したとは思うが、歌碑までの道よりはずっと楽だった。
 

事任八幡宮


事任八幡宮から掛川駅までは路線バスで移動した。掛川駅から金谷駅まで電車で移動し、コインロッカーから荷物を取り出し、金谷駅から次の電車に乗り、一気に富士駅まで移動し、この日は終わった。この日の宿は新幹線の新富士駅の近くにあり、富士駅から新富士駅まで約30分歩いた。本当に歩いてばかりの1日だった。
 

 【この日使った公共交通機関】
JR東海道線
藤枝1029~金谷1041
コインロッカーは大井川鉄道の駅舎にありました。
 
掛川バス
ことのまま八幡宮1553~掛川駅前 300円 約20分
ICカードは使えず、どの乗客も現金で支払っていました。
 
JR東海道線
掛川1637~金谷1651
金谷1702~富士1809
JRは全て青春18きっぷを使って乗車しました。

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