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【読書感想文】『カニカマ人生論』清水 ミチコ 著(幻冬舎)

 著者である清水ミチコさんのことは、モノマネタレントとしてご存じの方も多いのではないでしょうか。「笑い」に対して真剣に向き合っている著者が語る人生論とは何なのか。自伝エッセイとのことであるが、どんな人生を歩まれてきたのか。「清水ミチコさんが、現在の”清水ミチコ”になれたのは何故なのか」ということを知りたくなり、本書を読んでみることにしました。『カニカマ人生論』というタイトルからはまったく想像できなかったけど、本書を読み終わると、気持ちがとても軽くなりました。本書を通して、著者の支えになっている言葉達や考え方に数多く出会うことができました。

 ちなみに、タイトルの『カニカマ』とは、多くの人が一度は食べたことがある蟹の身に似せて作られた蒲鉾(かまぼこ)のことです。主な原料がスケトウダラである『カニカマ』は、食感や色合いなどが蟹そっくりです。著者曰く、「カニカマは日本が誇るモノマネ芸の元祖」で、「カニカマにはB級グルメだからこその味わいがある」とのことでしたが、私は『カニカマ』が「モノマネ芸」と接点があると捉えたこともなかったので、この捉え方は新鮮に感じました。「視点を変えることで、世の中の捉え方は大きく変わるのだ」ということを感じさせてくれる訴求力の高いタイトルになっていると思います。今後、『カニカマ』を見かけると、「モノマネ芸の元祖」と反射的に思ってしまいそうです。

清水さんに繋がる人々

 清水さんの幼少期のエピソードが多く語られており、個性溢れる方々と過ごされてきたということがわかりました。もしかしたら、個性が強い人達の方が思い出に残りやすいからかもしれませんが。友人や親戚や家族と過ごした思い出話の中でも、特にお父様との思い出話には思わず笑ってしまいました。清水さんのお父様は破天荒な方だったようです。お父様の新規事業展開の話や借金の話などもあり、清水さんがお父様の思い出を語る時に、「何の根拠もない自信ほど強いものはありません。」と感想を述べられていました。不確定なことが多い世の中だからこそ、自信満々であることは一層の輝きを放つのだと感じました。身近にそういう生き方をされた人がいるといないとでは、人生に対するスタンスも違ってくると思います。きっと、お父様の存在が「自分自身を信じて己の道を進む生き様」の良いモデルケースになっているのだと思いました。私も「根拠のない自信」を持てるように、小さな物事でも良いので成し遂げて、自信を積み上げていこうと思いました。でも、清水さんのお父様のような領域には到達できそうにはありませんが。

タモリさんは偉大

 清水さんがタモリさんとお仕事をされた時のエピソードも語られていました。タモリさんと接して、「いつも機嫌よくそこにいる、ということは、一番大切なマナーですよ」ということを学ばれたそうです。自分を律して、自分の感情をコントロールすることは本当に難しいと思います。人間だから、気分の浮き沈みがあるのは当たり前で、物事に一喜一憂してしまうのが普通だと思います。でも、いつも機嫌が良い人がいると、場の雰囲気は和やかになると思います。「自分に対して上機嫌でいることができる人がいたら、それは人生の成功者」と、清水さんは語っていました。「上機嫌」は、自分自身と周囲の人達との好循環をもたらすキーワード。私は感情の切り替えが難しい時は、コーヒーを飲むやストレッチをするなど、何か感情のスイッチが切り替わる動作を介して「機嫌」をコントロールしていこうと思いました。

林のり子さんの名言の数々

 林さんは清水さんのバイト先のお店のオーナーだった方で、この方との出会いが貴重だったと回想されていました。例えば、清水さんは作業を始める前に、「場所を作る」ということを林さんから指導されたそうです。「場所を作る」という過程には、「一回落ち着く」という思考が含まれるので重要であるとのことでした。落ち着いて視野を広くして周囲を見渡す。急いでいる時や慌てている時は、視野が狭くなってしまい失敗しがちだと思います。調理作業や食器洗い作業では、手を怪我する場合もあったとか。だからこそ、「場所を作る」というシンプルな言葉の中に含まれるメッセージは奥が深いと思いました。自分のパフォーマンスを高めるために、自分の力を発揮できる環境を整えること。私自身も、「場所を作る」という言葉に魅了されて、何か物事を始める際には、この言葉を思い出すようにしています。
 そして、林さんは、「世の中はむしろ、うまくいかないようにできていることを知ってた方がいいですよ」という助言も清水さんにされたそうです。そして、清水さんはこの言葉から「不運なことが多い世の中だからこそ、喜びは見出せるということ。幸せにはなれないようにできているから、一瞬の笑いも生まれるのかもしれません」ということを考えたそうです。ありきたりの言葉ではなくて、心に響く言葉だと思います。永遠の幸せはないという現実をきちんと伝えてくれたおかげで、世の中の捉え方が変わったそうです。こういう経験があったからこそ、清水さんの「笑い」は人を明るい気持ちにさせる内容なのだと改めて思いました。決してネガティブな言葉ではないけれど、「地球はやんわり悲しみに満ちている」と知っているだけで、変に焦ったあり、見栄や嫉妬で苦しんだりすることもなく、世の中のあるがままを受け入れることができるのではないかと思いました。

最後に

 「人生を振り返って後悔することは?」という問いに対して、最多回答は「もっと人の目を気にしないで生きればよかった」だそうです。自分の生き方を最終的に決めるのは自分自身。一日の時間をどう使うかの積み重ねが自分自身を創っていく。そして、自分の可能性を信じられるのは自分自身だけである。本書を読み終わると、「生き方」に対して熱い気持ちになってきました。きっと、それは本書が偽善じみた言葉ではなく、包み隠さない本音の言葉で綴られているからだと思います。『カニカマ人生論』を通して、実感のこもった言葉に多く出会うことができました。素敵な本をありがとうございました。
 あと、本書を読み終えて、改めて「清水ミチコのシミチコチャンネル」を視ると、また違った視点で鑑賞することができ、面白かったです。 

#読書の秋2022
#カニカマ人生論
#幻冬舎


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