幻の集合体うんこ団子VS集合体恐怖症の私
意を決してそれを掴む。
私はまだ目を開けられないでいる。
意を決して目を開ける。
パラパラと手からこぼれ落ちる…。
それはあの日、僕が失った君との、暑い短い思い出の夏のようで…
タンタタタタタタン〜♪タンタタタタタ〜ン♪
BGM(脳内かYouTubeで「夏の日の1993」somg by classをお願いします)
この話は私がまだ10代の頃、あの夏に起こった恋。
ビーチなボーイズな青春の思い出とはむしろなんの関係もない、アラサーの私(しかも冬)の身に起こった、
重度の集合体恐怖症を煩(わずら)う、私と、犬の尻から生まれし集合体との壮絶なバトルの話である。
集合体と一見、遠回しに言葉のモザイクがかかっているが初めに言ってしまえばいわばうんこ。犬のうんこの話である。
私は重度の集合体恐怖症である。
水玉模様適度の丸の集合なら大丈夫だが(ミ○ーちゃんのスカートのような)、大小と不揃いな丸の集合や、密集した丸の集合体が苦手で鳥肌が立ってまず見ていられない。
その日は両親が旅行に行くと言うので、私がペットシッターを勤める事になっていた。うちには大型犬が二匹、小型犬が一匹の系三匹の家族がいる。散歩時である。
大型犬が大を催した時に、ある異変に気付いた。
私はそのまま後ろにのけぞり、気絶しかけて足がぐねってよろけて道路に倒れかけた。
前日の話である。実家で飼っている犬達が台所を漁り「ゴマを一袋食べちゃったんだよね〜」という母の話を聞き、「ふぅん。」などと思っていた。
「ゴマを一袋食べちゃったんだよね〜」
勘の良いガキの皆さんはもうお分かりでしょうか。
犬の尻から、次々と産まれる集合体。
大の犬の尻、小の犬の尻から、次々と産まれる大小の集合体。
ごまのびっっっしりつまりしうんこ様。
それはまさに集合体の権化。
そう、集合体に消化された
う!ん!こ!
胡麻団子のような、そうではないようなうんこ団子、恐怖の集合体が次々に三匹の犬の尻から産まれてくる。
愛犬のうんちだ!そらぁ飼い主としては是が非でも持ち帰らなければならない。
私はしつこいようだが、集合体恐怖症である。しかも重度だ。この時点で私のhpはピコーンピコーン状態。
後一つでもダメージを受ければ、あの世へお陀仏である。
うんこでお陀仏。うん陀仏である。
空にいるおばあちゃん聞こえてますか。
愛しい孫がうんこで死にかけていますよ。
鳥肌の立つ己の右腕、そしてそれを左腕で支えて、恐怖の集合体うんこ団子に手を伸ばす。
のば、のばば、のばばばば、のばばばばばばそうとするのだけれど、
手が届かない。ここには君や近所の人に見えない空間が二億光年ぐらいあると思ってほしい。
深い息を吐いて、息を吸って止める。
「うんこの集合体はすぐそこだぁ!腕を!腕ぉぉ!!伸ばすんだァァ!!!」
パラパラッ…パラッ…パラ
パラパラ…パラパラパラ…
ん!?!!!!!?
恐る恐る目を開ける。
手からこぼれ落ちる愛しい愛犬のパラパラのうんこ。
未だかつて、うんこからパラパラとこの音を聞いた人はいただろうか。
パラッパラ。
うまい中華屋のチャーハンぐらい、パラッパラ。
パラパラパラ…
手からこぼれ落ちる幻の集合体うんこ団子。
目の前の植木に顔から突っ込みそうになる。
鳥もびっくりするやろうな。こんな全身の鳥肌。
全身に鳥肌が止まらない上に、ティッシュと袋ごしとはいえ、パラパラの集合体のうんこだんごの感触が指の先に、パラリパラリとダイレクトに伝わってくる。
パラッパラ!パラッパラ!パラッパラパパ!♪
(ハッ!)合いの手
脳内で流れたハッピーサマーウエディングのやぐっちゃんの合いの手が聞こえたところで我に返る。
「くぅぅ…つ、掴めねぇ…」
手を伸ばしても掴めない。
まるで幻である。
幻のうんこ団子。
直視できない上に掴めないのである。
その上、うんこなんかごまなんかも、もうようわからんくなってきた。
でも時間は待ってはくれないのである。
一つ、パラリラパラリラと掴めない幻を見ているうちに、新たなうんこ団子は、大の犬の尻、小の犬の尻、三つの尻からどんどん産まれてくる。
こんなにワンコ達が愛おしいからこそこんなにも憎い…。
うんこが、うんこが憎い…。
きっとこれが、どれだけ情熱的な恋に落ちた愛おしい男だったとしても、パラッパラのうんこの処理なんて決してできないだろう。
ワンコとは沼。沼である。
今私は、推し三匹の為に、己の鳥肌を振り払って絶望という名のうんこ団子地獄で1人闘っている。
頑張れ私!頑張れ私!
うんこ団子になんか負けない!
私は!負けないっっ…!!!
幻の集合体うんこ団子VS集合体恐怖症の私
再びゴングが鳴る…
ッッファイ!!!!!(叫)
「誰か、、た、助けてぇぇ」と、半べそをぐすぐすかきながら、つかめないパラッパラのうんこ×三匹との闘いは2時間ほど続いた。
日が暮れた。
新しい法律をここに命じる。憲法第111111(ワンワンワン)条より、
決して犬の尻から開けゴマしてはならない。