見出し画像

いかにして研究室のマネジメントをすすめていくか 研究費相当分をくふうでおぎなう


はじめに

 パートで研究員としてはたらいて1年になろうとしている。外部共同研究員としてスポンサーの企業から技術提供者として給与をもらう。身をおく共同研究先の地方の研究機関はあいかわらず余裕がない。現場の危機的な状況をみて、以前よりもはるかに切実な状況。

それならばもっと外部から研究費を得ればよいではないかと声が聞こえてきそう。それはもちろんしていて、スタッフのみなさんはそれに貴重なエネルギーと時間をついやす。はたでみていて気の毒なほど。最近クニや省庁が推奨する額の外部資金を超えるぐらい得てもまったくたりていない。

流行を追うだけのかたちだけの研究はやらない。とくに大きなプロジェクトの一画に参画しても、ほぼ「雑用」と枝葉のさきのささいな内容にふりまわされ時間をうしない、結果として「じぶんたちの研究」として定着しない。「長いものにまかれろ。」はオトナの考えかもしれないが、もうのりたくない。みずからのテーマを地道に究めたい。

外からこのクニの研究機関の一端を1年とおしてみてきた。ではどうするか。その具体策を。

まずは…

 出費をおさえるのが当面の課題。不必要な光熱水の使用を極力抑えている。機器の動力や熱源・冷却などけっこう費用はかさむ。改修により人感センサーがあるおかげで共用部分ではずいぶんムダな電灯・冷暖房などは控えられている。

なかには必要と思われるものまで目をつぶる。極力つかわないですむ実験方法はないか、ほかの廉価な手法はどうかとか。どのくらいの費用がかかるかをくらべてやむなく安いほうを選択。場合によっては断念する。「がまん」がはてしなくつづくかんじ。

試薬の使用量をかぎりなく減らすために、実験のスケールを極力ちいさくする。これも技術を身につけて精度をたもてる範囲を熟知しているのでできる。なにも初心者にいきなりはやらせない。ただしその微量化のテクニックのためによぶんな時間をつかう。

とことん節約

 試薬類を極限まで節約してちまちまつかうおかげで、長年の節約が功を奏して薬品が在庫としてのこっていく。本来消耗品のはずのプラスチック機材は用途を厳密に区分して、可能なかぎり洗浄してくりかえし利用。これは化学者だからできること。どうじにゴミもへらせている。

これらでかなりの節約ができている。とうぜんテーマが変わるとつかう薬品類や機材がかわる。つぎにつかう機会があるかもしれないと処分せずにストックしておく。そんなものばかりでけっこうな数になっている。

むだにできないのでいまある試薬類と入手の容易な材料でこれまでの研究テーマをひろげられないかと思案する。建設的でないかもしれないがやむを得ない。

自費・自宅で実験

 スポンサー企業からいただく給与で実験機材をじぶんで買い、家や学習サポートの事務所で実験している。必要な文献・テキストなどのとりよせもおなじ。これならばだれからもクレームなどはでないし、好きにやれる。

文系の学者でおなじように給与で本を買う方を知っている。ほとんど本代になってしまうとのこと。まさか理系の学者もそうなる時代がくるとは...。

ことしはスポンサーの企業からの報酬のうち、こうした費用ではんぶん消えた。投資とおもえば安い。のこりで質素に節約して生活。なるべく実験の費用へまわしたい。

それでも成果の論文をだす費用がなかなか工面できない。トラの子の貯金をとりくずすか。そこそこレベルの学術誌に1報で数十万円を複数出すのは自費でもつらい。ここが以前とちがうところ、10報だしても費用など気にもとめないほどだったひとむかしまえがなつかしい…。

わたしのような民間の個人研究者向け(とくに理系)の助成金などのシステムをさがすがなかなかない。もうひとつべつの事業をはじめてそちらで研究費用にあてるべきだろうか。

周囲から工面する

 ないものは中古品でもさがしてくる。以前につとめていたころのこと。すでにひっぱくの状態だった。

当時は市の広報誌の「ゆずります」のコーナーをくまなく目をとおしていた。その理由は研究につかえそうな日用品さがし。すでに高価な実験器具ではそろわないので、日用品や学童用のものでもつかえるものならばなんでもという態度。

ここで小型の顕微鏡を入手できた。なんと譲っていただいたのは高校生の保護者の方。このお子さんが小学生のころにつかっていたものらしい。使わなくなり不用品の告知を出されたと。

市をつうじて案内してもらいこのお宅までうかがい品物を受けとった。わたしが職場の状況でやむなくこうしてつかえるものをさがしていると話すと、「そんなにたいへんな状況なのですか。」と目をまるくされた。小学生のつかっていたものを研究でつかわねばならないとは。さすがにすこし滅入ってしまったがやむを得ない。

このころと社会状況は大きく変わったはず。しかし研究機関のひっぱくぐあいは悪くなるばかりでますますあやうい。もはや敷地内に修理すれば使えそうなものを廃棄品としてだす「余裕」すら見られない。相対的に研究機関が重視されていた戦前から昭和のころまでのだいじにつかってきた物品は消耗しつくされてしまった。

おわりに

 節約づかれの状況はすでに過ぎた。そしてバブルの状況になった研究室のマネジメントのアドバイスをコンサルできるほどに。規模を縮小する時期はいずこもやってくる。

根本からみなおしておかないと、クニの方針のたびたびの変更などでほんろうされかねない。バブルの状態からいったん外部資金がすくなくなると、いちどゆるんだサイフのひもはしめられず、とたんに研究室の運営が困難になってしまう。

お金をそれほどつかわないでできる研究の体制やしくみをすみずみまでととのえておく。するとよぶんな外部資金にたよらずとも研究室を運営できる。邪道かもしれないがポケットマネーからの捻出をおしまなければ、業績も地道にそこそこあげられるはず。なにも最初から世界トップレベルをめざしているわけではない。


テーマに関連する記事


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?