頂き女子りりちゃん求刑13年でも生涯未婚の孤独で悲惨な団塊ジュニア男性は“ガチ恋詐欺”に騙され続けます【中村淳彦の名前のないコラム】
男性3人から約1億5千万円をだましとったとして逮捕された頂き女子りりちゃんこと渡辺真衣被告(25)。3月15日、名古屋地裁で検察側は懲役13年、罰金1200万円を求刑。見せしめ的なものとはいえあまりに重い求刑がどうなるか判決が待たれますが、これで“ガチ恋犯罪”がなくなるわけではないのですーー。
ホス狂女子はみんな普通にやっていたこと、なのに…
ノンフィクションライターの中村淳彦です。
懲役13年ってマジですか? 頂き女子りりちゃんに求刑が出て大ニュースになっています。
検察側は同種犯罪を助長したってこと糾弾していて、恐ろしく重いです。法律詳しくないけど、今ちょっとネットで見てみると詐欺罪の上限は10年、どんなに高額を取ってもそれ以上になることはない。どうして上限を上回ったのかというと、自分の頂き女子活動とnoteで売っていた「りりちゃんの魔法マニュアル」が詐欺罪の幇助になるってこと、あと税金をまったく払ってなかったから所得税法違反らしい。重なりに重なって求刑が13年ってことです。
社会は常に変化していて、これから、こういう社会を作っていこうってときに大きなうねりがある。それまで普通に行われていたことが、潮目が変わって急に罪になったり、重くなったりみたいな瞬間があるわけです。僕はエロ本とかAVとか、あとB級出版でいくつかそういう節目は見たけど、今回のりりちゃんもそうですね。
りりちゃんのやっていたことは、ホスト狂いの女の子たちが普通にやっていたこと。日常行為の一環がこんなことになってしまったわけです。
僕が覚えている厳罰化の節目は、一部の人は知っていると思うけど、アダルトビデオメーカーのバッキー事件。バッキー事件はやりすぎていたけど、アダルトビデオの撮影で女性に対してエグイことするのは、当時のアダルトビデオの世界では競うように普通に行われていたし、プロダクションにこういうことやるからって伝えてOKをもらって、よくわからないで撮影にきた女性がヒドイことをされるみたいなシステムがあった。ビジネスパートナーであるプロダクションに黙ってやるわけじゃなかったら、全然アリだったわけです。だからバッキー事件も日常業務の一環で、業務として仕事を頑張りすぎたら、あんなことになってしまったわけです。
主犯のメーカーの中心人物の某さん、僕も良く知っている某さんは懲役15年、2年半ぐらい前に出てきました。その主犯を雇っていた会長は懲役18年だったから、おそらく今年出てくるんじゃないでしょうか。
主犯の某さんはライターで、副業としてアダルトビデオメーカーのAV監督みたいなことやっていた。ちょっとやりすぎなんじゃないの?というのはあったけど、お客さんのために頑張りすぎて、事件になってしまって、逮捕になってしまって懲役15年です。
そういう潮目の移り変わりには見せしめ的な、あり得ないぐらい重い判決が出る。今回のりりちゃんも見せしめだから、もうみっちりと刑務所で懲役刑をくらわすということです。そういうことをすることによって、この犯罪はまずいことを広めて、同じようなことをしている人に止めさせる効果を期待するわけです。
voicyでりりちゃんのことをずっと解説しているけど、ホスト狂いの女の子たちは主に20代前半で、ホストにハマってしまうと体を売らざるをえない。体売る以外に高額なお金を作りようがないから、そういうことになる。
多くはソープランドに行きます。ソープランドとパパ活を兼ねるとか。中年男性からお金をわけてもらうみたいなことを徹底的にやって、お金を作っていくわけです。だからソープで長時間働いたり、地方の出稼ぎ風俗をして、まとまったお金を持って帰るみたいなことをしているわけです。
風俗嬢になることはホスト狂いの中では常識と化していて、歌舞伎町2丁目を歩いてる女の子たちはほぼほぼ全員までいかないけど、9割方が風俗嬢やっていると思います。体を売っている女の子たちです。
一方、日本は急激に生涯未婚率が上がって、アラフィフの僕と同年代ぐらいの人あたりから、男性がめちゃめちゃ余っている。非モテとか、結婚とか彼女いない歴=年齢みたいな人を膨大に輩出した。どうして、そんな膨大に出してしまったのかというと、世の中が変わってしまって、団塊ジュニア世代がババを引いて、とにかく収入が低くて結婚どころじゃないってことと、もうひとつ、団塊ジュニア世代とかバブル世代あたりの50代男性あたりが思春期の頃から日本のオタク文化がめちゃめちゃ充実した。2次元にハマっていたら時間も潰れるし、寂しくないしみたいな感じになったことが理由です。
仕事でも非正規の下っ端として使い倒され、仕事や日常生活ではなんの承認欲求も満たされない。オタクしながらなんとかギリギリ生きて、さらに全く彼女いない歴=年齢でそういう3段階が重なると、おそろしい寂しさみたいなのを抱えることになる。孤独で孤立して、こどおじとかで精神的に成長してないから、自分の心は高校生とか10代後半のままみたいな、おそらくそういう人が多い。
中年男の寂しさを発見したりりちゃんが、女の子たちに「風俗なんてしなくていい、アラフィフの団塊ジュニアオヤジに寂しい人が膨大にいすぎるから、そういう奴らは優しくするだけで、あいつら金出すよ」ってことを伝えたわけです。さらに情報商材によって広めまくって、多くの女の子たちがりりちゃんの言う通りに、体を売りながら、団塊ジュニアの寂しいオヤジがきたときに優しくした。オヤジに優しい言葉とか投げたら、そのオヤジたちはすぐにガチ恋状態になって、どんどんどんどんお金が引けると解いたわけです。
その事実がSNSで広まりまくって、本当にすごいとなって、あらゆる繁華街で、りりちゃんの「オヤジに体を売るのもいいけど、プラスでお金引っ張ろうよ」みたいな、「そしたらもっとホスト行けるし担当にもっとお金を貢げるよ」ってことが大流行してしまったのです。
実際にりりちゃんは2億円を取っているらしい。生涯未婚の非正規みたいな男性から、まあ公務員みたいな人もいると思うけど、そういう寂しい男性から何千万も取るのは、おそらく貯金を全部貢がせている。りりちゃんはカリスマ的な存在になっていたから、全国で「恋愛詐欺に遭いました」「女の子に貢いで騙されてお金奪われてしまいました」みたいな、警察に駆け込む人がやっぱり一定数いたと思う。
ほとんどの人が泣き寝入りだろうけど、一部の人が全国の警察に駆け込んで、なんなんだこの現象はってことで、やっぱりりりちゃんが真っ先に目をつけられた。警察もホスト狂いという存在を知りだして、こういう循環でお金が流れて、犯罪まみれじゃないかってことで、もう本腰入れて対策となって、昨年11月の警察庁長官の歌舞伎町視察という結末に集約されたわけです。
りりちゃんはコロナ前にはもうカリスマ化していたので、4、5年前かな。となると、情報商材「魔法のマニュアル」は20歳ぐらいのときに書いて、それが1年2年でパーッと全国に広まったことになる。りりちゃんがカリスマ化してホストもブームになった。
ホストがどうしてブームになったかというと、末端の最下層のアラフィフのオヤジから巻き上げたお金がホス狂い女子を経由して、そのまんまホストに移動している。ホストが歌舞伎町を牛耳るぐらいお金がまわっていたから、もうどれだけ被害者がいるのって感じでしょう。だからホストが1億とか1億2000万とかトラックで広告しているけど、あれはイコール、寂しいオヤジが奪われたお金だともいえる。
全貌を警察が理解したとき、「ホストとその周辺を潰さなきゃいけない」となって警察庁長官が視察した、という流れでしょう。だから1日2日でそうなったわけじゃなく、いろんな犯罪とか相談とか被害届が積もりに積もって、撲滅しなきゃっていうのが、まあ今なんですよね。
りりちゃんがオヤジに体を売るのではなく、優しくしてあげて、お金を貢いでもらおうみたいなことは、被害者がいる犯罪ではあるけど、やっぱりバッキー事件の女の子にヒドイことするとかとは全然違うと思う。だから、この懲役13年求刑は大変気の毒。そう思ってる人めちゃめちゃ多いと思うし、不運でした。りりちゃんは女の子たちに情報商材を軽い気持ちで「体を売るんじゃなくて、優しくしてあげるだけでいけるよ」みたいなことを伝えただけ。それがたまたま犯罪だったってことで、悲惨な結末となってしまった。
りりちゃんが逮捕されたからって、余ってしまったアラフィフの生涯未婚のオヤジの底知れない寂しさみたいなのが癒されるわけじゃない。なんの問題も解決したわけではないので、りりちゃんが見せしめになって少しおとなしくなると思うけど、また新しい形になって生まれるのは間違いないわけです。
孤独で悲惨な団塊ジュニアのオヤジが死ぬまで続くから、この手の犯罪はまだ20年間は終わらないです。りりちゃん懲役13年求刑ってことで、一体何が起こっているのかを僕なりに解説してみました。
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