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頭のなかにある思考のエッセイ

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自分のなかにもやもやと浮かぶものの輪郭をとらえたくて綴る、文章の置き場所。主に自分のための言葉たち。
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「やりたいことを何でも実現してる人」という誤解

「やりたいことを何でも実現してる人」だと思われがちである。 たしかに、自分のブランドを立て、好きな人達と楽しく働き、ついに念願のカフェまでオープンさせたという字面だけみると、そう思われることもあるだろうなと納得する。 しかし、これは謙遜ではなく、全っ然そんなことはないのだ。 一見「華々しく夢を実現してる人」のようにみえるかもしれないけれど、叶えられなかったことや、今のところ難しそうだなーと思うことだって、いっぱいある。 例えば、カフェ運営。 最初に描いたイメージは、

10年前のこと、10年後のこと。

結婚してから10年の月日が経った。 特に何をするわけでも、何かが変わるわけでもないけれど、区切りの良い数字は感慨深さがある。 10年前、わたしは25歳。新卒で入った文房具メーカーを辞めたばかり。会社員に復帰するイメージが湧かず、塾講師としてアルバイトしながら、副業でライター業を始めた頃だ。夫は都内の会社に勤めていて、都心にアクセスの良い場所に住むことが必須だった。平日に仕事をして、土日の休みはショッピングをしたりカラオケに行ったりするけれど、どこも混んでいてちょっと疲れて

自分を大事にしてもらえないことと、自己肯定感について。

「自分のことを大事にしてもらえてないな」 という感覚を抱く瞬間が、日々のなかに結構ある。 わかりやすく後回しにされたり、蔑まれたりする時はもちろんだけれど、もっと些細でわかりづらい形で、日々のなかに「大事にしてもらえない瞬間」が溶け込んでいたりもする。 例えば先日、久しぶりに書店に行った時。入り口に近い棚を見て、なんだか悲しくなってしまった。 そこには「こういうのが売れるんでしょう?」と言わんばかりのキャッチコピーや装丁の本がずらり。たしかに、売れそうだ。「どうしても

ひとりぼっちを怖がらない

ひとりぼっちを怖がらなくなったと思う。以前よりも。 昔のわたしはというと、「友達がいないやつ」になることを恐れていた。 それゆえに、自分と合わない人との関係も一生懸命繋ぎ止めようとした。ノリが合わなくなった旧友や、きっとお互い「なんか違うな」と思いながら付き合っていた会社や仕事関係の人たちなど。 もともと友達が少ないので、「この人たちとの関係がなくなってしまったら、本当に誰とも関わらなくなってしまう」という恐れが働く。 つまりは、ひとりぼっちになるぐらいなら、「なんか

手放して、整えて。

一年の振り返りをしていて、驚いた。 今年はたくさんのことを始めた一方で、手放したものが全然なかったのだ。そりゃあ、頭も心も体も、いっぱいいっぱいになるわけだ。 いつも「始める」と「やめる」のバランスを大事にしているというのに、今年はどうやら始めることに一生懸命で、手放すことをうまく意識できてなかったみたい。 ひとりの人間が抱えられる物事の量には、限界がある。 もちろん人それぞれの器量によってその総量の差はあれど、限界があることには変わりない。わたしは人一倍キャパが狭い

理想の暮らしは、今はまだ。

「ここには理想の暮らしが、今も変わらずにある」 電車を降りた瞬間、そんな気持ちになってホッとした。久しぶりに辻堂へ遊びに行った日。街を歩いて弾む心に「やっぱりこの街、好きだなあ」と言葉が漏れる。 辻堂は、昨年まで暮らしていた街。海に近く、お気に入りのカフェがいくつもあって、大きな本屋さんもあって、駅前の商業施設もいい感じで、大人が昼間から海辺で遊んでいるような、そんなゆるい空気がある。住みたい街ランキング上位に入ったりする、近年人気のエリアでもある。 ここにいた頃に毎週

「時間や場所に縛られず働く」を手放して

人生ではじめて、カフェを開業した。 初営業日は、お客さんをお迎えするのにそわそわしたものの、「新しい人生のスタート!」みたいな華々しさはなく、せっせと掃除をしてお客さんにご挨拶して、工房にこもって仕事をして(喫茶室の営業は夫の担当である)、普段の日々のなかにある「ちょっとしたハレの日」ぐらいの感じだった。 いつもと違うことと言えば、「開店おめでとう!」とお客さんや家族友人知人のみなさんが祝ってくれること。そんな言葉をもらうたび、嬉しいやらくすぐったいやらという気持ちになる

お金のはなし、2024

最近、ようやく新しい掃除機を買った。 数ヶ月前から「そろそろ寿命だな」と気づいていたけれど、それなのになかなか新調しなかったのは、正直なところ掃除機を買うだけのお金がなかったからだ。 今年は、本当にほんとうにほんとーーーに、お金を使いすぎた。 まず伊豆高原への引っ越しからはじまり、工房とカフェを整え、手帳関連の新アイテムの制作など、人生でもっとも出費が多い1年だった。 カフェ開業についてはこのnoteにも書いたけれど、融資を除いても300万円ほどは実費で使っている計算

「好きだな」と思える人たちと出逢うには

ずっと友達が少ない人生だったけれど、20代前半の会社員の頃は、気の合う人が特段少なかった。 話が合う人、気を許せる人、「好きだな」と思える人が、本当に片手で数えられる程しかいなかった。会社のお昼休みでご飯を食べる集団も、たまに飲みに行く旧友も、なんだか話が合わなくて。でもわたしは独りになるのが怖かったので、なんとなくわかった風に頷いて、話を合わせていた。 今思えば当時は人生史上もっとも「自分に嘘をついていた時期」だった。本音を隠して、周りに合わせることで自分の居場所をどう

「自分で考える」を大事にしたくて

頭の回転が遅いよなあと、思うことが多々ある。 急に話題を振られて返事をするとか、突然の質問に答えるとか、そういう時にするりと言葉が出てくる人を尊敬する。わたしは、まったく出てこないタイプだから。 「考える」に時間がかかる。ゆっくり咀嚼して、自分の脳内を巡らせ、出てきた感情や思考の輪郭を捉えるような言葉を選びたい。でもそんなことをしていると、会話のテンポはすこぶる悪くなる。だからすぐに答えねばならない人前で話すシーンなどは、しっかり考えることも、自分の考えを言葉にすることも

「自分の人生」が、おもしろいコンテンツNo.1であってほしい

「わたしもいつか、ああなってしまうのかな……」 ぱたりとドアを閉め、作り笑いを消した後、ぽつりと呟いた。 たった今、近所のおばあちゃんが突然訪ねてきて、「お庭をこうした方がいい」だったり「近所のあの人は〜」という噂話だったりをわーっと喋って帰っていった。悪い人ではないし、優しさからだってわかるけど、わたしと夫の顔には疲れの色が浮かんでいた。 最近、求めていないアドバイスをもらうことが増えた。側から見ると心配になるような生き方をしているからだろうか。それらのアドバイスはた

【カフェ開業まとめ】思考を綴り、本を読むための、小さな喫茶室をOPENするまで

何年ものあいだ夢見ていた、カフェ開業。 ついに12月6日にOPENすることが決まりました。 ノートを開いて思考を綴ったり、本を読んだり、考え事をしたり。ひとりの時間を心地よく過ごすための、小さなカフェ。名前は『じぶんジカン喫茶室』です。 場所は、海と山に囲まれた静岡県伊豆高原。国立公園の敷地内にある、緑豊かなエリアにお店を構えました。 このnoteでは、カフェを開業に向けてやってきたことをお届けします。 どうしたら自分でもカフェを開業できるか考えたはじめて「カフェを

心の調子を崩してから、社会復帰までのはなし

靄に包まれ泥沼に立ち尽くすような日々だった。 社会人2年目、24歳の夏。出張中に眩暈で倒れ、どうにか家に帰るも翌日から出社できなくなった。内科で診てもらうと「異常はない」と言われ、辿り着いたメンタルクリニックで適応障害と診断された。 予兆はあった。会社に行こうとすると涙が出たり、電車に乗ると体調を崩したり、本が読めなくなり、大好きなバンドの音楽すら聴けなくなっていた。 会社はしばらく休職させてもらったけれど、もう二度と戻れる気がせず、4ヶ月ほど経って退職の手続きをした。

「ふらりと逃げ込める非日常」を持っておく

いつもとは反対方向の電車に揺られて30分。 ふわっと潮風の匂いがわたしを包む。駅を出て、すぐ目の前に砂浜のビーチ。薄曇りの今日は海と空の境目が曖昧で、ぽつんと浮かぶ島だけが水平線の存在をかろうじて感じさせる。 突如じわりと涙が込み上げる。昔から心の琴線に触れることがあると、なぜだか目頭が熱くなるのだ。 この景色が、心の奥深くにある何かを満たしていく。 半日だけのバカンスでやってきたここ「今井浜海岸」は、伊豆のビーチの中でもそれほどメジャーではない場所だと思う。 伊豆