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2020年5月17日 20:36
「隙間」僕の部屋の扉には隙間がある。ひどく古い家だから仕方ない。冬には冷たい風が忍びこんでくる。僕は四六時中ここで過ごす。たくさんの囁き声が僕の耳に届く。だけど、僕の声は届かない。まるで密室トリックみたいに。それでも、僕は声を振り絞る。僕はここにいるんだと叫ぶ。 #140字小説
2020年5月14日 23:54
「シール」最初はとても魅力的に見えたんだ。気に入らなければ剥がせばいいよって、みんなも言うしさ。だから、そっと貼ってみたんだ、慎重にね。だけど、今となってはどうだい? 剥がそうとしても剥がれないんだ。まるで皮膚の一部になったみたいに。僕の一部になったみたいに…。 #140字小説
2020年5月10日 19:22
「躾(しつけ)」“お前が憎くてやっているわけじゃない。どうしてそれが分からないんだ!” 父さん、あなたが“しつけ”と呼んだ暴力で、僕の身は美しくなったのでしょうか? もし僕の身が美しく見えるなら、それは僕を慈しんでくれた人たちの愛のために他なりませんよ。 #140字小説