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【特別公開】一人暮らしの歳時記 7月

【注意】この記事は、自由炊事党機関誌「自炊のひろば」第3号に掲載されるはずだった(が諸々間に合わなくて発行中止になってしまった)記事を、特別に公開するものです。都合により予告なく公開範囲を変更しまたは公開を取りやめる場合がありますので、ご了承ください。

7月

枝豆

スーパーに枝豆が並ぶと、いよいよ夏の訪れを感じる。朝晩はまだ過ごしやすい気温でも、昼間になるとじっとしていても汗ばむ陽気になる。そんなときはビールと枝豆を決めたくなるのが日本人というもの。
東京に住んでいると、埼玉や千葉の新鮮な枝豆が手に入る。ときには枝付きで売られているほど。枝豆は生きているから、放っておくと呼吸して熱を帯びて、傷んでくる。早めに茹でるのが吉だが、茹でてしまうとすぐに色が落ちて味も悪くなる。
一袋食べきれないときによく作るのが、枝豆のブルーチーズ白和えだ。どこで学んだのかすっかり忘れてしまったが、爽やかな味わいはワインにも日本酒にも合うから我が家の夏の定番になっている。
枝豆1袋分は固めに茹でて、全てさやから外す。両手に房を持って、無心になって指を動かし続けて殻をむく。薄皮までむいた方が食感が良くなるが、あるときめんどくさがってやめてみたら大した違いはなかったから殻をむくだけにした。だいぶ手間は減ったが、それでも枝豆1袋分の殻むきは大変だ。
木綿豆腐1丁は水気を絞って、手で崩しながら枝豆の入ったボウルに入れる。ぐっと力を込めて、バラバラにならない程度に破れ目を入れると、不思議と水が出てくる。しっかり水気を切る必要はないので、これ以上潰したら豆腐が割れてしまう、というところで止めて良い。
ブルーチーズ大1〜2を豆腐の和え衣にあわせてのばし、枝豆とともによく混ぜる。塩気が足りなかったら塩を足し、オリーブオイルや黒胡椒を振って完成。
枝豆の土のような新鮮な香りが、ブルーチーズの熟成香と重なって良いハーモニーを奏でる。単体ではしょっぱくて食べづらいブルーチーズも、枝豆や豆腐と合わさると程よい塩気になって全体を引き立ててくれる。

枝豆

もう一つ、夏の食卓に欠かせないのはずんだ餅だが、最近は作れていない。宮城県のある地域で、地元のおじいちゃん・おばあちゃんたちと郷土料理を作るワークショップに参加したときに食べた「ずんだもづ(餅)」の味が忘れられない。新鮮な枝豆でなければ鮮やかな色が出ないし、食感も落ちる。一度、大量の枝豆をいただいたときに、冷凍しておいて後でずんだにしたら、とても同じ豆とは思えない色と味になってしまった。
最近は大量の枝豆を買うことも、家で餅を作ることもしなくなったから、ただ懐かしい気持ちだけが残されている。

ところ変わって、初夏の信州を彩るのが杏である。淡いオレンジ色をした実は、完熟するとほんのり赤みを帯びて、赤ちゃんの頬のようだ。熟しきった杏をどっさり買い込んで、コンポートにする。
よく洗ってから半分に割って種を取り、大量の砂糖にレモン汁1/2個分を加えて煮込む。信じられないくらい砂糖を入れても、酸味は消えない。紅茶のようなやわらかく上品な香りに次いで、頬の奥がキューッと締め付けられるような爽やかな酸味が押し寄せてくる。
ヨーグルトやパンに合わせても美味しいが、この時期に外せないのは杏のムース。水切りヨーグルトとホイップクリームをさっくりと混ぜる。杏のコンポートはブレンダーでペースト状にし、半量を残してボウルに加え、熱湯少々で溶かしたゼラチンとともに、泡が消えないように慎重に、しかし丁寧に混ぜる。
グラスに取り分けてラップをかけ、冷蔵庫で3時間以上冷やし固め、最後に残しておいた杏のペーストをかけてできあがり。
クリームも半分は水切りヨーグルトにしているから、全体的に酸味が強く、モコモコした食感で食後の口直しにぴったりのデザートになる。

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