国語辞典の図版を数える : ②辞書ごとに見る
こんにちは、Lakka26です。
📍前回の復習
前回の記事では、調査対象・方法の説明と調査結果を簡潔に示しました。
対象となった9種類の辞書について図版数や図版率をランキング形式でまとめた上で、次のように述べました。
↓↓ 前回の記事はこちら ↓↓
ここからは、そうした違いを生み出したそれぞれの辞書の特徴に触れながら分析や考察を進めていきたいと思います。
今回は小学館から出ているこちらの2つの辞書を見てみましょう。
💡<新選10>小学館(2022)を見る
初版:1959年
ターゲット層:中学生~社会人
60年の伝統を誇り、小型国語辞典としては最大級の約9万4000語を収録。2022年に改訂されたばかりで、万華鏡モチーフのおしゃれな装丁が目を引きます。
そんな新選国語辞典は、初版の序文で次のように述べています。
つまり新選国語辞典が目指しているのは、
高校生・中学生の学習国語辞典として、また一般社会生活上の必要に応ずる国語辞典として、ほんとうに役にたつ”利用価値の高い辞典”。
新選国語辞典の序文については以下の記事で熱く語られています。
前回示したとおり、<新選10>は9種類の中で(数的にも割合的にも)最も図版が多く、2番目に多かった<旺国11>にも大きな差をつけています。つまり、<新選10>にしか載っていない図版が多く存在するということです。
以下が<新選10>にのみ載っている図版のリストです。全部で193個あります。(表2)
表を見てみると「維管束」「腋芽」「コイル」「ビーカー」といった理科用語が多数あることがわかります。他には「対頂角」の図版があるのも特徴的だと感じました。「錯角」は<旺国11><学現新6>にもありますが、「対頂角」の図版が載っているのは意外にも<新選10>のみでした。
新選国語辞典の基本方針のひとつに、「国語科だけでなく、高等学校・中学校のすべての学習に必要なことばを取り入れる」というものがあります。
こうした方針が図版の数や、その独自性にも反映されているのではないでしょうか。
イラスト以外には表があることも特徴です。「月の異名」「二十四節気」「年齢の異名」「三の名数の例」などが表でまとめられており、とてもわかりやすく面白いです。「本場所」の表があるのには驚きました。
💡<現国例5>小学館(2016)を見る
初版 : 1985年
ターゲット層 : 高校生~社会人
親しみやすくわかりやすい辞典として、教育現場でも定評がある国語辞典です。最新版である第5版では、国立国語研究所の日本語コーパスを全面的に活用した改訂が行われました。
こちらも初版の序文を見てみましょう。
現代国語例解辞典は、撫で肩の辞典、つまり「親しみやすくてわかりやすい、従来の辞典の枠にとらわれない、応用範囲の広い辞典」を目指すべき姿としています。
<現国例5>は、「永字八法」「をこと点」の2つに図版を載せています。
「永字八法」は今回調査した9つの辞書の内5つ(<新選10><旺国11><三国8><三現新6><現国例5>)に図版があり、国語辞典では定番の図版なのではという印象を持ちました。対する「をこと点」の図版を載せているのは<現国例5>のみでした。2分の1が「をこと点」なの本当にどうして…?
現代国語例解辞典の一番の特徴として、類語対応表があげられます。例えば「経験」の項目ではこうです。
△は用いることもできるが避けた方が無難と考えられる場合、✕は不適当と思われる場合を表しています。例文があげられていることによって、その微妙な用いられ方の差を感じることができます。
現代国語例解辞典にはこのような表がおよそ1000個収録されています。
類語対比表については以下の記事で詳しく紹介されています。
また、グラフを用いたコラム欄も特徴的です。コラムには国立国語研究所の日本語コーパスを活用しており、255のコラム、その中に345語が収録されています。巻末にコラム索引があるのも嬉しいポイントです。
このように、ことばそのものやその用いられ方に焦点をあてた現代国語例解辞典は、イラストよりも表やコラムを入れることを優先したのではないでしょうか。
📍まとめ
<新選10><現国例5>についてまとめました。辞書によって全く異なる方針があり、それによって内容も大きく変わってくることを感じていただけたと思います。
次回は<三国8><三現新6><新明国8>の3つの辞書について扱う予定です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
③を投稿しました!(2024年1月8日追記)
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