【カフェ開業まとめ】思考を綴り、本を読むための、小さな喫茶室をOPENするまで
何年ものあいだ夢見ていた、カフェ開業。
ついに12月6日にOPENすることが決まりました。
ノートを開いて思考を綴ったり、本を読んだり、考え事をしたり。ひとりの時間を心地よく過ごすための、小さなカフェ。名前は『じぶんジカン喫茶室』です。
場所は、海と山に囲まれた静岡県伊豆高原。国立公園の敷地内にある、緑豊かなエリアにお店を構えました。
このnoteでは、カフェを開業に向けてやってきたことをお届けします。
どうしたら自分でもカフェを開業できるか考えた
はじめて「カフェを開いてみたい」と思ったのは、今から7年前、2017年のことでした。
「一人でゆっくり心地よくノートを書けるようなカフェをつくりたい」という思いが芽生えたんです。
当時は東京で暮らしていて、近所にはカフェがたくさんありました。思考整理のためにノートを開くのが好きだったので、よくカフェに行って思考を綴っていたのですが、どこも混雑していたり、賑やかだったりして、落ち着いて思考を深められる場所じゃないなあと感じていました。カフェって多様な人が訪れる場所ですし、一般的にはおしゃべりを楽しむところだと思うので、そりゃそうですよね。
それで、「そういう場所がないなら、自分でつくりたい」と思うようになったんです。
つくりたいカフェの解像度を上げる
カフェ開業にまつわる本を何冊か読んだところ、どうやらまずは「コンセプトをしっかり考えること」が重要らしい。そこで、つくりたいカフェの解像度を上げて、より具体的にイメージしてみることに。
どうしたら実現可能なのか考える
理想のカフェを実現する方法がまったく想像できなかったので、まずは自分がつくりたい場所のイメージと近いカフェに足を運び、店主さんにお話しを伺ったり、ネットや書籍で情報を集めたりしました。
今はとても良い時代で、カフェ開業に至るまでのストーリーをブログや本に綴ってくれている方も多く(このnoteもそうですが)、「どうやって実現したのか」の参考事例をいくつか見つけられました。
分析を進めると、わたしの理想イメージに近いカフェは、どうやら「飲食以外の収益の柱があること」が多いとわかったんです。
通常、数百円のドリンクや千円前後の食事だけで生計を立てようと思ったら、それなりに多くの人に来てもらわないと成り立ちません。
しかし自分が理想とする「おひとり様用」「長居してもらう」「客席が少ない」という運営形態だと、上記の形で生計を立てるのはかなり難易度が高く、どう考えても正攻法では運営のイメージが湧きませんでした。
そもそも飲食店勤務の経験もほぼないし、コーヒーや紅茶に特別詳しいわけでもなく、有名人でもない。回転率を上げて日々忙しくドリンクや料理を提供できる気もしない(カフェで生計を立てている人って本当にすごい!)。
そんな自分でも、理想のカフェを実現するには?
そう考えてたどり着いたのが、「まずECで売上を立ててそれだけでも生きていけるぐらいになってから、カフェを開こう」という結論でした。
理想のカフェを開業するための土台づくり
理想のカフェを開きたいと思って、「まずはECで生計を立てられるようになろう」と決意してからの7年間の歩みを振り返ってみましょう。
2018年:まずは試しにプロダクトをつくってみる
理想のカフェが「心地よくノートを書ける場所」だったことから、「いつか開くカフェで使ってもらえるようなノートを、まずは作ろう」と考えました。
そして試しに制作したのが、こちらのノートです。
最初はお試しとして100部だけ作ってみたのですが、なんと3日で完売。当時Twitterのフォロワーさんが1000人くらいだったと思いますが、それくらいの一般人でも、良いプロダクトを作れば手に取ってもらえる可能性を感じました。
2019年:ブランドを立ち上げプロダクトを展開する
前年のお試しを経て、2019年1月に『じぶんジカン』というブランド名で本格的にスタートし、少しずつプロダクトを増やしていきました。
ちなみに当時はライター・編集者としての本業があり、ECでの売上は微々たるものでしたが、「いつかこのEC物販だけで生計を立てられるようになるぞ」と覚悟を決めていました。もちろん、その先にあるカフェ開業を見据えて。
2020年:小さな店舗を借りてみるが、失敗に終わる
まだまだカフェ開業は難しかったのですが、とにかく小さくても良いから店舗を持ってみたいと思い、都内にて家賃5万円で4畳半のテナントを借りてみました。……が、ここは結果的にお客様に来ていただくことなく、数ヶ月で撤退することに。
この経験から、いつかカフェ用の物件を探す際は以下のポイントを重視しようと学びました。
2021〜2022年:ブランドの売上を確立させる
2019年に立ち上げたブランド『じぶんジカン』を育てて、2022年に「これぐらいEC売上があれば、一応理想のカフェも開業できそうだな」と思えるようになりました。
この頃にはそれまでやっていたライター・編集業を辞め、ECとカフェ運営で生計を立てるために舵を切り始めました。
2023年:カフェ開業のための物件探しを始める
それまでも物件情報サイトを覗いてはいたのですが、リアルにカフェ開業を目指すべく本腰を入れて情報収集を始めました。
物件情報サイトを毎日見たり、気になる物件に問い合わせて内見に行ったり。
2024年:セルフリノベーション・開業
物件探しの中で「ここなら開業できそう!」と思える場所が見つかり、2024年のはじめからお店づくりを開始しました。
内装などの工事や、セルフリノベーションを経て、10月に飲食店営業許可を取得。そしてついに、12月にOPENする運びとなりました!
伊豆高原という「程よい田舎」でのカフェ開業を選んだ理由
なぜ静岡県伊豆高原をカフェ開業の地に選んだのか、ポイントごとにまとめました。
立地の希望条件について
カフェを開くにあたって、立地は非常に大事だと思います。
一般的なカフェにおいては以下のような立地条件を重視すると思うのですが……
わたしのイメージするカフェにおける立地条件は、上記とは異なりました。
物件探しの軌跡
物件探しの軌跡は、以下のような感じです。
「店舗物件ってどうやって探すの?」って思う方も多いかもですが、居住用と同じくアットホームなどの情報サイトを見たり、街の不動産屋さんのWebサイトを見たりしました。
わたし達は結局アットホームで見つけた物件を選んだのですが、探す過程で得た「こうやって探すと良いらしいよ」という情報もまとめておきます。
あとは知り合いが実践していた方法だと、その街の集まりなどに顔を出して知り合いを増やし、物件を探していることを伝えておくなど。田舎への移住なんかだと、表に出てこないけれど「借り手や買い手を探してるらしいよ」というローカルな情報があったりするらしいです。
小さなカフェ開業までのセルフリノベーションの軌跡
さて、わたし達がカフェを開くことにした物件は、実はもともと別荘として使われていた築45年の平家でした。
つまり飲食店仕様の建物ではないので、それをカフェとしてリノベーションする必要があります。
必要なところは業者にお願いしつつ、なるべく自分たちの手でセルフリノベーションを進めて行きました。
▽物件の最初の姿
▽天井や壁を塗ったり
▽庭を整えたり
▽カフェカウンターを作ったり
業者さんにお願いしたのは、カフェスペースの水道増設と照明器具の交換、工房(スタッフルーム)の床を畳からフローリングにすること、そして庭の整備工事などの最低限の部分のみ。
DIYを選んだのは、予算の関係上です(莫大な資金があれば、全部プロに任せてました笑)。DIYなんてやったことがありませんでしたが、その過程も楽しみつつ、夫婦二人で内装工事を進めてきました。
カフェ開業にかかった費用ざっくりまとめ
気になるお金の話も、ざっくりまとめておきます。
開業費用ざっくりまとめ
かなりざっくりなのですが、900万円ぐらいは使っています。記憶から消去しているだけで、ひょっとしたらもうちょっと使っているかも。最低でも900万円ぐらい使った、という感じでしょうか……!
ちなみに外注工事については、物件を扱っていた不動産屋さんがリフォーム事業もやっていたので併せてお願いしたり、後からたまたま知り合った大工さんにお願いしたりしました。
開業費用の出どころざっくりまとめ
開業費用のためにNISAで運用していた自己資金250万円と、日本政策金融公庫の事業融資で借りた600万円、そして最後にちょっと資金繰りが厳しくなって急遽借りたYELL BANKの50万円(キャンペーンで無利子だった)が、開業費用の出どころです。
また他にも、まだ入金はされていないのですが、カフェ開業にあたって小規模事業者持続化補助金も活用しています(ちなみにこの補助金は、まったく別の仕事をしていた人が「カフェを開業しよう」と思った場合には使えないのですが、わたしの場合はもともと運営していた『じぶんジカン』のブランドの事業拡大としてのカフェ開業なので活用できたという細かい補足も一応)。
一般的なカフェ開業には、開業資金に加え運転資金として「自分が数ヶ月生活できる分だけの金額」が必要ですが、わたしの場合はすでにECでの売上で生計を立てられており、ECの方も変わらずに(というかむしろ成長しつつ)売上が発生するので、運転資金は不要と判断しました。
融資については、人生で初めてのことだったのでちょっとドキドキでしたが、返済金額も月々にするとそう大きくないので、ちまちま頑張って返していきたいと思います。あ、YELL BANKの50万円は返済完了してます。
開業までの道のりで大変だった3つのこと
まだ記憶が新しいうちに、大変だったことと、意外と大変じゃなかったこと、それぞれTOP3をまとめてみました。
大変だったことTOP3
1)物件選び
やっぱ物件選び、大変だったなー。親切な不動産屋さんもいれば、そうでない不動産屋さんもいたし。「ここに決める」という決断も、エネルギーが要ります。ちなみにカフェ開業までの期間SNSなどを見てくださってる方はご存知だと思いますが、一度決まりかけた物件で大いに失敗したりも。とにかくやっぱり、物件と立地選びが一番重要であり、それゆえに大変でした。
2)資金繰り
いろんな人から「思ってるよりお金かかるよ」と言われてましたが、やっぱりその通りでした。思ってもみなかったところにお金がかかって資金繰りが危うくなり、急遽YELL BANKで借りたのもそれが理由です。親からは「もっと公庫の融資金額を大きくしておけば良かったのに」と言われましたが、たしかにそうだと思いつつ、返済のことを考えると「これ以上大きいと未来のわたしが辛いかもな……」と思って増やせなかった背景が。何はともあれ、資金に余裕があった方が良いことは間違いない。
3)融資や補助金のための資料づくり
今回のカフェ開業までのあれこれを通して、自分は「提出のための資料づくり」が非常に苦手だとわかりました。特に数字が絡む資料。あとは印鑑文化と、コミュニケーション手段が電話っていうところなど。各種資料提出までの期間は、苦手分野に追われて頭おかしくなりそうでした。
意外と大変じゃなかったことTOP3
1)飲食店営業許可をとること
飲食店をやるための許可を保健所にもらわなければいけないのですが、事前に調べたり、保健所に相談に行ったりした時点では「なんか結構ハードル高そう」と思って身構えていました。しかし実際に保健所の検査が来た日は、要所だけ確認して3分で許可がおりたので「なんだ、意外とあっさりだな!」と安心したり(事前にちゃんと準備したから許可がすぐおりた、ということもあるかもしれませんが)。
2)融資面談
融資の面談も、めちゃくちゃ身構えて行きました。圧迫面談されたらどうしよう、とか(笑)。事前に融資面談対策のYouTubeを見たり、想定される質問の答えリストを作ったりして面談に挑んだのですが、担当の方が同年代の女性で、事業についても理解してくださり(ECやSNSについて理解してもらえるかが不安だった)、そこからカフェのコンセプトなどもスムーズに伝わって、「なんか楽しく未来についてしゃべってたら、面談おわった!」という感じでした。
3)厨房設備を揃えること
カフェ開業のための厨房設備、めっちゃお金かかるのでは?と不安だったのですが、実際当店はハンドドリップのコーヒーや紅茶を淹れるだけなので、購入したのはガスコンロ・食器・コーヒー器具・小さい冷蔵庫、そして飲食店営業許可の要件である手洗い器のみ。キッチンはもともとの家庭用設備を活用し、カフェカウンターもDIYしたので、ここは全然お金がかかりませんでした。たぶん良いエスプレッソマシンを淹れたり、大きな業務用冷蔵庫とかを買ったりすると、お金かかるかもですね。
そうして完成した、ひとり時間を大切にするあなたのための『じぶんジカン喫茶室』
ということで、構想から7年かけて実現した、ノートを書いたり本を読んだりするための、ひとりの時間を心地よく過ごす『じぶんジカン喫茶室』。
予約制で、各回3名限定なのでゆったりとお使いいただけます。
ノートや手帳を書きやすい机のお席が3つ。
本を読んだり考え事をしたりするのに良い、ソファ席が2つ。
窓からは、四季折々の自然豊かな景色。
ちなみにここまで書いてきませんでしたが、店頭に立つのは夫です。
夫の夢が「いつかゆっくりと珈琲を淹れるカフェができたらなあ」で、わたしの夢が「自分と向き合う時間を心地よく過ごせる場所をつくりたいなあ」だったので、そこが一致してわたしがブランド全体の経営を、夫が店舗運営を担う形でカフェを開きました。
当店の珈琲は、深呼吸をしたくなるようなコクのある中深煎り。ネルドリップで、1杯ずつ丁寧に抽出します。
豆は、わたし達も毎日愛飲している茅ヶ崎『珈房』さんのブレンドです。
わたしはブラックよりもカフェオレ派。夫のカフェオレはとっても美味しいです。わたしが大好きな、ミルクたっぷりカフェオレをどうぞ。
紅茶もご用意しています。お気に入りのブランド『TEA POND』さんの茶葉を使わせていただけることになりました(実はわたしの地元である東京・清澄白河に本店があるというご縁も)。
予約制の喫茶室というとハードルが高いと感じる方もいるかもですが、ノートや手帳を書くのが好きな方、読書が好きな方、ひとりの時間を大切にされている方ならば、どなたでも大歓迎です。
というよりもむしろ、「わたしが行っていい場所なのだろうか?」と気にしてしまうような、あなたに来て欲しい場所なのです。
(わたし自身、思想の強いカフェに「行きたいけど、わたしなんかが行っていいのかな…?」と尻込みするタイプなのです……笑)
もし少しでも気になったら、Webサイトをのぞいてみてください。
▼じぶんジカン喫茶室の詳細はこちら
「自分のための時間」を過ごす旅をしに、伊豆高原にお越しいただけたら嬉しいです。
●喫茶室のInstagramも始めました!
●カフェ開業までの日記はThreadsにて
●ブランドづくりのことはこの本にまとめてます!
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