ヒルコ 棄てられた謎の神
以下の文章は自分の読書感想を思いつくまま書いたもの。個人の主観を多分に含んでいるため、苦手な方は回れ右してください。
本の情報(読了日1/8)
書名:増補新版 ヒルコ 棄てられた謎の神 作者:戸矢 学 出版社:河出書房新社 ISBN:978-4-309-22611-8
この本では古事記や日本書紀に記述されている、イザナギとイザナミの第一子のヒルコの正体をその兄弟や天皇家の歴史から紐解いている。また、ヒルコが流されたあとどうなったかについても言及している。
そもそもヒルコについての記述はあまりに短い。古事記に記されている以下の一文のみだ。
「くみどに興して、子水蛭子を生みたもう。この子は葦船にいれて流し去りき。」
つまり、「イザナギとイザナミの2神が子供である水蛭子(ヒルコ)を生んだ。この子は葦船に乗せて流した。」ということだ。この本では水蛭子の「蛭」という字をもって歩くことも立つこともできない神と扱い、水に流す理由としている。
一方、この本ではスサノヲ=ヒルコとする説がでてくるが、自分はこの説を気に入っている。自分は小さい頃、スサノヲが各地で理由もなく暴れているというエピソードを知ったときなんだか違和感を感じた。当時、理由もなく暴れるなんておかしいと思っていた。
生まれてすぐに変な言いがかりで川に流されるなんて、誰でもやさぐれるだろう。やさぐれたヒルコが各地で好き放題しまくるのもなんだか共感できる。実の親に棄てられたことで誰も信用できなくなり、優しくしてくれた唯一の兄弟である太陽神アマテラスだけが親代わりとなれるという経緯はしごく真っ当なものではないか。
スサノヲが各地で暴れていたのは、アマテラスにかまってほしいと思っていたのではないかと自分は推測する。幼児が親にかまってほしくて些細なことで泣いて親を呼んだり、男の子が好きな女の子をいじめることに似ている。
大人はそうはいかない。親にかまってもらえず大人になった人の中には、かまってほしいという理由で迷惑行為をする人がいる。自分で自分を教育し、大人にするしかないのだ。アダルトチルドレンやインナーチャイルドという言葉があるが、彼らを認めて教育することは長く苦しいことだ。しかし、日本において社会の中で生きるには大人になるしかないらしい。
最後、スサノヲは大人になり多くの従者を従えられるようになる。ずっと子供でいたい人もいるだろう。保護者がいる内はそれでよいが、保護者がいない子供というものはとても危ない。詐欺や誘拐など重大事件に巻き込まれやすいのだ。認知症ならともかく健康体の大人は精神世界でも大人になるべきだと自分は考える。100%子供でいられる期間は人生においてあまりに短い。子供時代は大事にしようと思った。