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採用から定着まで!人事が知っておくべきコミュニティ導入のメリットと成功法則

こんにちは! かけだしコミュニティアシスタントの若林です。

今回は、JINEN株式会社のコミュニティディレクターである藤田にインタビューし、人事の観点から、企業がコミュニティを導入することで得られるメリットについて掘り下げていきます。

「コミュニティを活用した成功事例を耳にしたけれど、なかなか一歩を踏み出せない」「具体的にどんなことに気を付けるべきか分からない」といった悩みを抱える人事担当者や経営者の方々は、ぜひ最後までお読みください!


自社とマッチした優秀な学生を採用するには?

若林:今回は、企業にコミュニティを導入するメリットについて、人事の観点から深掘りしていきます。まず、新卒採用についてお伺いしたいのですが、新卒採用において、なぜコミュニティを導入することが有効なのでしょうか?

藤田:そうですね。とくに優秀なZ世代に焦点を当てると、最近は「みんなで稼いでタワーマンションに住もう」といった風潮よりも、「1つの目標や目的に向かって頑張る」というプロセス自体を重視する学生が増えています。この背景には、コロナ禍を経験したことで「繋がりの価値」に敏感になったことが大きいと思います。

もちろん、目先のお金や職が必要な人が貪欲になるケースもありますが、それ以上に「良い人間関係」や「良い繋がり」を求める学生が増えているのが現状です。そのため、コミュニティに対して感度が高い学生が多いのです。

さらに、企業がコミュニティを運営していること自体が、企業イメージの向上に繋がります。優秀な学生から見ると、コミュニティを持つ企業はそれだけで信頼できるブランドとして映るのです。

最近では、ある有名な就職活動サイトがコミュニティを立ち上げて成功したという事例もあります。そのため、コミュニティを持つこと自体が学生からの人気を集める要因になるという認識が広まっており、それに伴い、採用に関するコミュニティが乱立している状況です。

若林:ありがとうございます! コミュニティがあるだけで学生からの評価が高まるというのは驚きです。

現在、採用に関するコミュニティが乱立しているとのことですが、その中でもとくに学生から評価が高いコミュニティや、自社にマッチした学生を採用できるコミュニティをつくる方法があれば、ぜひお聞きしたいです。

藤田:コミュニティは、一種のコンテンツとも言えますよね。そのため、基本的なことですが、ペルソナを明確に設定し、そのペルソナに対してどんな繋がりを提供するのかを言語化できているコミュニティは、一歩抜きん出ていると感じます。

たとえば、学生エンジニアを採用するためのコミュニティを立ち上げる場合でも、「学生エンジニアにどんな繋がりを提供するのか」が重要です。それが、成長を目指す仲間を見つけられるコミュニティなのか、自分自身の成長にフォーカスした場なのか、あるいは優秀なエンジニアが集まり好きな技術を共有する場なのかによって、大きく異なります。

つまり、「誰の、どんな課題を、どんな繋がりで解決するのか」を明確に言語化できているコミュニティが、独自のポジションを築けるのだと思います。

若林:以前お話しされていたように、初期設計をしっかり行うことが重要ということですね。

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コミュニティ運営の鍵を握る「初期設計」のポイント

若林:「誰の、どんな課題を、どんな繋がりで解決するのか」を明示することが大事というお話がありましたが、それを学生にしっかり伝えられたとしても、実際に目の前の学生が自社の求めている人物像と合っているかどうかを見極めるのは難しいと思います。とても重要なポイントだと思うのですが、どのような工夫が必要ですか?

藤田:そうですね、そもそも、人の考え方や価値観は環境や状況の変化に伴って変わるものだと理解することが大切です。たとえば、入社したばかりのころは「成長したい」という思いが強かったとします。しかし、ある時期に家庭を持つことを考え始めるなど、仕事に対する考え方が変わるような出来事があれば、自然と価値観も変わりますよね。その結果、「ワークライフバランスを大切にしたい」と思うようになるかもしれません。

採用の際も、そういった「変化」に気づくことが非常に重要です。ただし、価値観がどう変わったのかを本人が明確に認識できていない場合もありますよね。そこで、私たちの診断テストが役立つんです。このテストでは共通の質問を通じて、「成長志向が強い」「伝統を重視している」「結束を大切にしている」といった現在の傾向を把握できるようになっています。

藤田:要するに、「全てを理解しよう」と無理をする必要はありません。人は所属するコミュニティや環境によって自然と変わるものですから、その変化を捉える仕組みを作ることが重要なんです。

若林:ありがとうございます! 採用期間中でも、インターンや本選考など、さまざまな変化のタイミングがあるはずなので、節目ごとにテストを用いて診断するなど、人事の人力だけに頼らない対応が大事ということですね。

コミュニティから中途採用に繋げる!?

若林:これまで学生の新卒採用という文脈でお話を伺ってきましたが、経験のある社会人を中途で採用する場合、気を付けるべきことや、新卒採用と異なる点はありますか?

藤田:中途採用したい人材のレイヤーによりますが、たとえば年収1,000万円クラスのプロフェッショナルを採用したい場合には、「ほかにはない圧倒的に面白いプロジェクトがある」「ここでしか実現できない理念がある」といった独自性を明確に打ち出す必要があります。

これは、いわゆる『マズローの5段階欲求』のうち、「自己実現欲求」や「自己超越欲求」に訴えるアプローチです。「自分はこういう事業を成し遂げたい」「自身のスキルを活かして社会に貢献したい」と考える人ほど、年収が高い傾向にあると言われています。

また、新卒採用とは異なり、中途採用には別の戦略が求められます。新卒採用では、“魅力的なビジョン”だけで惹きつけられる場合もありますが、プロフェッショナル層にはそれに加えて“具体的なマイルストーン”を明確に示すことが重要です。つまり、ビジョンが現実的で、具体的な計画に裏打ちされているかどうかが鍵になります。

若林:採用活動におけるコミュニティ作りについては、どのようなコミュニティを構築する必要がありますか?

藤田:アプローチとしてはいくつかありますが、大きく分けて2つのタイプがあります。

1つ目は「革新型コミュニティ」です。これは、圧倒的な技術や世界を変革するような革新的な技術が既に存在しており、それをさらに良くしていくことを目的とするコミュニティです。

たとえば、オープンソースコミュニティが挙げられます。こうしたコミュニティでは優秀な技術者たちが、社会や技術の発展のために無償で参加し、新しい機能を次々と開発しています。Linux*などの技術はこうした取り組みから生まれました。一部の技術を公開し、より良いものを作るために多くの人が協力する仕組みです。これが「革新型コミュニティ」の特徴です。

もう1つは「伝統型コミュニティ」と呼ばれるものです。こちらは、歴史や伝統を守り続けることを目的としています。

例として京都が挙げられます。京都では、トップクリエイターたちが移住し、京都の伝統を継承するためにコミュニティに参加しています。革新型コミュニティとは異なり、新しいものを作るのではなく、良いものを守り続けることが目的です。

このように、企業が主体的に社内外の人々が参加できるコミュニティを運営することで、境界を越えた横断的なコミュニティを形成し、採用活動にも繋げることが大切です。

社内サークルには思わぬ落とし穴も!? 社員に長く働いてもらうには

若林:最後に、採用した後の段階についてお聞きできればと思います。社員に長く働いてもらうために、どのようなコミュニティを作るべきか、また目指すべき社内の状態について教えていただけますか?

藤田:まず、離職そのものに対して、必ずしも否定的ではありません。たとえ誰かが退職するとしても、その後も関係を保ち続けられる仕組みを作ることが重要だと考えています。

たとえば、最近注目されているアルムナイコミュニティ*のような仕組みを活用し、退職がネガティブなものとならない環境を整えることが大切です。また、再入社を可能にする制度を設けるなど、仕組みを整備することで、退職後も関係性を維持し、会社にも本人にも有益な繋がりを残せるようにすることができます。

さらに、社員に長く正社員として働いてもらうためには、業務だけでなく、社員のライフワークを会社内で実現できる仕組みを設けることも重要です。たとえば、私が以前勤めていた上場企業では「社内報プロジェクト」という取り組みがありました。このプロジェクトは、社員が共同で社内報を作るもので、会社への帰属意識というよりも、同期や仲間との絆を深めることを目的としていました。

こうした取り組みがあると、仮に辛いことがあって辞めたいと思ったときでも、「同期がまだ頑張っているから自分も頑張ろう」といった前向きな気持ちが生まれることがあります。このような文化を縦横斜めに広げ、強化していくことが重要だと考えています。

つまり、「会社内にコミュニティを内包する」という考え方が鍵です。会社はあくまで利益を上げる組織として運営されるべきですが、それだけでは補えない部分を、コミュニティの力で支えるという発想が求められます。

若林:よく会社内に、部活やサークルのようなものがあったりすると思うのですが、それらも効果的ですか?

藤田:考え方としては近いですね。ただし、サークル活動の目的が「会社が嫌だからほかの活動に没頭する」というものではなく、「サークルを通じて会社での仕事も頑張ろうと思えるようにする」ことが重要です。この違いが、「結束型コミュニティ」と「逃避型コミュニティ」の差です。

サークルを通じて共通の目標に向かい努力し、結束を生むコミュニティであれば非常に良いかたちだと思います。しかし、サークル活動が愚痴の場になるようなコミュニティでは、逆に意味がなくなります。

若林:たしかにおっしゃる通りですね。それを会社側がコントロールすることは可能なのでしょうか……?

藤田:社員の行動による影響も大きいため、完全にコントロールするのは難しいです。ただし、仕組みの設計自体は可能です。

たとえば、どのような活動をするのかを明確化する、透明性を確保する、上司が監視役として関与するなど、いくつかの方法があります。

とはいえ、サークルや部活を急に立ち上げるのはリスクが伴います。一度作ったサークルは解散させるのが難しく、とくに「逃避型コミュニティ」は参加のハードルが低いため、誰でも入りやすいことがかえって問題になる場合があります。その結果、会社にとって望ましくない行動をとるような強固なコミュニティが形成される可能性もあります。

適切な設計をせずにコミュニティを形成するのは非常に危険だということですね。


*Linux・・・オープンソースのオペレーティングシステム。
(参考)https://www.redhat.com/ja/topics/linux

*アルムナイコミュニティ・・・元社員も含めた社員や関係者間の繋がりを築き、維持するためのコミュニティ。
(参考)https://service.customedia.co.jp/marketing/alumni-community/#i


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