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まるのつかない日は料理本デー

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料理本好きの、料理本による、料理本のための、料理本エッセイ
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記事一覧

昭和10年発行/温い冬の家庭料理

サクサク順調に料理本を紹介していった私のマガジン「まるのつかない日は料理本デー」が停滞してから、すでに3ヶ月近くが経過しております。申し訳ない。しかしこの度やっとその理由がわかったので、状況を説明しつつ、先へ進もうかと思います。お待たせしました。 私は文章を「読んでいる」のではなく「見ている」のだと思う。そして字面がパッと見えないことに、ひどく弱い。いい例が飲食店のメニューだ。特にテーブルにひとつしかメニューがなく、連れと向かい合わせで座っている場合、相手が先にメニューを見

そして、料理に恋をする

「#まるのつかない日は料理本デー」 今回ご紹介するのは「そして、料理に恋をする」です のほほんと暮らしていた私が初めて「世の中には自分の想像をはるかに超えた金持ちがいるようだ」と気づいたのは、高校の時だった。学校の近くに住む同級生の、家だと思った建物が単に「蔵のひとつ」であり、本当の母屋が塀の外からは見えない距離の奥の方に鎮座ましましているのを見たとき、私は大人の階段を上った。卒業後、帰省時に街で偶然出会った彼女は「東京でお世話になってる人へのお土産」と大きなアワビを3個も

子どもがはじめてであう料理本

先日ツイッターに突如「ポテサラ爺さん」が現れた。ある人は怒り、ある人は美味しいポテサラの店情報を放ち、またある人は我が家のポテサラレシピを語り、結果多くの人がポテサラのことを考えた1日となり、多くの人にその夜ポテトサラダを食べさせた。 うちもまんまとポテサラを食べたクチだ。そして食べながら考えた。私がはじめてポテトサラダを作ったのはいつだろう。どうやって作り方を知ったんだろう。家庭科の時間?いや違う。家庭科の調理実習で作ったのは、粉ふきいもだ。そしてその時私はすでに、家で粉

秘密のケーキづくり

「#まるのつかない日は料理本デー」 今回ご紹介するのは「秘密のケーキづくり」です うちの高校は旧制中学校から始まったそこそこ歴史のある学校であり、開校当時はもちろん男子校。同級生のお母さんが「初めて入学してきた女子2人のうちの1人」で、のちに母校の教師となり、授業中に「その制服は私たちが考案したのよ」とおっしゃっていた。今は女子の方が多いらしいが、私が通っていた当時は1クラス45人中・女子は10人前後のマイノリティだったため、女子みんなでまとまっていた印象がある。 お弁当

NON-NOクッキングブック

「#まるのつかない日は料理本デー」 今回ご紹介するのは「NON-NOクッキングブック」です 記憶にある最初の家族旅行は、5歳頃だろうか。私はやっと1人で身支度できるくらいの大きさで、妹は幼児、弟は赤子に毛の生えたような生き物だった。千葉の家から真っ赤な自家用車に乗り込み、目指すは箱根の山。うちの非力な車が箱根の坂を登るのにキュルキュルと悲鳴をあげていたことは、その後も幾度となく晩ごはんのテーブルで持ち出され、親の楽しい思い出として語られた。ただ私はあまりに小さかったため、箱

ドカンと、うまいつまみ

「#まるのつかない日は料理本デー」 今回ご紹介するのは「ドカンと、うまいつまみ」です 誰しも、どんなジャンルでも、何かを自分のものにしようともがいている時におちいりやすい地獄がある。それは「考えすぎ地獄」だ。 知識をインプットし、実践し、クリエイティブの幅を広げていく。なんだ、私もできるようになったじゃんと自信がつく。もっと、もっと、知識を得たい。こんな方法があるのか→試す。あんな展開の仕方があるのか→やってみる。そこそこいろんなことができるようになる。楽しい...楽しい

ごちそうさまが、ききたくて

「#まるのつかない日は料理本デー」 今回ご紹介するのは「ごちそうさまが、ききたくて」です 透けるような白い肌、赤い唇に大きな目、愁いを帯びたアルトの声、地元では有名な進学校の出身で、スポーツは万能、実家はワケあり。それがMちゃんのステータスだ。「なんてキレイな子だ」私はひとめで魅せられた。 彼女は「私の彼氏がやってるバンドのメンバーが、また別にやってるバンドのベースRくんの彼女」である。私とRとは「大勢集まる飲み会で、5回くらい一緒に飲んだことがある」程度。つまり友達とい