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【活動報告】国立国語研究所見学

6月18日に国立国語研究所の見学をさせていただきましたので、そのレポートをしていきたいと思います。今回は3名が参加しました。(Lakka)


イベント概要

当日は、国立国語研究所の柏野和佳子先生に案内していただきました。柏野先生は『広辞苑』や『岩波国語辞典』の執筆や編纂に携わっているだけでなく、国語辞典に関する論文も多く執筆されています。

今回の見学イベントは、以前柏野先生にお会いした際に、ぜひみなさんで国語研へ!とお誘いいただいたことをきっかけに実現しました。(完全に先生のご厚意です。本当にありがとうございます。)

当日は資料室で辞書編集にまつわる資料、図書室で貴重な辞書や国語研ならではのコレクションの数々を閲覧させていただきました。
OBの2人は調べものやイベントで以前にも来館したことがあったようですが、私は今回が本当に初めて。どんな資料があるのだろうと胸を躍らせながら国語研の中に入りました。

まずは研究資料室へ

柏野先生に温かくお出迎えしていただき、最初に向かったのは研究資料室です。「資料室」と聞くだけでなんだかわくわくします。

研究資料室ってどんなところ?

国立国語研究所の3階にある研究資料室では、国立国語研究所がこれまでに実施した調査研究で収集・作成した資料 (調査カード、収録音源など) を保存しています

国立国語研究所公式サイトより

こちらの資料室にある資料は、調査・研究・教育を目的とする場合に限り閲覧が可能とのこと。「来所予定日の1週間前までに必ず申し込みが必要」、「個人情報を含む資料や状態の悪い資料などは閲覧できない場合もある」という点には注意が必要です。(詳しくはこちら→研究資料室
逆に言うと、きちんと手続きさえすれば貴重な資料を閲覧できてしまう…!すごい!!

「辞書編集に関する調査研究」を見る

今回は「辞書編集に関する調査研究」資料の一部を、資料室手前のお部屋で見せていただきました。(通常の閲覧場所は研究図書室になるそうです)

「辞書編集に関する調査研究」は、1948年度から1952年度にかけて国語研で行われたもので、資料全体の量はなんと段ボール214箱分!

資料の一部

この資料がどんなものかという情報は、「国立国語研究所 研究資料室収蔵資料(Research Materials on NINJAL)」にて検索、確認することができます。以下一部を抜粋しました。

本調査研究は,科学的な調査研究を行って国語の合理化の確実な基礎を築くという研究所の目的のひとつである各種辞典の編集を目指して実施された。調査・研究の内容は以下の通り進められた。  
(1)準備の最初として『New English Dictionary』,『大日本国語辞典』,『言海』,『大言海』の内容分析を試み編集技術のデータを集めた。
(2)『大日本国語辞典』,『言海』,『大言海』の三種の国語辞典を使って綿密な編集方法の調査を行った。
(3)『大日本国語辞典』,『言海』,『大言海』の三種の国語辞典の各語別一覧の作成を計画,実施した。これは収録されている各語にどのような説明を与えているかを調べるために行うものであり,一覧作成によって代表的な国語辞典の各語の説明を一枚の紙の上で同時に比較検討できる便があると考えられた。なお年報には「この仕事は昭和23年度に日本語教育振興会に委託して作製した対訳辞典の語別一覧と相まって完成するもの」と記されている。
本調査は(3)の作業を終えたところで終了しており,辞典編集にまでは至らなかった。

辞書編集に関する調査研究

メインはやはり『大日本国語辞典』『言海』『大言海』の各語別一覧資料。これ全部切って貼り付けての作業をしたってことだよね…??と考えると本当に気が遠くなる思いがします。

ほんしょく【本職】

作業中のメモも残っており、本当に人がひとつひとつ地道に作業していたんだなあということを実感。辞書編集が地道な作業であることは『舟を編む』からも明らかですが、辞書研究も同じくらい、もしくはもっと大変な作業なのでしょう。

研究図書室ツアー

次に訪れたのは研究図書室。とにかくたくさんの辞書、辞書、辞書!!!!うれしい!!!

2階の閲覧室には辞書がぴったり入る本棚がずらり。かなりほしい。

研究図書室ってどんなところ?

国立国語研究所研究図書室は日本語学、言語学、日本語教育、及び関連分野の文献・資料を収集・所蔵している全国で唯一の日本語に関する専門図書室です。

国立国語研究所公式サイトより

日本語と外国語の図書約16万冊、雑誌約6000種が所蔵されているそう。
こちらも資料室と同様、研究等の目的であれば誰でも利用することができます。必須ではありませんが、事前に閲覧申し込みをしておくと便利です。(資料閲覧申込フォーム

貴重書を見る

事前に閲覧希望を出していた資料をはじめとするいくつかの貴重書を出していただきました。
一番盛り上がったのは大日本永代節用無尽蔵という辞典。後から調べたところ、「節用集」の一つだったようです。内容が面白かったことはもちろん「見坊豪紀贈」という印がついていたことでも盛り上がりました。見坊豪紀先生は『三省堂国語辞典』の主幹であり、”辞書かがみ論”を唱えたことでも有名です。

せつようしゅう【節用集】
〔「せっちょうしゅう」とも〕
室町時代、1474年頃成立したイロハ引きの辞書。また、これを改編増補あるいは縮約して明治年間まで用いられた国語辞書の総称。日常語彙や古典語を、頭音によってイロハ順に並べ、それを天地・時節などに分ける。内容が簡易で引きやすく、各種の本が行われた。古態を保つ慶長以前のものは古本節用集と呼ぶ。江戸時代には種々改編増補され、内容・体裁をやや異にしたものが現れた。

『大辞林4.0』三省堂

上に引用した解説からわかるように、「節用集」は辞書の書名ではなく総称です。

「節用集」という単語は、日本史で聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。私も高校のとき日本史の授業で習いました。日本史、本当に苦手だったのでほとんど記憶がないのですが、「節用集」の解説のときは「辞書」という言葉が出てきて嬉しくなったので今でも覚えています。

イロハ順らしいぞ、ということはなんとなく知識としてあったのですが、実際に見てみるとただそれだけの辞典ではないことがわかります。
前半のページは地図が載っていたり(しかもカラー!)、家紋が大量に載っているページは今でいうタレント名鑑みたいなものでしょうか。どのページにも手の込んだイラストがたくさん描かれており、辞書というよりは国語便覧のようなわくわく感がありました。

書庫探索

その後向かったのは、1階の閉架書庫。通常は入ることができませんが、今回特別に見学、撮影させていただきました。

日本十進分類法(NDC)の8類ばかりが集められた夢のような空間です。どこを見ても言語に関する本がつまっていて、逆にどこを見ればいいのかわからない。出てこられなくなりそう。

すごい

こちらではみんなでニホンGO!オフィシャルブック:正しい日本語は本当に”正しい”の?の話で盛り上がりました。
私は初めて知ったのですが、みんなでニホンGO!は2010年にNHKで放送されていたバラエティー番組だそう。

常識が覆る日本語の新事実を発掘する日本語バラエティー番組。「全然OK!」や「うざい」などの違和感のある表現や「ことば」について、スタジオの100人が判定。VTRなどを見ながら、その変遷の歴史や違和感の背景などについて考えていく。

NHKアーカイブスより

そんな面白い番組を見逃したなんてことある…?と思いましたが、放送が22時からでした。当時小1なのでぐっすり寝ていた時間帯です。

調べてみたところ、今でもNHKアーカイブスにてダイジェスト動画を見ることができるようです。「全然+肯定」の議論がされていたのってもう14年も前なんですね…

辞書棚を堪能する

柏野先生にお礼をお伝えしてお別れしたあと、メンバー各々好きな辞書を閲覧する時間が始まりました。私も大学の図書館になかった辞書を閲覧することができ、複写までしてしまいました。楽しい。

今回特別に許可をいただき撮影したので、こちらではその写真をいくつか紹介させていただきます。

広辞苑棚!!!奥に日国もいる。

こちらは古語ゾーン。意外にもカラフルですね。

百科ゾーン。圧が強い。

三国棚。初期の頃と比べると、サイズが大きくなっているのがわかります。左上に見えるのは点字版です。(右下には私の推し辞書の『三省堂現代新国語辞典』も写っていますね。かわいいです。)

その日はちょうど図書室の入口に「ご自由にどうぞ」棚があり、一部のメンバーは気になる本を見つけ出し、ほくほくで図書室を後にしていました。私はジャポニカを持ち帰るかギリギリまで悩み、本棚のスペースの都合から泣く泣く断念。
まだ残っているかはわかりませんが、気になる方はぜひ国語研の図書室を訪ねてみてはいかがでしょうか。

見学を終えて

初めての国語研でしたが、本当に楽しい1日を過ごすことができました!
今後、調査や研究などで積極的に活用していきたいと思います。

国語研では、7月20日(土)に5年ぶりとなる対面での一般公開イベントニホンゴ探検2024が行われます。柏野先生によるワークショップ「辞書引きコーナー」に行けば、辞書引きの達人になれることは間違いありません。もちろん、この記事で紹介した資料室と図書室を見学するツアーもあります。

この記事を読んだみなさんは、そろそろ国語研に行きたくてうずうずしている頃でしょう。そんなみなさんのためにリンクも貼っておきます。
参加無料で申し込みも不要!!太っ腹すぎる。

余談ですが、途中荷物を置かせていただくために柏野先生の研究室に少しだけお邪魔しました。後から聞いたところ、広辞苑第7版の予約特典『広辞苑をつくるひと』※(岩波書店、2018年)のインタビューで、三浦しをんさんが座った席だったとのこと!もっと味わっておけば良かった…!!と後悔しました。

※非売品。柏野先生は第1章に登場されています。私は過去に地元の図書館で読んだので、地域の図書館でも取り扱いがあると思います。本当に面白い本なのでぜひ。


最後にはなりますが、この場を借りて案内してくださった柏野先生、そしてご協力いただいた職員のみなさまに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

それではまた、次の記事でお会いしましょう!

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