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スキを、かたちに〜水引で、大好きな源氏物語のキャラクターをイメージした作品をつくります!

 高校の時、古典の授業で履修した「源氏物語」。

 難解な古語の「け、け、ける、ける、けれ、けよ」を『サッカー活用』などと言い出したのは友人のうちの誰だったか……。

 長男がまだ赤ちゃんのころ、お昼寝をする横で瀬戸内寂聴さんの『女人源氏物語』を読みふけった頃が懐かしく思い出されます。あれから30年以上の月日が経ち、大好きな水引で、源氏物語の登場人物の女性たちをイメージした作品を作ることに着手しました。

 ところが、困ったことが。

 そう、女性たちのイメージしたアクセサリーを作っても、わかってくれる人が周りにいないのです!

 お手伝いしつつ、月に一度「水引セラピー」をやっているまちライブラリー@ざま⭐︎ほしのたに文庫で、来る人来る人つかまえて、「源氏物語、詳しいですか?」と聞くアヤシイ私。

「あっ! 大好きですよ! ちなみに私は誰それが好きです」なんて言ってくれる人にはいまだめぐり会えておりません。

 それでも優しい来館者さんたちは私の源氏物語に対する熱い想いを、相槌を打ちながら聞いてくれます。

 そしてついにこのnote上で、以前から気になってフォローしていたYUKARIさんと、個人的につながることができました♬


 YUKARIさんは、ご自身の創作も取り入れながら『紫がたり 令和源氏物語』という壮大な物語を執筆されています。源氏物語を読んだことがない、本を買って読むのは敷居が高いけれど、ほんの少しかじってみたい、という方や、現代語訳に挫折した方は、ぜひのぞいてみてください! 源氏物語の扉を開けるきっかけになること間違いなしです!

 いろいろと試行錯誤をしていく中で、まずは簡単、シンプルなものからひと通り作ってみよう! と思い、梅結びで大小のストラップを作りました。まだまだ試作品の段階ではありますが、ご覧ください。

まずは大小のストラップ。さて、どれがどの女性を表しているか、おわかりになりますか?


 小さなものは水引を3本使用、大きなものは5本使って結んでいます。どちらも、ビーズをアクセントにあしらいました。

 まずは源氏に一番愛されたとされる、紫の上。

紫の上:大小のストラップと相生結びのピアス。しずく型のビーズは、人知れず流されたであろう涙を表現しました


 『玉鬘』の帖で、正月に着る晴れの衣装を紫の上が源氏に「皆さまに選んで差し上げてください」という六条院(源氏が何人かの女性たちを住まわせた豪邸)の衣配きぬくばりの場面があります。

 そこで源氏は、紫の上に葡萄染えびぞめ(山ぶどうの実が熟したような色)=濃い紫、ワインレッドと、今様色いまよういろ=流行色、平安時代においては濃いピンク、マゼンタの組み合わせを贈っています。

 この衣配りのシーンが私にとっては実に興味深く、特に印象に残っていたのが、今回の水引制作につながったと言っても過言ではありません。この紫の上バージョンは、最初完成してもピンと来なかったのですが、マゼンタのブラウスに合わせるとても映えるのです!

 紫の上は、源氏に最も愛されたと言われていますが、読めば読むほどそんなことはない、この人もそれなりに苦悩がたくさんあったじゃないか、と思わざるを得ません。

 そして源氏の最初の妻で、正妻であった葵の上。

葵の上:大小のストラップと相生結びのピアス。葵の花の色はたくさんあり、ブルーと紫、ピンク、白と花色でまとめました。ピアスのコットンパールは、彼女の本来の素直な少女の部分を表現したくて選びました

 源氏より4歳年上の葵の上は、左大臣の姫で家柄も申し分なく、いずれは東宮妃に、との話もあったほどで非常にプライドが高かったのですね。

 深窓の令嬢ですから、16歳で12歳の源氏と今日から夫婦だと言われても、どのように接したらよいかもわからず、源氏に冷たくしてしまいます。女なら憧れない者などいない、と言われる源氏の正妻であるにも関わらず、最初からぎくしゃくした関係で、満たされない源氏はほかの女性を求めてあっちへフラフラ、こっちへフラフラするわけです。

 源氏の息子、のちの夕霧を生んですぐに、彼女は源氏の恋人のひとり、六条御息所の生霊にとり殺されてしまうのですが、子を生んで初めて源氏と心が通い合ったと思った矢先に不幸にも亡くなってしまう、そんな葵の上が私には不憫でなりません。

 私にも子どもがいて、生まれたばかりの子をおいて死ぬなんて、考えただけで胸がふさがるからでしょうか。

 お次は源氏の永遠の恋人、藤壺です。

藤壺:大きいストラップとピアス。藤を思わせる紫、女性として最高の位、中宮に上りつめた象徴のオリーブグリーンはリーダーシップの色。そしてイエローは裏切りと嫉妬を表します


 個人的に藤壺は好きです! 源氏の父帝の妃ですから、言い寄る源氏は義理の息子です。平安時代の身分の高い女性は、女房と呼ばれるおつきの女性たちが窓口ですから、男性はそこを突破しないことにはお目当ての女性とお話もできません。源氏は藤壺づきの王命婦おうのみょうぶにすがり、危ない橋を渡って藤壺との逢瀬を勝ち取るわけですが、源氏を憎からず思っていた藤壺は、理性では許されないとわかっていても拒み切れなかった。そこに藤壺の人間味、生身の女性としての魅力をひしひしと感じるのです。そして藤壺は源氏の子を身籠り、帝の子として出産します。ふたりは一生消えない罪を背負うことになります。ああ、なんて紫式部は上手いんでしょう。

 さて、こちらも源氏の子を生んだ明石の上。

明石:大小のストラップと髪飾りのバレッタです。正月の衣配りで、高雅な白と紫の衣装を明石にと選んだ源氏。これを見た紫の上は明石に激しく嫉妬します


 源氏が兄帝の妃に内定していた朧月夜おぼろづきよと恋仲になり、その事実が朧月夜の父、右大臣に暴かれてしまいます。それを逆手に取り、帝に謀反の意があるとして兄帝の母弘徽殿女御こきでんのにょうごはこれを機会に源氏を失脚させようとするのです。

 それを察した源氏は自ら須磨へ隠棲することを決めます。須磨で嵐に遭い、運命の導きによって明石へ移り知り合ったのが明石の入道の娘、明石の上でした。彼女も非常にプライドが高いのですが、賢い女性でもあった。やがて源氏との間に娘が生まれ、その娘が帝に入内じゅだいし、明石女御となって源氏はますます栄華を極めるのです。

 お次は夕顔。

夕顔:大小のストラップ。はかなげでつかみどころのない繊細な夕顔はきらきらしたパステルカラーのイメージです

 話が前後しますが、源氏のライバルであり、正妻葵の上の実の兄でもある、頭中将とうのちゅうじょうが昔愛し、娘もいた相手が夕顔です。頭中将の正妻は、源氏と朧月夜の仲を暴いた無粋な右大臣の4番目の娘で、性格がきついのでこの夕顔に嫌がらせをしたようです。

 それで、ひっそりと暮らしていたところをたまたま通りかかった源氏が見初めて恋仲になるのです。が……、

六条御息所:大きなストラップと、髪飾りのバレッタ。高貴な彼女にふさわしいロイヤルブルー、クリエイティブなところをターコイズ、女性性としての深すぎた愛情や嫉妬深さをマゼンタで表現しました

 同時進行でつきあっていた六条御息所ろくじょうのみやすどころはこの夕顔に猛烈に嫉妬します。嫉妬って、自分より下にみている相手にするものだと言いますが、まさにその見本のようです。御息所は元東宮妃、帝になるはずだった(若くして亡くなってしまったため、彼女は未亡人となった)人の正妻ですから、女性としてはかなり身分は高く、粗略に扱われるいわれはないわけです。

 御息所は、この夕顔も生霊となって殺しています。

 そして、私の大好きなキャラクターである、朧月夜!

朧月夜:大好きな割に色を選ぶのに苦心しました。彼女は官能的、利発、そんなイメージです。3色で表現するのは難しく、5色での作品を思案中

 朧月夜は、源氏が「兄帝に対して謀反の意がある」という無実の罪を着せられて須磨へ隠棲するきっかけになった女性です。彼女は源氏の異母兄である朱雀帝に入内じゅだいすることが決まっていたのですが、源氏と別れても恋仲だったことが世間に知られていて体裁が悪いので、宮中へ出仕するかたちで尚侍ないしのかみという役職につきます。いわば帝の秘書のような役割でしょうか。

 尚侍でも、帝の寵愛を受けて重んじられることもあり、彼女は朱雀帝に愛されますが、源氏のことも忘れられず、数年後、お互いいい年齢になってからも源氏と朧月夜は復縁します。それを知って哀しむ紫の上がまた、哀れでなりません。

 末摘花です。彼女は非常に滑稽な女性として、言ってしまえば源氏に物笑いの種にされるわけです。

末摘花:ビーズの赤は紅花の赤、水色は正月の衣配りで源氏が皮肉を込めて贈った色、そして茶色は……

 末摘花は、とても器量の悪い女性として描かれていますが、そんな相手も見捨てずに源氏は晩年に建てた六条院に彼女も住まわせます。六条院は、六条御息所亡きあと、土地を譲り受けて四季をテーマに築いた豪華絢爛ハーレムです。

 まだ源氏が若い頃、噂に聞く末摘花の姫君(彼女も宮家の内親王、最高に身分の高い女性ではあったのです)に興味をかきたてられ、女房に手引きしてもらい思いを遂げます。

 電気などなかった昔のこと、翌朝初めて明るいところで末摘花の容貌をまじまじと見てしまった源氏は、そのあまりの不細工さに愕然とします。その、寒い雪の朝に末摘花が着ていた熊の毛皮が滑稽で、そのイメージで茶色を入れましたが、なかなかどうして、茶色が全体を引き締めていい仕事をしています。紅花の赤は、本当はオレンジがかった朱色ですが、この赤いビーズも素敵なアクセントになっていると思いませんか?

 最後になりましたが花散里です。

花散里:こちらも水色は正月の衣配りの場面から。そして橘の花は白いとのことですが、どうしても柑橘のオレンジ色のイメージ。

 花散里は、誤解を恐れずに言うなら「都合のいい女」ですね。若き日の源氏は、彼女に端午の節句の薬玉を贈る約束をしながら、忘れていて遅れて届けるという失礼なヤツです。それでも花散里は自分は他の方々に比べて美しくないのだから、とわきまえて恨み言などいっさい言わず、控えめに奥ゆかしい。同じ女性として、友達だとしたらきっと癒し系で、疲れているときや悩んでいるときに話を聞いてくれそうな人。でも果たして、男性から見たら嫉妬もしない、たまに行ってもただ嬉しがるって、どうなの? 手応えないじゃん! と私はつまらなく思ってしまうのです。

 とはいえ、本当に彼女のような人格の人がいたら、頭が上がりませんね。良妻賢母の見本のような女性で、源氏は葵の上の忘れ形見、長男夕霧の母親役を彼女にゆだねます。でも、そこはやはり源氏。かつて自分が父帝の妃、藤壺に恋し、藤壺は源氏の子であるのちの冷泉帝を生んだわけです。夕霧が同じ思いを紫の上に抱かないとも限りません。だから美しい紫の上をひた隠しにし、あまり器量のよくない花散里に夕霧を預けた。でも夕霧は、台風で御簾みすがめくれ上がるほどの風が吹いた瞬間に、紫の上を垣間見かいまみてしまい、ドキドキが止まらなくなってしまうのでした。

 それでも、源氏と同じ過ちは起こさない。親子って、顔が似ていても中身は正反対だったりする。そこの対比も、作者の紫式部はうまく表現しているなぁ、と思います。


 こんな長い、暑苦しい文章を最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。そして、源氏物語が大好きな方、ご感想やご意見などありましたらぜひコメントをお願いします。

 また、私は源氏物語に関してただ好きなだけで、いくつもの文献を読み込んでいるわけでもなく、主観もおおいに入っているため、もし間違ったことがあればやさしくご指摘いただけるとありがたいです。批判的なコメントはどうかご遠慮ください。

 水引作品に関しても、まだ完璧とは言えません。これからも試行錯誤しつつ研鑽を重ね、ワークショップで提供したり、地域のマルシェで披露しようと考えております。


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こんゆじまじこ
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