読書感想文/コンカツ?
プロフィールにあるように、しがない大学生をしている。
キラキラ女子大生を目指して早3年。
大学生活は残念ながら、想像していたほど輝かしいものではなかった。勉強内容は夢中になれるほど面白いものではなかったし、毎日遊び歩いたりもしなかった。友達と旅行なんてしたことがないし、ましてや恋愛なんて男のおの字も見えないという有様だった。
現在の私は輝きとは無縁の境地にいる。寧ろコミュニケーションがさらに下手になり、人と会話することすらまともにできなくなった。
人生はままならない。
そんな私の劣等感をダイレクトに突きつつ、共感と焦りを誘ったのが今回読んだ小説である。石田衣良作『コンカツ?』だ。アラサー女性たちの恋愛模様、婚活模様が少しチクッとしたタッチで、面白おかしく描かれていた。
主人公はギリギリ20代の女性・智香。
彼女は、友人たちと4人で一緒に暮らすことになった。女4人、それぞれが仕事に精を出しつつ、合コンをはじめとした出会いに躍起になっていく話だ。正確には、智香を含めた4人全員が主人公といえるだろう。
彼女らは合コンを繰り返し、終わった後に4人で男の品評会をする。4人は異性関係の築き方が個性的で、選んだ恋愛、結婚、ひいては人生もそれぞれに分かれていった。幸せの形は人それぞれというが、その過程に信頼できる同性の友達との時間があることは誰にとっても大切なのではないだろうか。
冒頭で「劣等感をダイレクトに突かれた」と述べたが、これはコンカツに精を出す彼女らのことをうらやましいと思ったからである。4人は都会でバリバリ働いていて、恋愛経験そのものはかなり豊富とみられる。
なにより、男を品評できるところに彼女らの揺るぎない自信を感じた。
悪口のようになってしまったが、悪意はない。彼女らはルックスにも性格にも自信があるため、相手を選ぶ心の余裕があるのだ。そして仕事にも精を出しており、自分の人生を自分の物として大切にする強さを持っている。
品評会の善悪については評価が分かれるだろうが、それは彼女らのプライドの表れだと思った。
悪い意味でプライドが高いと取る人もいるだろうが、彼女らの場合は自分の価値を上げるための努力をした上でこうした行為に出ている。高いプライドが長所になるか短所になるかは、結局のところ、それに相応しい存在になる努力をしているか否かで決まるのだ。
因みに私や私の友人たちには恋愛話が全くない(友人たちの場合は恋愛とか性別とかに嫌悪を抱いている様子も見受けられる)。そのため女子達が本当にこうした会話をするかに疑問を抱いたのだが、母が職場で品評会の場をたまたま目にしてしまったという話を聞いて、実在するんだ……と妙に可笑しくなってしまった。
公の場で言ってはならないことは十分承知しているが、合コンと品評会をやってみたいと思った。そして、自分がそれを堂々と言える存在になれるような努力も。
話を元に戻す。
プライドの持つ意味は努力の有無で決まる。しかしこれはプライド云々に限った問題ではない。
結局のところ、努力できる人間が勝つのだ。そして自分の好きなもの、好きな人、やりたいことが明確に見えていれば、周りの目なんて気にする必要はないのである。
私には彼女たちのようなことはできない。なぜならその行為に見合う努力をしていないし、周りから何と言われるかを考えると怖くて動けないからだ。
最後にひとつ、別の要素についての感想を書く。
主人公の智香の前には、なかなか素敵な男が現れない。いや、正確に言えば智香が好きと思える相手が現れないのだ。
物語のラストは、初対面で論外と判断した年下の男。第一印象で人間関係が決まるわけではない、というのがよく分かった。
最近私自身の前にも、いい人が現れた。
決してイケメンではないけれど、ブサイクなわけでもなく、優しくて面白い人だった。LINEのやりとりは毎日続いた。しかし、ある日違和感が確信に変わった。
私は、この人のことを好きではない。
なんなら、手を繋いだりキスしたりすることなんてまっぴらごめんだ。
別に彼が悪いわけではない。しかし、私にはどう考えても違ったのだ。
この感じは、好きになれそうな人が現れない智香の気持ちに近いのだろうか。最初対象外だった男と恋を始めようとしている智香を見て、漠然とした焦りが生まれた。
どこまでが「誠意のある割り切り」で、どこからが「高望み」なのだろうか。
恋はしたいけれど、その相手は永遠に現れない気がする。焦っても仕方ないのだが、やはりこういうことについては考え込んでしまうものだ。