最終列車を逃しただけなのに・・・
さて第1回目に紹介するのは吉村昭先生の『逃亡』です。
時は太平洋戦争の最中の1943(昭和18)年秋。
主人公は霞ヶ浦海軍航空隊三等整備兵の望月幸司郎。
望月は外出許可を得て、兄に紹介された女性の実家を訪問したが、その帰りの最終列車に乗り遅れてしまった。
当時軍隊の規則を破った者に対する制裁はすさまじく、骨を折られたり、歯を砕かれることも日常的だった。それに耐えかね自殺する者もいたほど。
帰る手段がなく、門限に間に合わず制裁を受ける自分を想像し恐怖に震えていた。
しかし、幸運にも40歳くらいの山田という男性に声をかけられ、トラックで送ってくれた。
だが、これにより軍隊から脱走し、終戦まで逃亡生活をおくることとなる。
なぜ『逃亡』することになってしまったのか?
さて、ここからは吉村先生のご関係者および吉村ファンの方々に叱られるかもしれませんが、かなり「超要約」で説明します。
山田:知人がパラシュートを作り、海軍に売り込みたいので、隊にあるパラシュートを貸してくれない?
望月:無理ですよ、厳重に管理しているので。
山田:門限を破らないよう助けたじゃないか。
望月:なんとか内緒で持ち出します!
やってみると簡単に持ち出せたので、気が緩みすぐに戻さなかった。
当然パラシュートの管理担当者が足りないことに気づく。
望月:自分に疑いがかかっている。どうしたらいいのか。
山田:では戦闘機に積んであるパラシュートを取り出し、持ち出したものとして置いて、それから戦闘機を燃やしてしまえばわからなくなる。そうしないと死刑になるぞ。
望月は山田から渡された時限発火装置を使い、戦闘機を燃やすことに成功する。
しかし、自分の工具袋にパラシュートの一部が残っていたため、持ち出しがバレて禁錮室(牢屋)へ。
さらに戦闘機放火ついても、取り調べを受ける。
「このままでは山田との関係もバレて、死刑になるかもしれない」
遂に望月は逃亡を決意する。
そして『逃亡』が始まった
同じく禁錮室(牢屋)に入っている者から手錠の開け方を教わる
便所に行き、そこで手錠を外し、脱走
忍び込んだ家から郵便配達の帽子と制服、自転車を盗み、東京へ
運送会社に住み込みで働く
東京では軍隊に見つかる可能性が高いので、千島列島で働くため列車に乗る
千島列島に行くはずが、北海道の帯広で降ろされ、刺青者の監視のもと強制労働を強いられる
何人も死者が出ることに耐えかね、逃亡し、釧路行きの列車に忍び込む
釧路で仕事を探し、多度志村鷹泊(現深川市鷹泊)に行く
鷹泊では労働者ではなく、逆に監視役になる
1945年8月15日終戦
約一月後網走で働いたが、嫌になり逃亡し、赤平炭鉱で働く
赤平警察署の部長に尋問を受け、軍からの脱走を告白
アメリカ陸軍情報部の中尉に旭川で尋問をうけ、山田がアメリカのスパイであったことを知る
情報部の中尉から元日本軍兵士のスパイ活動を命じられ、成果をあげ、しばらくスパイ活動をする
5年後スパイ活動をやめる
ここまでがこの小説『逃亡』の内容です。
そしてこれ全て「実話」なんです❗️
この小説は吉村先生の自宅に見知らぬ男から「軍用機を爆破し、逮捕され、脱走した男がいるので会え」との電話があったことから始まります。
そして吉村先生は望月(実名ではなく名前は変えています)に直接会い、話を書き留めますが、あまりにも劇的な内容なので、最初は疑っていました。
しかし、吉村先生に全てを話した望月はすぐに霞ヶ浦飛行隊跡や北海道に行き、自分の逃亡先を確認して、そのことを吉村先生に報告しています。
小説の最後は軍で取り調べをした元大尉に望月が面会し、吉村先生も同席して、事実であることを確認します。でも、望月について吉村先生に電話をかけた者は誰か?それは謎のままです。
本日は「小説」のあらすじの説明で終わります。
次回はこれが「実話」であることを吉村先生の別の作品や随筆から調査結果をお伝えします!('◇')ゞ
でも、この小説が「面白そう!」と思ってくれた方はすぐに読んでください!その後、調査結果を読んでくれても結構です。図書館に行くか?アマゾンで買うか?はあなた次第です。
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