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読書記録|磯田道史 『日本人の叡智』
読了日:2025年1月26日
歴史上、著名な人物の言葉というのは、現代でも名言や教訓として見聞きすることがよくある。『日本人の叡智』では、歴史上の著名な人物ではなく、むしろ、著名な人物を支えてきた者であったり、時代の転換期の舞台裏で動いていた者の言葉や生き様を紹介している。中には知ってる名前もあったが、そんな98人を、それぞれ見開き2ページずつ簡潔に紹介しており、何かの合間に読むにはうってつけの構成だ。一番感心したのは、筆者の古文書に対する研究熱心さというか、熱量である。この本一冊分の内容を書き記すのに、如何程の古文書を、如何程の時間をかけ読み解いたのか、とつい想像してしまう。
私たちが日常を送る中で、尊敬を抱くような相手に時々出会うことがあるが、そんな人物の言葉や行動原理も、本当は後世に遺す価値があるのかもしれない。しかし著名ではないがために、そのまま埋もれてゆくのが常なのだと思う。そう言ったものを寄せ集めたのが『日本人の叡智』で、時を超えてここで初めて公になった。昔の人もこんな風に考えていたのだな、こういう信念で生きていたのだな、と思わされると同時に、自分も何か価値のあること、人のためになるものを後世に遺せるような人にならねば……と淡い夢を描いた。