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映画『アプレンティス』を見て

 最初に、この感想文はそこまで長くなく、そこまで深入りもしない事を述べさせていただきたい。なぜなら私には前提条件が足りなかったから。私は日本で生まれ日本に育ち、それ故アメリカであの映画が制作されるに至る、また制作する価値があると感じられた根拠である筈のドナルド・トランプという男に対する印象、そして何よりアメリカ史上最も悪名高い弁護士であるロイ・コーンという男が「どれほど悪名高かったのか」という前提に非常に無頓着なまま映画館に足を運んでしまったからだ。
 
 面白いか面白くないかで言えば、面白くはない。しかし時間を無駄にしたかと言われれば、そうでもない。人に勧められるか、と言われれば、だいぶ人による。多分殆どの知り合いや友人には勧めない。映像は素晴らしかった?Youtubeで3年前に公開されて再生回数が10万回くらいの「ちょっと画質悪いくらいの方がお洒落でいい」みたいな思想のバンドMVを2時間通しで見てるみたいな感じ。音響は?トランプとロイコーンの会話を色っぽく録る意味なんかない。
 強いて言うのであれば、この映画の軸は面白さでも映画的美でもない、という事は言えるのかもしれない。じゃあ何が軸なんだという話にもなるが、正直わからない。この映画のドキュメンタリー性も正直どれくらい本質的なのかわからないし、ぶっちゃけ感想が難しい映画ではある。でも難解な映画では全くなかった。シナリオや表現としては物凄くわかりやすく作ってある。
 「ドナルドトランプという男を何となく知ってみたい」という人にとっては、恐らく最適解に近い教科書なんじゃないかとは思う。
 
 ただ、この映画そのもののメッセージ性はよく分からなかった一方で、この映画が取り上げた人物たちが発し続けた思想は非常に分かり易かった。それは当初ロイ・コーンの仕事の流儀として登場し、正にロイ・コーンのアプレンティス(徒弟)としてのトランプが骨身に染み込ませた「3つの勝利のルール」である。
 
1.攻撃、攻撃、攻撃
2.絶対に非を認めるな。
3.なにがあっても勝利を主張し続けろ。

 
 実際、トランプは訴訟を抱えながら大統領選でもこれを実践し続けていたように思う。ぶっちゃけ、自分もこれから程々に実践していきたいとすら思った。自分のような、周りからの評価とか自分が人の役に立てているかだとか人の足を引っ張っていないかだとか、そう言う事を自分のやりたい事や気持ちすら押し殺して生きようとして苦しんでいるような馬鹿な人間には良い意識なんじゃないかと思ってしまった。
 
 「こんなメチャクチャな奴もいるんだから、ちっぽけな自分達だってもう少し気楽に生きていいんじゃね?」
 
 みたいなメッセージは、まぁまぁ自分の中に芽生えたかもしれない。そんな映画だったと思う。
 
 あとざっくり残りの映画の感想をまとめると、
 
・エイズは怖い。
・メンタル病んで辞職経験がある為トランプの兄貴に若干感情移入してしまいちょっと悲しかった。今の私生活も正直心穏やかではない為辛いっちゃ辛い。
・嫁に豊胸させて魅力感じなくなったはクズ。
・結婚に対してのネガキャンすっごい…話的に仕方ないけど…
・アメリカンドリームを前面に出してくるかと思ったらそんな事もなかった。思ったより成功物語風に描かないのはちょっと意外。
・え!?ここで終わる!?
 
 ここまで書いてて気付いたけれど、この映画、よくよく思い返してみると凄く「当時のアメリカにおける同性愛者への風当たり」と「旧来の結婚観、家族観に縛られる事の息苦しさ」みたいなものをメチャメチャパワフルに描いている。ひょっとしてこの映画、トランプとロイコーンという癖強すぎる人物のセミノンフィクションの皮を被ったLGBT映画なんじゃないか?ここが視聴中に読み解けなかったから自分には曖昧な映画作品に感じられたのかもしれない。ただその場合悪手なのは、ゲイが同情したくなるような「社会で生き辛い可哀想なゲイ」の役回りを全く同情する気になれないロイ・コーンに任命してしまった事。ロイ・コーンの最期がすっごい、すっごい可哀想な感じだったけど、ロイ・コーンだしなぁ…。
 
 そんな感じの感想です。「トランプってどんな感じの奴なんだろう。」という興味に対してはかなり分かり易いオススメの映画でした。
 
 おしまい。

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