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酒井透

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(さかい・とおる) 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイールやパ…
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2024年6月の記事一覧

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】愛知県西尾市鳥羽町で行われる『鳥羽の火祭り』

 自らの命を顧みることもなく、燃え盛る巨大な松明に挑んでいく男たちがいる。彼らの使命はただひとつ。神殿に祀るための「神木」と「十二縄」を取り出すことだ。  毎年、愛知県西尾市鳥羽町にある鳥羽神明社(とばしんめいしゃ)で行われている「鳥羽の火祭り」は、見るものの想像をはるかに超えている。男たちは、大松明「すずみ」の中に納められている「神木」と「十二縄」を引き抜くために梯子を駆け上り、激しく燃えさかっている「すずみ」を激しく揺さぶる。  「すずみ」の高さは、5メートル。重さは

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】九州某所・山中の洞穴にある謎の祠『シシ権現』

 ヒンヤリとした冷気が肌を刺す自然洞穴の中には、おびただしい数の頭蓋骨が祀られていた。  そこには、イノシシやシカのものと思われる頭蓋骨が整然と並べられており、牙や角がついているものもある。その数、10000~20000個。洞窟の奥には、傾きかけている小さな祠がある。  九州某所の山中にある「シシ権現」は、知る人ぞ知る神聖な場所だ。ここに祀られている頭蓋骨は、すべて山猟師によって奉納されたものである。山猟師は、毎年、狩猟が始まると安全狩猟と豊猟を祈願するために、イノシシや

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】東京都杉並区の『商船三井・上井草社宅』

 廃墟マニアや建築構造物マニア、ゴスロリファッションマニア、写真愛好家などから親しまれていた「商船三井・上井草社宅」(東京都杉並区)が取り壊されていたことが分かった。  この建築物は、 1970年代に建てられたものと見られ、2018年まで住居として使われていた。閉鎖されてからは、敷地内に入ることはできなかったが、独特の外観がフォトジェニックなことから注目を浴びていた。  何と言ってもその特徴は、住宅公団などで良く採用さていた階段室型の住棟になっていることや階段室部分にある

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】名古屋市中村区の骨仏『中村観音』

 愛知県名古屋市中村区にある中村観音(瑞龍山白王寺)に、コンクリートや漆喰に火葬場から出た廃骨を混ぜて練造された骨仏が奉安されている。  この骨仏を発願したのは、白王寺の初代住職。寺の近くにあった米野火葬場から出た廃骨を供養することと、地域の発展守護を願って、昭和8年に高さ8メートルあまりの十一面観世音菩薩像を練造した。  名古屋市中村区は、日本3大遊郭のひとつである中村遊郭のあった場所だ。そのようなことから、骨仏が練造されると中村遊郭で働いていた遊女の遺骨がその『胎内』