これからの日本型新卒採用の新しい可能性(大企業編)
従業員規模数千名以上の大企業グループは、新卒採用をグループ採用にすべきだ。グループHDもしくは人材専門子会社にて新卒を採用、グループ共通の理念や基本的なビジネスマナー、PCスキル等を教え込んで各事業会社に派遣もしくは出向する。
かなりの大企業でも、グループ間での求人ニーズ確認をネットワーク化して統制しているところは少ない。これはHDカンパニーが率先して主導する必要がある。そうでなければ、事業会社各社は個別最適化を図ろうとし、かえってコスト増を招く。人的資源の総合的管理を行えるのは、HDカンパニーしかない。
様々な細かい実務(社会保険関連、給与関連実務)等があるので、実際には人材専門子会社を設立し、そこに実務の運用を任せるのが妥当だろう。形式は「紹介予定派遣」or「転籍予定出向」にして、配属先でOKが出ればそのまま事業会社で採用される。ダメならば人材専門子会社に戻り、他の職場を探す。そしてグループ内を複数巡回し、一番自分に合うところに定着してもらう。
当然、数年経過したのちにやっぱり違う、という話も出てくると思われる。その際、ルールを決めておき、U35でかつ事業会社における勤務態度が一定レベル以上あれば、人材専門子会社に在籍を変えてグループ内求人に応募する事が出来る。出来れば現職中に相談してもらって探してほしいが、もしもう耐えられない、退職するとなった場合は人材専門子会社で雇用し、その間、繋ぎとしてちゃんと会社から給料が出て研修も受けられるようにする。当面、グループ内派遣スタッフとして食つなぐ事もありだろう。要は仮に給与が満額出なくても補償的なもので生活が出来るようにするという趣旨だ。若者の生活を支えながら成長や適性配属を後押し出来る。
グループ内求人全てのところに応募して働くも定着しない、務まらない、うまくいかない場合は辞めたら良いし、会社から退職勧奨しても良い。しかし、数万人規模の大企業グループで子会社を含めて全部ダメという事は実際には少ないのではないか。それまでの間に自分の職業適性等もコーチングしてもらえたり、サポートしてもらえたらかなり成長できる。グループ企業共通のアセスメントを全社的に導入し、データを取ってAI分析すれば、完全な的外れにはならない可能性が高い。グループ各社は個別にニーズに基づいて自社独自のアセスメントを導入してよいが、グループ共通のアセスメントもやらなければならず、その情報を定期的に人材専門子会社が収集して分析していれば、共通の物差しを持つことが出来るだろう。
勘違いしてはいけないのは、ここで扱う人達は普通のレベル感の人だ。いわゆる優秀層ではない。いまなお、新卒採用=幹部候補生=優秀層を採用するべき、という幻想がある。これは今の時代には当てはまらない。優秀な人はすぐに自分の適性を見つけ、自ら状況を創り出す。彼らをどうにかする必要はない。仮に優秀層を平等に処遇したとしても、彼ら彼女らはすぐに派遣先事業会社が決まるか、目立った活躍をして事業会社内の別部署から声をかけられて引き抜かれるか、自分で転職先を見つけるか、となるので放置で良い。彼らを制御することは出来ない。大企業が制御出来るとしたら、まじめに一生懸命、普通に働く人としての労働力の確保だ。実際、企業活動における大部分は、普通に働く人たちによって支えられている。ブレーンとなる優秀層は少数精鋭で良いのだ。