「老いては子に従えだね」わかっているなら従ってくれよ! 口先だけの理解(それはそもそも理解とは言わない)はいらねぇ
いつになく激しい書き出しで驚かないでください。
昨日。
やっと、やっと、一緒に住んでいる75歳の母のお試し補聴器をレンタルすることに成功しました‼
思えばこのことについて、今年に入ってから何時間夫と話し合ったことか……。
母は、常日頃から息子(私の弟)がいかに勤勉で母親に優しいかを周囲に自慢し、3人の孫たち(私のふたりの息子と娘)がどれだけ自分を大切に思ってくれているかを周囲に自慢し……、以下略。
日頃から、
「老いては子に従えだね」
「みんな(私と弟や孫たち、ひ孫も含まれる?)には絶対に迷惑をかけたくない!」
と、豪語しているのですが。
去年の秋ぐらいから急激に聴力の衰えがみられ、ついうっかり普通の声で話しかけようものなら、
「え?」
と、聞き返されることが一気に増えました。というよりほぼ毎回。
去年6月下旬、同じ市内に住む母の叔母(私の祖母の妹)が86歳で亡くなりました。
その後、亡くなった大叔母の、88歳の夫(つまり母や私にとっては血のつながりはない)に大動脈瘤が見つかり、入院、手術の運びとなった時は、母の聞こえはかなり悪化しており、日常会話はもちろん電話も、こちらが声を張り上げて二度、三度と復唱させられることが常でした。
出先からかけてきた母の電話で、聞こえないと言うので何度も大声で叫ぶように話している私の声にドン引きの夫。更に、
「お義母さん、こんゆじのあんな大声ですら聞こえないんだ?」
と、ショックを受けていました。
そんな状態なので、大叔父の付き添いで病院に行ったところで、主治医の先生の大事なお話がほとんど聞き取れないのです。
やむなく、私が大叔父のキーパーソンにならざるを得ませんでした。大叔父夫婦には子どもがなく、5人いる弟妹も全員遠くに住んでおり、当然みな70歳以上の高齢者です。
年が明けてから、大叔父の様子が一時期危なげな時がありました。
一切認知症はなく、主治医の先生も「矍鑠としていらして」という表現を再三してくれていたにも関わらず、話の辻褄が合わない時が何度かあったのです。大叔母のお通夜お葬式、納骨の時は普通に使っていた携帯電話のかけ方が、あやしくなっていました。
「電話番号を押しても、かからないんだよ……」
ガラケーの、通話ボタンを押さないと発信しないということが、わからなくなっている様子でした。
いよいよ認知症になりつつあるのかな、と、大叔父のことを尊敬していた夫も私も、大きなショックを受けました。
大叔母の担当だったケアマネさんに相談してみよう、もしかしたらおじさんのことも担当してくれるかも知れない、それなら話が早いし! と、母にそのことを提案するも、
「困ったね……。
え? 聞こえない。
めんどくさい」
などと言い出す始末で、耳を疑いました。
何度も聞き返されることにうんざりして補聴器をすすめても、
「補聴器なんてカッコ悪い。
私の耳の穴の形が悪いのか、試しにつけたことがあるけど、すぐに取れてしまうから嫌だ」
挙句、
「お金が大変だからね、そうでなければすぐに買えるんだけど」
と言い出す始末。
去年から私が満足に働けていなくて、恥ずかしながら援助を受けています。そのため家計が厳しいから。つまり、嫌味です。
母は面倒なことが嫌いで、深く考えることも苦手です。本が好きな父や私とは真逆で、本は嫌いです。好んで読むのは健康に関する家庭医学書くらい。8年前に病気で入院、手術を経験したので、その系統のものだけは関心があります。
昨日はたまたま、私が眼鏡を作った眼鏡屋さんの入っているショッピングモールに弟と行くと言うので、しめしめと思い、ついて行きました。去年の私の誕生日に来ていた「補聴器2週間お試し¥1,000offクーポン」のハガキを握りしめて……(笑)。
「眼鏡屋さんで補聴器のレンタルができるから、まずは行って説明を聞いてみよう?」
と言うと、
「説明を聞くのは嫌だ。めんどくさい」
まるで子どもです。
ランチの間、頭に来た私はずっと黙っていました。私は黙っていると、とっつきにくい怖い人と勘違いされ、近寄りがたいオーラがあるようなので、母の言動に対して怒っていることをアピールするには充分でした。
それでも、眼鏡屋さんに向かって歩きながら、ぶつぶつ文句を言うので、
「老いては子に従えだね、っていつも言ってるけど従わないじゃない! 言うこと聞いてくださいよ!」
と大声で言っちゃいました。ショッピングモールの店内で……。
最初は眼鏡屋さんの店員さんに質問などされても、ふてくされてつっけんどんに受け答えしていてハラハラしたものの、いざ聴力検査に入ると観念したのか、おとなしくなりました(猛獣か)。
一昨年、私が介護施設で働いていて目にした利用者さんたちの補聴器とは、比べものにならないほど進化していて、小さくスタイリッシュなものがあると知りました。恐らく耳に掛けるタイプが『カッコ悪い』という認識のようなので、ワイヤレスのイヤホン型のものをレンタルすることに。まるで、今どきの若者が耳に突っ込んで音楽を聴くイヤホンのようです。
母の聞こえに合うようチューニングというのでしょうか、パソコンへ必要なデータを入力してもらい、Bluetoothでデータが入ったと聞いた時は、私の方が感心してしまいました。
この仕組みを、きちんと理解できる高齢者の方もおおぜいいるんだろうなぁ。
今朝母は、私のいる2階のリビングへ上がって来て、
「補聴器を入れてみたけど、これで合っているか確認してほしい」
と言いました。
午後は通院している病院で、担当のお医者様に、
「先生、娘に『周りの私たちが迷惑をしているので、補聴器を試してみてほしい』と言われて昨日からレンタルしてつけています。失くすのが怖いのでこのままで失礼します」
と言ってニット帽を被ったままなのを詫びたんだとか。
「まだ私たちはいいよ、お友達とかに、面倒をかけていることもあるんじゃないの?」
と聞くと、
「聞こえてないな、と気づいてもう一度大きな声で言ってくれる人がいる。でも、『え?』と聞き返した時に、『もういいです』と言われたこともある」
と言うのです。
あったんじゃん!
昨日私は大仕事を終えたような気がしていました。
そしてふと、数日前に夫と観たミスターチルドレンのPVに、やたらと補聴器が強調されていたことを思い出して、夫と苦笑したのでした。
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