見出し画像

読書猿『独学大全』~待ち焦がれた傑作、それでも、足らないもの

3年、待っていた。自身、独学者を志し今年はじめに会社を辞めるとき、少なからず不安はあった。でも、どこか「その頃には『独学大全』も出るしな」と思って気持ちを落ち着けていたところがあった。

それぐらい、自分にとって信頼の置ける論者の一人である。ブログもそれなりに読んでいるし、本が出ればすべて買う。いちファンであり、それゆえに、本書をフラットな目線でレビューすることは難しい。

一方で、本書を最も我が身に引き付けて読む必要がある切羽詰まった読者・実践者として、おそらく殆どなされないであろう批判的な読みを残しておくことに、一編の価値があろうと思う。

で、肝心の中身である。

本書は、ずいぶんに難しい本である。内容が難しいとか、読解にものすごいパワーを要するとかではない。ものすごく長い(紙版で800pある)けど、必要な長さだと感じるし、事典として折に触れて読み返すべく編まれた本としても、まっとうに必要な分量であるように見える。

ただ本書は、「独学とはなにか」という問いと「大全とはなにか」という問いの間で揺らぎ、移ろい、そして自分にとっては最終的に、確たる像を結ばなかった。

卓越した一冊~比類なき収集力とアレンジ力

まず、「すごい!」と10回叫ぶ。圧倒され、感嘆するに予断を許さない本である。

著者は、独学者が踏み進んでいくべきプロセスを「発心(志を立てる、目標を立てる、etc..)」→「資料収集」→「読解」→「記憶」→「理解」に分ける。その各々を適切に駆動していくための技法を全55個収録しているのが本書である。ここにおいて、”何を”独学するかというテーマごとの広がりはほぼ意識されず、あくまで汎用性にこだわった技法の選定が宣言されている。

して、大全というフレーズとは裏腹に、ここで紹介される技法がピンポイントで良いところを突いてくる。例えば、「発心」の中で独学者に不可欠なモチベーションの保ち方に触れられるが、その核として紹介される技法4「1/100プランニング」、技法5「2ミニッツスターター」の2つは、意志力の取り扱いに関するエッセンスがこれ以上ないぐらい端的に集約されたものである。モチベーションについての技法は世に星の数ほどあるし、意志力について専門に論じる本だけでも山の如く積み上がるが、ものすごく簡潔にいえば「ゴールを明確にイメージする」「ハードルを下げる(スモールステップ)」「まず始める事で事後的にやる気を出す」あたりがすべてであって、これさえ知っておけば困ることはない。本書はそこをどストレートに2個でまとめにいく。

ここを皮切りに、どのプロセスにおいても真に再現性高く有効な手段として「幾つか選ぶならこれ」というものが確実に選び取られていると感じるし、興味があれば示されている参考文献に飛んで自らその先を深めていけるようになっているのも嬉しい。本書もまた、レファレンスワーク―主に図書館カウンターにおける利用者への資料収集援助―をその基礎としており、著者の独りよがりの独学成功モデルの提示でなく、古今東西の学習理論を網羅しながらベストプラクティスを提示するという仕事がベースになっている点で信がおける。こうした著者の”選球眼”(と、背後に透けて見える選ばなかったものの膨大な山々)は前2著『アイデア大全』『問題解決大全』ですでに証明されているものだろう。

それでいて、本書の、というより著者の凄みはそれだけに留まってはいない。既存の技法をキュレーションする仕事だけでなく、著者によるアレンジや、既存技法を踏まえて著者が開発したオリジナルな技法も多く、つまりここでしか出会えない有効なものが多い

全体のなかでも特に、「資料収集」とそれに伴う整理の部分は出色の出来である。

参考文献まとめとしての「書誌」(技法24)は恥ずかしながら本書を読むまで存在を知らなかったし、図書館の図書分類をハックして目当てのものを探し出す調査法なども、馴染みが薄い読者が大半であろう。本書を読むと、図書館を”知の宝庫”として十全に使い倒せる自信とワクワク感が自然に湧いてくる。自分も本書を読み始めてからすぐに図書館に足を運んだ。

資料の整理について、技法28「目次マトリクス」29「引用マトリクス」30「要素マトリクス」は必読であり、この3つに取り組むだけで学びの次元が一挙に数段階か変わるのではないだろうか。シンプルなルールに基づいて資料を整理していくだけで、資料間・要素間の結び付きが通覧でき、読者のうちに知識の構造が徐々に育ってゆく手法はとてもリーズナブルである。また個人的には、要素マトリクスの作成過程で、資料に紐付く様々な従属変数を用いて資料群の全体連関を可視化する手法は目からウロコだった。これにより、理解の”外部足場”を組むだけでなく、質的調査→量的調査への変換過程を通じて、資料を取り巻く外在的な環境そのものを分析対象とすることができる。整理という枠を超え、分析結果自体が学習者個々人のみに到達できる唯一の知になりうる。こうしたアウトカムこそ、独学者を支える手すりになる。こういうジャンルをこのレベルでこれだけ凝縮して教えてくれる類書は殆どないだろう。それはもうめちゃくちゃに有益である(語彙力)。

読書法のパートは、そもそも世間に書籍や情報が溢れていることもあり、類書に詳しい読者なら目新しくない項目も多かろうが、ただページをめくる「転読」、ページをパラパラめくりながら目当てのものに当たりを付ける「捜読」を技法としてちゃんと立てているのはニクい。


もう1つ付言しておかなければならない。本書は、本という形式から、そのさらに外部に拡張している。文中に出てくる技法や概念などの気になったキーワードをネットで検索すると、わりと高確率で著者のブログ記事がヒットする。それらも併せて読み込むことで、より詳細な情報を追い、本書を何倍も有効活用することができる

例えば、技法25「教科書」中に出てくる「講座もの」という単語をGoogle検索すると、最上位に著者のブログ記事が出てくる(2020/10/02現在。素直にブログ内検索で良いのだけれど笑)。

記事中には、本書には載っていない情報も含めて丁寧な言及があり、関連ページを辿っていくと更に多く網羅性の高い情報が手に入る。紙面の都合で割愛されたであろう諸々に比較的簡単にアクセスできるこの体験は、中々に面白いしソソるものだ。実はブログが本体で、本書はリファレンスブックとしての『読書猿大全』(?)、という二重構造を成している。


独学初心者に対しては、ボリュームの多さに怯んでいるなら、気にする必要はない。概ね平易に噛み砕かれた文章が並ぶため読み進むに苦はなく、また全てを読まずとも存分に価値を発揮する類の本でもある。先の資料整理の項のたった3技法だけでも、幾冊にも値する。3,000円という値段で悩んでいるなら、迷わず買うべし。この情報の質・量にしてこの値段は、価格破壊といってよい。

また本書の中で取り上げられる幾多の技法は、”調べ物”のプロである知的生産従事者、研究者にとっても十分に有用である。独学の凡人に向けて書かれたと冒頭に銘打たれているが、「誰に読まれても良いように」とも記されており、本書の言葉を取るならさしずめ”公共図書館”のようなものと企図されてある。人文学界隈では事情が異なるかもしれないが、少なくとも(自分が幾ばくか知っている)自然科学研究の現場では通り一遍の論文の書き方を超えて本書にある技法を教わることは多くない。収集整理・読解・記憶など、しかし研究活動に必ず必要な知的能力増進のツールを一元的に拾える価値は高く、そうしたものが取り組まれ改善さるべき対象であると”主題化”されることだけでも、十分に価値がある。

それでも足りないもの~大全と体系の間で

さて、「独学」とはどういった行為だろうか。

その収める射程は広く、視野は手元の困りごとから、はるか遠く夜空にきらめく星々の運行原理にまで及ぶ。5分で終わる調べ物から、生涯をかけた探求へ、そして学知を切り拓く活動は個人の生涯を軽々と飛び越えてて連なってゆく。多くの読者の無際限の興味関心のもと、テーマは万象に渡る。また独学が達成できている状態にも、いくつもの異なる様相がありうる。それぞれの目指すところをざっくり類型化するにしても、「正解となる情報を単に探し当て正確に写し取れていること」「情報を身体に刻み、技能として反復運用できていること」「新規性のある知的生産ができていること」等々、さまざまな深さがある。その一つ一つに応じて、多様な読者のニーズがありうる。

もとよりそうした読者ごとの期待値の違いがあり、技法ごとの要不要のグラデーションが強く存在するという前提に立ち、本書は「大全」という形式を取ったのだろう。オープンアクセス/ランダムアクセスに耐えうる汎用性を持っているがゆえ門戸を広く開くことができ、どのようなフェーズの独学者をも迎え入れることができる。しかしそうした形式は他方において、本書がもっとも多く想定しなければならない”独学初学者”に対する牽引性の弱さにつながっている。それは体系性の欠如という点を伴って現れ、右も左もわからずに独学の荒野に飛び出す初学者にとって、いくつかの点において十分なガイドとなっていない部分があると感じられた。

「大全」という形式は”ノウハウ”にとって罪なところがある。体系性の欠如、すなわち要素ごとの境界、関係、機序、トレードオフが判然とせず、一つの全体と分割された部分によるマニュアル的手続きに還元できない曖昧さは、特定の読者にとっては明確な弱点でありうる。容易にシーケンシャルに実行できないという事実は、歩き始めた独学者のむしろ躓きの石にすらなる。

著者が既に「大全」として扱ったアイディア発想や問題解決とは異なる構造が、独学にはあるのではないか。”アイディアが出ている状態”や”問題が解決されている状態”としてゴールが予め定まっているものと違い、無際限なゆえの独学の”無方向性”があり、学ぶことのオープンエンド性がある。また、独学という営為は、そのプロセスの端々にアイディア発想や問題解決そのものを含むゆえ、それらよりも必然的に遥かに時空間的に広大であるだろう。この広大さへの対処が、本書のうちには埋め込まれていないと感じる。

乗り越えられるべき問題圏それ自体が”現前”しているという点で共通していたアイディア発想と問題解決であれば、ハマる手法をカタログから選び一個ずつ試していくという手法が、それ自体ある種アクチュアルな体系たりえた。しかし独学という1個のプロジェクトの無方向性と終わりのなさに相対するとき、個々の55技法を全体として統御する視点やメタな技法を、本書のうちにはあまり読み取りにくい。それぞれの技法を順繰りに発動していくのでは上手くいかず、いつどれをどういう基準で選び取るかはほとんど示されていない。

技法のリストで事足れりとするを許さない体系の要請が独学にはあり、本書にはそうした要素や、詰まるところそれ自体が最大の技法であるような「55の技法群をうまく押し引きする法」が欠けているように感じる。特に多く想定されている読者と思しき”独学初学者”に対しては、そうした体系が示される必要がある。

例えるなら、本書で示されるのは、ある目的地への航海における色んな状況下での漕ぎ方である。浅瀬ではどう漕ぐか、荒波ではどう漕ぐか、岩礁に乗り上げたときにはどう脱出するか。本書で示されないのは、目的地にたどり着くための海図であり、各状況の変わり目をどう見極めるかであり、またどの漕ぎ方にどれだけどういう漕ぎ手を割り当てればよいのかといった”統御の法”である。記憶術の章の冒頭で「記憶の術(アート)よりもマネジメントを重視する」と記す著書の言葉を借りれば、何にも増して独学には「スケジュールも含めた中長期のマネジメントが必要かつ重要」となる(p.564)。その点で本書は、種々の技法が統合された一個の”航海術”たるには少し足りないのである。

本書の技法の各々は、それ自体無限に突き詰めることができるものが多く、どこまで、どの程度それらを出したり引いたりしながら運用していくかがキモとなってくるだろう。

技法単位で見ると、第7章「知りたいことを発見する」、第11章「情報を吟味する」の各技法はどの程度、どのタイミングで実施するか判然とせず、第8章「資料を探し出す」の各々は原理的に無限に続けうるため各読者にどこでこれを打ち切るかの判断を委ねるのはなかなかに厳しい。また各々が併記されている13の読書術をそれぞれどう使い分けるかも不明瞭で、親切な読書法の類書にはあるような切り替え基準等への言及はない。記憶術も然り、である。

これらのそれぞれをつぶさに書いていくべきというよりも、全体像と技法間の流れがもうちょっと豊富に明示されていないと、初学者にとってはそれらすべての扱いが難しく映る。自身で要不要を判断し、自身の独学フローにちょっとずつ摘んで組み入れていけるのは、それなりに熟達した独学者だろう。

具体的に、必要だったと思われる要素は2つ。1つには、読者毎の状況に応じて伸縮可能な「独学全体のロードマップ策定法」。2つには、各章単位での技法間の位置付けや使い分けの仕方。

1つ目について、技法2「可能の階梯」、技法3「学習ロードマップ」が収録されている中では近しいものである。双方とも、目標や学習テーマの仮置きからはじめ、進めるなかで適切なルートに漸近していくというものであるが、要素の切り出し方もそれなりの技術を要し、どの程度の粒度でどの程度丁寧に運用するかの説明や例示や、後工程の技法からのフィードバック関係などもあると助かった。また、学習計画については実績のログ収集だけでなく、各技法におけるリソースの差配の仕方など、後に崩していく前提ではあれウォーターフォール的に事前計画を定量感を持って固めていく手法もあると良かったと思う。

2つめは、資料収集パートなどではすでに明示されているフローが、本書のそこかしこに配備されている状況までが、求められていたと考える。

全体的に、読者のいわば"高いアジャイル性"を前提とした書き方は、本書の想定読者、ないし本書が実際に読まれる現場には、そぐわないことが多いのではないだろうか。


ひとつのベンチマークとして、本書の成立過程で著者が影響を受けていると公言している『知的トレーニングの技術』(花村太郎)においては、そうした体系がかなり判明に示されている。

志を立てる、が序章に来るあたりからも、『独学大全』の章立て自体にこの本からの影響が見て取れる。『知的~』が中~上級者向けだとすれば、本書はそのカジュアル版であると言って大きな間違いはないだろう。

花村は本書において、知的成果物の生産過程(主に1つの研究テーマにおける着想→論文作成)を6段階12ステップの「知的生産のモデル」として示している。全体的にカオスな局面が多い本ではあるが、このモデルが中心に据えられていることで、全体の見通しがかなり晴れていて、各要素の連関がクリアに浮かび上がっている。ごくごく僅かな違いかもしれないのだけど、「この2つ目のサイクルは3-4回ぐらいやったら次に行ってよくて」みたいなちょっとした記述の数々が、読者を大いに助ける。ざっくりとしたゆる~い制約にすぎないのだけど、それでも初学者には確固たる道標となる。花村においても、学習者それぞれの事情に応じた個別性を鑑みると、確固たる体系を言い切るリスクは普通に大きい。ただ、それを言い切るがゆえ、読者は多少粗くはあっても不安に耐えるための何物にも代えがたい海図を手に入れている。「精度の低いマップでもないよりはマシ」とは、『問題解決大全』の技法36「ピレネーの地図」の骨法でもあった。

”学ぶ”というプロジェクトを前にすすめることと、その各構成要素を「終える」こととは、表裏一体である。本書の各技法は基本的に、どう「終えるか」という点に対する言及に欠けているがゆえ、独学者の限られた時間、金銭、体力、認知資源をどの程度どこに振り向けるかが、判断が難しい。そこをある程度指示していくことにまで、本書で踏み込んでいて欲しかった。

上記のことどものゆえ、本書はどちらかというと「調べ物大全」というタイトルの方がよりふさわしいかもしれない。独学という広大な射程を扱っているようでいて、実は”調べ物”という行為についての技法集である。その分、その範囲における深さと緻密さはすごい。


より欲をかけば、もう1点気になるところはある。ことが「考える」というという段に及ぶと、本書はわりと歯切れが悪い。独学のどのプロセスにおいても、発想や問題解決的な思考の働きは求められる。クリエイティブな問いを立てること、問題の因果関係を噛み砕き、要素/概念を様々な角度で構造化していくこと。質の高い学びに、これらは不可欠である。

極めて精力的な前2著『アイデア大全』『問題解決大全』で、そうしたことがある程度書かれ切ってしまっている事態が、そのまま本書のウィークポイントになっている側面はある。この2冊との重複を避けるがゆえ、独学に関する「大全」であるにも関わらず、あえて書かれない領域があるのではないか。であればむしろ逆に、割り切ってそちらに役割をもっと多く預けてもよかったとも感じる。前2著の各技法を適宜引用・参照しながら必要な論を補っていく書かれ方もあっただろう。しかし本書においては、不気味なほどに前著で登場する技法との照応関係は語られない。本書だけ出版社が別ゆえ、色々と不都合があったのだろうが、この欠損も「独学」という行為全体の輪郭と「大全」という性格とを、本書においては歪め曖昧にしてしまっているように思う。


これらはすべて、ある程度の部分、実際の読者層や本書に向けられた読者の期待値の重心の如何に関わっている。「これは自分の為に書かれた本だ」と、どの程度多くの人が思えたかは重要だ。しかしそれゆえに少なくとも、本書が視界に収める独学の範囲はどこまでか、本書が思う「独学とはなにか」は、それが「大全」と称される以上は、まず一番の初学者に向けて示されるべきではなかったか。

終わりに

本書は、その全編を通じて、独学者の孤独と不安へ徹底的に寄り添う目線が通貫している。こうした点が本書を類書―厳密な意味で本書と類似した書物は無いように思えるが―と比べて渾身の作にしていると感じる。巻末には素晴らしい索引と、困りごとに応じて技法を引けるハートフルな索引もある。また、知と触れ合うことそのものの愉しさや、その刺激の豊穣さへと読者をいざなう書物である点も、前2著同様に優れたポイントであった。

もう一つ。本書における個人的クライマックスとして、技法49「プレマップ&ポストマップ」の文中に配された「知識は元よりつながっている」との小節がある(p.594)。自身の知識のネットワークの中に新たな知識が取り込まれることは、単なる積み増しでも空き棚への補充でもなく、その系全体が不可逆的に影響を受けながら、自分自身が変化していく。ここに、「何かを学ぶ」という知的営為の根源に触れるものが示されている。これは本書内の技法の使用例として幾度となく登場したクーン『科学革命の構造』の主題でもある。本書は迷える独学者を照らす光であるだけでなく、独学という行為を媒介として、自分自身を不断に変えてゆき、当初は想像すらできなかった地点まで運んでくれる一冊になるだろう。

ただ惜しむらくは、自分のような浅学非才な独学者が不安をまといながら知の大海原へ漕ぎ出すとき、ありのままの不確実性に対処できる技法の列挙よりも、多少荒くとも明確な像を結んだ海図をこそ、必要としていたとも思うのだ。独学という一大プロジェクトの大雑把な見取り図を、だから読者はおのおの別で探すことになろう。本書を足場として、本書の技法を駆使しながら、まずは学びたいテーマについてのそうした”最初の1冊”を見つけることが、読者にとっての独学の本当の第一歩になる。そしてそこまでには、本書からは結構な隔たりがある。


本書は”買い”である。多くの独学初心者が本書を通してこの障壁を乗り越え、本記事の議論が筋違いだったと証明される日が来れば、それもまた喜ばしい。自身もまたこの大著にいざなわれ、改めて照り返された相貌新たな独学の道を、一歩ずつ歩んでいきたい。

参考

本書が公共図書館であるならば、個別具体的な領域の専門図書館・技法レベルで道案内をしてくれる本は種々ある。筆者の少ない知識の中で思いつくものを挙げておく。技法的な部分は、概ね『独学大全』が上位互換であるように思うので、それぞれあくまでレファレンスブックとして。

ビジネス系の「調べ物大全」:書籍は多いが決定版はあまりない。バランスが良くビジネス情報の具体的な取得チャネルとソースが書かれている。


英語学習の「独学大全」:英語上達に向けた技法の骨格やロードマップ本として不朽の名作(TOEIC対象なので初~中級者までという弱点はあるが)。やや古いが参考書のリファレンスが充実している。というか、より明確に方法論と海図レベルで「このテーマではこの本のここをN回繰り返すべし」っていう指定すらなされており、かなりクオリティが高い。どこかで書評記事書いても良いぐらい。あと国語と数学については、、、あんまり「技能」的切り口で俯瞰されてるもの少ないんだよなぁ。


生活系の「調べ物技法」:テレビ番組の有名リサーチャーの著作。技法とともに具体的なソース提示が豊富。

いいなと思ったら応援しよう!

ばる|専業読書家(人文学)
頂いたサポートは、今後紹介する本の購入代金と、記事作成のやる気のガソリンとして使わせていただきます。