ときに映画は、旅を誘い、人を誘う
抱きかかえることができそうなほどの至近をキールする鷗たちが、
時間の限りフェリーの船尾で出迎えてくれている・・・・・。
鷗たちと揺れながら、
「ギリシャを訪れるなら海からの回航|アプローチで入るのが、オシャレ。
アテネの海の玄関は、あのピレウス港・・・・・。」
(そう、Jules Dassin監督 Melina Mercuri主演「日曜はダメよ」の舞台)
既に、フェリーのデッキは実に陽気な気配に溢れていた。観光客も余り利用しない、多く地元の人たちの利用するフェリーなのかもしれない。
汽笛信号も待つか待たずか、持ち込んだカセットデッキにギター・ハーモニカ・アコーディオンまで搔き鳴らし、早々のミニコンサート。
既に打ち解けすぎて、激しい抱擁をしている者たちもいる、
何を祝っているのだ。
これぞギリシャ!これぞアテネ!ピレウス万才!
「日曜はダメよ」の真骨頂だ!
「Never on Sunday」日曜はダメよ(1960年)
実は昨日博物館の帰り道、”Broadway Theater”の場所を探し当て、しかもシアターのマネージャーと称する人からJules & Melina夫妻の住所まで聞き出すことができたのだ。
(日本を出る前、ギリシャ大使館で「現在、夫妻で舞台を上演している」ことを教えてもらってきていたのだ。舞台は既に、楽日となっていた)
ホテルへの帰路、マネージャーから戴いたMelinaのパンフレット・スチールを抱え、アテネに来て良かったかも知れないという思いが、俺の歩速を軽くした。
教えて貰った住所はすぐ分かった。
中はまるで見えないがその黒い塀が、まるで舞台の袖でもあるかのように、しばらくするとhelperのKaterigiという初老の夫人がフーッと現れた。
夫人に「Jules & Melina 夫妻のファンで、日本から2人に逢いたいと思い、Athensに来た」ことをたどたどしい英語で汗だくで伝えた。
(実は夫人も英語はあまり得意ではないらしく)
しかしこちらの趣旨は充分理解してくれたようで、
「カンヌ映画祭に行って、今二人は留守・・、
来週の火曜日には帰ってくるだろう・・」
と親切に、実直な声色で(?)教えてくれた。
彼女の対応は(二人に逢えそう)という力を与えてくれた。
「10:30P.M,Summer」夏の夜の10時30分(1966年)
Jules Dassin 監督
ときに映画は旅を誘い、人を誘う
これらは、半世紀以上前 初めての海外旅をした時の一年半程の日記に書かれていたものからの抜粋である。
旅行日記であるにも関わらず、その地の紹介や感動などは殆ど書かれておらず、唯々自身の上に絶え間なく押し寄せる大波・小波の如き体験群とその時々に揺らされる心を克明に描くことに終始しているように見える。
その大波・小波を懸命に掻き分けようとする度に、映画は登場する。
「面白いですねえ、サヨナラ、サヨナラ」(淀川長治)
「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」(水野晴郎)
評論家たちが残していったモノに倣るつもりでは無いだろうが、映画に何かを託しているようにさえ思えるのだ。
この日記のくだりを ” 彼 ” は以下に結んでいる。
「少年の頃の映画との出逢いが生んだ勝手な思い込みと、
既に映画監督とは違う道筋を進もうとしている「今」が、
ここまで(ギリシャ アテネまで)足を運ばせているということ。」
ときに映画は旅を誘い、人を誘う・・・・・
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?