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女であるということ


川上未映子の『夏物語』をこの前のGWに読みました。


大阪の下町に生まれ育ち、小説家を目指し上京した夏子。38歳になる彼女には、ひそやかな願いが芽生えつつあった。「自分の子どもに会いたい」――でも、相手もおらんのに、どうやって?



この小説は、主人公の夏子が「自分の子供に会ってみたい」という思いに向き合い、出産するまでのことを描いています。

しかし、夏子は特定のパートナーがいるわけでもなく、
結婚願望もありません。

ただ純粋に「自分の子供に会いたい」という思いから行動することになるのですが。

その手段として医療行為を選択し、“そこまでして”新たな命を生み出すべきかどうか、ということを夏子と共に葛藤していく、というテーマにもなっています。

以下、私がこの小説を読んだ後の感想メモです。

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凄い小説を読んでしまったと思う。

生きるとは、死ぬとは、
そして、新たな生命を産みだすとは。

私は現在社会人3年目で、
“子供を産むこと”ということが現実の話として
身近に訪れるようになってきた。

その中で、それはいったいどういうことなのか。
エゴなのか。自然の摂理なのか。
色々思い巡らせることが多い今、
この小説に出会えたことは凄く良かった。

自分が望もうと望まなかろうと、
生まれたからには死ぬまで生き続けなければならない。

その責任を、親は自分が生み出した子供には
必ず与えることになってしまう。

私は生まれてきて幸せなのだろうか。

生きていると
辛いこと、悲しいこと、
それらで溢れてしまう。

幸せかどうかの答えを
今の私はまだ簡単に出すことができそうにない。

それでも、
春の麗かな日差しの中で大切な人と笑い合える時間、
新しい知識を学べた瞬間、
そして、家族から沢山の愛を感じた時。

この世に生まれて、
今私は存在しているという事実に
心が温かくなる。

どんな背景があろうとも、
一つ一つの命の誕生は、本当に神秘的で
美しいものだと私は思う。

不安でどうしようもなくなった夜、手を繋ぎながら
「大丈夫。
何があっても世界でいちばんの味方だから。」
と抱き締めることができたら。

「あなたの生きている世界は
こんなに美しいんだよ」
と伝えることができたら。

そして、私がそうしてもらったように、
言葉には表せない、無限の、無数の愛を
与えられる存在が、私にもいつかできるのだろうか。

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この小説はある意味で価値観をガラッと変えてしまいそうになるほど“危険”であるとも思いました。

凄い小説であるからこそ、友人には軽い気持ちでお薦めできないかなぁ、、。

それでも、私にとって大きな衝撃を与えたことも事実で、
生きること、そして新しい命を生み出すということ、これらをこの小説と共に考えられたことは、私の人生に必ず活きてくると思います。

600ページ以上にも及ぶ長編小説でしたが、続きが気になって仕方なく、数日で読み終えることができました。
ここまで引き込まれた小説も本当に久しぶりです。

また余談ですが、夏子が大阪出身ということもあり、この小説はかなり関西弁が使われています。

私自身が普段関西弁を話すということもあり、関西弁が使用される小説は私はあまり好きではなく笑

なかなか関西弁の小説を選ぶことはないのですが、この夏物語はそんな私にも全くイヤな気がせず、スッと入っとくる綺麗な文体でした。


私はまだ自分の子供とか全く想像もつかないけれど、
同級生の中では結婚したり、子供ができたり、という噂をチラホラ聞くくらいには大人になりました。


こうして夜、静かに、ゆっくりと
生きることとか、家族とか、新たな命を生み出すということとか
重くて深いテーマであるけれど、
これらについて考えた時間は大切で美しいものだったなと思います。

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