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[HAM]電波の飛びについて考える

アマチュア無線で、より多くの人と交信するためには、電波が届きやすい見晴らしの良い場所で運用することがとても重要。ロケーションが良ければ、電波の飛びも良くなる。

とは言え、わざわざ出かけなくても常置場所(自宅)から無線運用できれば手間がかからないし、楽ちん。

サッと始めて、ささっと撤収できる。
自宅からの運用の一番のメリットは、容易に電源が確保できることだと思う。

問題となるのは、、、アンテナの設置だ。


釣竿アンテナ - HF用

HF帯の電波(私の無線機だと、1.8/3.5/7/18/21/24/28MHz)を使って交信する場合は、必要となるアンテナの長さがとても長くなる。
例えば7MHzの場合は、波長が約40mなので、理想的にはその1/2の20m、もしくは1/4の10mの長さが理想的。問題は、自宅マンションに10m長のアンテナを設置するのは容易ではない(無理)ということ。

そこで私が選んだのは、釣竿アンテナ。
最大長6.7m、300g。収納時の寸法70cm。
ささっと設置、ささっと無線、ささっと撤収が可能。

この釣竿アンテナを、アンテナチューナーと組み合わせることで電気的にアンテナの長さの足りない分を補完する。

自宅マンションのベランダから突き出した、全長6.7mの釣竿アンテナ。

導電性のあるカーボン製の釣竿アンテナを、物干し竿支柱(写真右)と物干し竿(写真上)にクイック取付金具で固定している。

釣竿の二段目に目玉クリップで繋がっている黄色いケーブルはアンテナへの給電線。アンテナチューナー(写真右下の黒い箱)を介して無線機に接続される。


アンテナチューナ - HF用

アンテナチューナは、アンテナと無線機の間の整合をとってくれる。
本来であれば、アンテナの長さを微妙に調整したりコイルを入れたりして整合を取らないといけないのを、自動でやってくれる優れもの。

整合が取れていないと、アンテナから電波が効率的に飛ばない。

https://www.icom.co.jp/lineup/options/AH-705/

アンテナチューナからは黒いケーブルが6本、ベランダの床にバラバラと広がっているけれども、これはラジアルケーブル。電気的なアースを確保することで、アンテナの長さを半分にすることができる。これがうまく機能しないと、アンテナから電波が飛んでいかない。

https://www.cqcqde.com/c/54/ohmcgw56sp

釣竿の末端付近から伸びる白い紐は、アンテナ落下防止用。
強風に煽られたり、不注意で釣竿が落下しても、大事に至らないようにするための保険。

機器設置完了!

マンションのベランダから6mあまり、ニョキっと張り出すのはなかなか目立ってしまって、正直、すこし気が引ける。

怪しい人がいる!なんて通報されたら面倒だしね。

できるだけ目立たないように、垂直に近い角度で張り出そうと思ったんだけど、この手のアンテナで短波帯をやる場合は、できるだけ水平に近い角度の方が良いらしい。

アンテナ設置作業をしていると、向かいの建物の非常階段を、そのビルの従業員と思われる人が昇り降りしているのに気付く。こちらには気付いていないようだけれども、なんか気まずい。


モービルアンテナ - VHF/UHF帯用

その名の通り、自動車に取り付けることを主目的としたアンテナ。
強力なマグネットで、自動車の屋根に取り付けるアンテナ基台。
私は、これらをマンションの部屋の小窓の外に設置して運用している。

VHF帯(145MHz)およびUHF帯(430MHz)での無線交信の場合は、それぞれ波長が2m / 70cmなので、アンテナも小型化できる。

ただし、この辺りの周波数となると、電波は上空の電離層で反射せずに突き抜けて宇宙へ逃げていくので、速い話が基本的に見通し範囲しか電波が飛ばない。(実際には、山や建物に反射して、影になったエリアにもある程度伝わる)

というわけで、VHF / UHFでの無線交信は、できるだけ高くて見晴らしの良いところからオンエアするのが理想的になる。

こちらも、落下防止用に紐を取り付ける。


この日の交信記録

電波の搬送状態が良かったのか悪かったのか、まだよくわからないけれども、交信できたのは以下の局長さん。
お相手いただき、ありがとうございました😃


7MHz帯 - SSB mode

2024/11/4 13:57 JG5UWK (高知県高知市)約270km
2024/11/4 14:28 JA9QIV (福井県丹生郡越前町)約100km
2024/11/4 14:43 8J2GERO (岐阜県下呂市)約154km

私としては、たった5wの送信出力で高知市や越前市とつながったのは、新鮮な驚き。これまで慣れ親しんだ、VHF / UHF帯の電波とは大違い。

岐阜の局はイベント期間中限定の特別記念局だったので、なんとしてもライバルたちに競り勝って交信を成功させたいと思って、10wに出力をアップした。送信出力を5w -> 10W(2倍)にしたら、電波の強さは√2倍(1.4倍)😃


18MHz帯 - SSB mode

2024/11/4 15:41 JS6TWW (沖縄県島尻郡 - 南大東島) 約1,110km

7MHz帯での交信に成功したばかりだったので、その他のバンドにも挑戦してみようと18MHz帯をサーチしたら、南大東島の局長さんのお声が強力に聞こえてくるのに気付く。

どうやら向こうはかなりの大出力っぽい(200w〜?)が、こちらは10wにすぎない。
向こうのお声は聞こえても、こちらの声が届くとは限らない。

ダメ元で呼んでみたら、まさかの応答!
あちらさんのかなり優秀な無線設備に助けられた形だと思う。
感謝しかありません。


430MHz帯 - FM mode

2024/11/4 19:22 JO4HJX/3 (滋賀県草津市走行中) 約4-5km

アンテナを繋ぎ変えて、無線機のスイッチを入れたら飛び込んできたのがこの局長さんの電波。北に向かってドライブをしながらの交信。会話中に段々と無線通信のコンディションが悪くなってきて、短い会話で終了。

滋賀県の場合、真ん中に琵琶湖があるので、結構見晴らし距離が広いのがメリット。双方のロケーションと設備さえ良ければ、名古屋市や三重県津市、大阪府泉南市のあたり(60-100km)まで届くことも。
この辺りまでくるとすでに地平線の向こうなのだが、山々やビル等に反射して届いているみたい。

しかしながら、すぐお隣の京都市や、70kmほど南西にあたる兵庫県神戸市方向は山の影で聞こえないことも。こういったところが、UHF帯での交信の特徴と言えるかもしれない。


仮説 - この日の交信状況を図式化する

(以下は、ただいま検証中の仮説ですので、間違ってたらごめんなさい。)

だいたい、こんな感じかなぁ。


[私のロケーション]
・滋賀県大津市、海抜120m辺りなので、地平線までの距離は約40km。

  SQRT(2 * 6378 *(120) / 1000) = 39.12441693


[無線交信状況 - 7MHz帯]
・福井県越前町、岐阜県下呂市、高知県高知市の局の電波は、クリアに受信できた。
・いずれも大津からは地平線の彼方となり、直接波が届かない。電波は地表から平均300kmの電離層に反射している可能性。
・高知県高知市からの電波は電離層に48°、福井県越前町や岐阜県下呂市からの電波は同じく80°ほどで入射し、それぞれ反射していたと考えられる。

 DEGREES(ATAN( 300 / (100 / 2) ) ) = 80.53767779 、、、 越前町
    DEGREES(ATAN( 300 / (270 / 2) ) ) = 65.77225468 、、、 高知市


[無線交信状況 - 18MHz帯]
・南大東島や北海道の局の電波は、クリアに受信できた。
・それぞれの局の交信相手局(1エリアコールなので、関東地区と思われる)の電波は、雑音に埋もれてほとんど聞き取れない。
・関東地区の無線局が、揃いも揃って小出力局だったとは思えない。
・南大東島も北海道も関東も、大津からは地平線の彼方となり、直接波が届かない。電波は地表から平均300kmの電離層に反射している可能性。
・南大東島や北海道からの電波は、電離層に29°ほどで入射し、反射していたと考えられる。
・東京からの電波が大津に届くには、電離層に59°ほどで反射していなければならなかったが、前述の7MHzよりも周波数が高いため直進性が高まり、角度が深かったためそのまま電離層を突き抜けたと考えられる。

    DEGREES(ATAN( 300 / (1100 / 2) ) ) = 28.61045967 、、、 南大東島
    DEGREES(ATAN( 300 / (360 / 2) ) ) = 59.03624347 、、、 東京駅


[無線交信状況 - 430MHz帯]
・滋賀県草津市からの電波はクリアに受信できていたが、相手局が北上して守山市、さらに先へと進むうちに受信状況が悪化した。
・430MHzだと電離層を簡単に突き抜けるので、直接波か、建物や地形に反射した波が届くことが必要となる。
・前述の通り、私のロケーションから地平線まで約40kmだが、間に障害物が多くなると、影となって繋がりにくくなる。

今後、もっと交信記録を重ねて、上記の理解がどの程度妥当であったか検証していこうと思う。



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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Akio van der Meer
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