記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

書籍紹介 見城徹『読書という荒野』

 見城徹さんの『読書という荒野』(幻冬舎、2018)は、読書を通じて自己を深く見つめ、現実社会での成功や自己成長に繋げていくための「武器」としての読書を説いた一冊です。著者は、数々の成功者から慕われる人物であり、その人生経験を背景に、多くの読書体験とそこから得た教訓を披露しています。単なる読書論を超え、人生のあり方を考えるための深い人生論でもあります。

1.読書とは「何が書かれているか」ではなく「自分がどう感じるか」
 
著者は、読書の本質を「何が書かれているか」ではなく、「自分がどう感じるか」に置いています。これは本書全体を貫くテーマであり、著者は読書の価値をその内容そのものではなく、読者がどのように感じ、解釈するかにあると強調しています。

 僕が考える読書とは、実生活では経験できない『別の世界』の経験をし、他者への想像力を磨くことだ。重要なのは、『何が書かれているか』ではなく、『自分がどう感じるか』なのである。

出所:本書(P15)

 著者は、読書によって感情や思考が揺さぶられることこそが成長につながると考えています。また、単にたくさん本を読むことや知識を集めることに意義があるわけではなく、そこから得た感情や考えが重要だと述べています。

たくさん読むことがいいことだという風潮にも異を唱えたい。情報の断片を積み重ねるより、そこから何を感じたかのほうが重要だ。

出所:本書(P14)

 このように、読書は単なる知識収集ではなく、心を揺さぶり、自己を深く見つめ直すための行為だというメッセージが本書全体を通して語られていきます。

2. 血肉化した言葉を獲得せよ
 
第1章では、著者が「血肉化した言葉」をいかに読書から獲得してきたかが語られます。著者は読書を通じて、自分自身を見つめ直し、自己否定を繰り返すことが成長の鍵だと述べています。この自己否定こそが「三種の神器」として人を成長させる重要なプロセスだとしています。

 僕の持論に、『自己検証、自己嫌悪、自己否定の三つがなければ、人間は進歩しない』というのがある。

出所:本書(P29)

 著者は、夏目漱石の『こゝろ』を読んだことで「自己否定」という概念を初めて実感し、その後の人生においても読書を通じて自分を見つめ直す習慣ができたと述べています。
 読書を通して自分自身に問いかけ、厳しく向き合うことで、言葉や考えを自分の「血肉」にするプロセスが大切だと感じさせる章です。

3. 現実を戦う「武器」を手に入れろ
 
第2章では、読書を通じて得た「武器」が現実社会を生き抜く力になることが語られています。若い頃、左翼思想に傾倒しながらも現実とのギャップに悩んだ経験を通じて、読書が理想と現実の狭間でいかに人を成長させるかが描かれています。
 また、著者は「圧倒的努力」の重要性も強調します。現実に向き合い、理想を持ちながらもその理想に負けずに戦い抜くためには、努力を積み重ねることが不可欠だと述べています。

努力は、圧倒的になって初めて意味がある。

出所:本書(P90)

 読書を通じて得た理想を、現実にどう適用し、どのように努力して自分の道を切り開くか。読書と行動が相互に支え合うという実践的な考えが本書で語られています。

4. 極端になれ!ミドルは何も生み出さない
 
第3章では「極端であることの重要性」が説かれています。著者は「中途半端(ミドル)では何も生み出せない」と断言し、極端な経験こそが人を成長させると主張します。極端な表現や生き方がリアリティを凌駕し、人の心に響く力を持つことを強調しています。
 この「極端であること」へのこだわりは、著者自身の編集者としてのキャリアにも反映されています。著者は石原慎太郎さんらの作家と徹底的に向き合い、極端なまでにその本質を引き出すことで、圧倒的な作品を生み出してきたと語っています。

5. 編集者という病い
 
第4章では、著者の編集者としての姿勢や「言葉」に対する強いこだわりが語られます。著者は「編集者という病い」として、常に新しい言葉や発見を求める姿勢が編集者の本質だとしています。
 また、「言葉とはその人の生き方だ」という表現からも言葉の持つ力を信じている姿が明示されています。さらに編集者として成功するためには、妥協を許さない「圧倒的努力」が必要だとも繰り返し強調されています。

6.旅に出て外部に晒され、恋に堕ちて他者を知る
 
第5章では、自己を深く見つめるための手段として「旅」と「恋愛」が取り上げられています。「旅の本質とは『自分の貨幣と言語が通用しない場所に行く』という点にある」(P172)とも述べているように、旅は、自分の知らない世界に飛び込むことで、自らを見つめ直し、自己検証を深める機会を与えてくれると著者は述べています。
 また、恋愛も他者との関係を築くことで、自己成長と他者理解を深める手段だとしています。恋愛においても、努力や他者への想像力が大切であることが語られています。

7. 血で血を洗う読書 荒野を突き進め
 
第6章では、読書が人生の荒野を突き進むための「武器」であることがさらに掘り下げられます。読書を通じて自己否定を繰り返し、最終的には自己肯定に至ることで、人は真に成長すると著者は強調しています。

認識者から実践者になることで真に成熟し、人生を生き始めることができる。

出所:本書(P220)

 この章では、読書が単なる知識の収集に留まらず、自己と向き合い、厳しい現実を生き抜くための武器であるというメッセージが強調されています。

8. 認識者から実践者へ
 
最終章では、「認識者から実践者へ」というテーマが集約されています。著者は、読書を通じて得た知識や洞察を行動に移すことで、現実社会を切り開く力が生まれると述べています。

 さて、ここまで読書について、そこから獲得する言葉について、そしてその言葉を駆使する思考について書いてきた。何度でも書くが、正確な言葉がなければ、深い思考はできない。深い思考がなければ、人生は動かない。
自己検証する。自己否定する。それを、繰り返し、繰り返し、自己嫌悪との葛藤の末に自分の言葉を獲得する。その言葉で、思考して、思考して、思考し切る。その格闘の末に、最後の最後、自己肯定して救いのない世界から立ち上がる。認識者から実践者になる。暗闇の中でジャンプする。 人生を切り開く。
 読書はそのための最も有効な武器だ。

出所:本書(P236)

9. さいごに
 
著者の言葉を通じて、読書は自己を見つめ直し、現実を生き抜くための「武器」であることが改めて強調されています。本書は、読書を通じて自分を成長させたいと考える方にとって、力強いエールとなる一冊です。自己の読書体験をどのように活かしていくかを考えることが、次の一歩を踏み出すための大切な行動となっていくのでしょう。



いいなと思ったら応援しよう!