【読書の時間】『魔女だったかもしれないわたし』
日本の有名な幽霊って女性ばかりだよなって思っていたら思わず歴史上の性差の問題に首を突っ込むことになって、いろいろ本を読んでそれが自分の視野を物凄い勢いで拡げてくれた。
海外には「魔女」という類似のトピックがあって、異端審問、魔女狩りなんていう言葉は聞いたことがあると思う。
自分の専門はあくまで「幽霊」に限定したかったのと、拡がりすぎると収拾がつかなくなるので基本的な事柄が飲み込めたあたりで「魔女」については引き返したけど、その流れで知ったある本がある。
『魔女だったかもしれないわたし』
エル・マクニコル 訳/櫛田理絵
生まれ育った村で中世に起きた魔女狩りの犠牲者のために慰霊碑を建てようとする少女の話。自閉スペクトラムである主人公はそれが今起きたら殺されたのは私かもしれないと怖れ、憤りを糧に行動を起こす。児童文学ということもあり、読みやすくて読後感も清々しいが、軽い話ではない。作中で取り上げられる魔女狩りは実際にイギリスで起きた事例を参考にしている。
実はこの本を知ったのは娘の吃音(どもり)の相談を受けてくれる通級指導教室。娘が先生と話してる合間に読んだ初任者指導教員の人が書いた新人の先生向けの資料で紹介されていた。人と違う子を頭ごなしに叱ってないか、または一方的な理解に基づいた指導で逆に追い詰めてないかよく考えようと綴り、続けてこの本を取り上げていた。
実際に読んでみたら、これは歴史と向かいあう自分を受け入れる個人の物語でありながら、同時に「魔女狩り」という人類史上に残る負の歴史の語り直しにもなっていることに気づいた。自分が常に感じている、歴史の向こう側に閉じ込められてしまった人達を語り直し、彼らの顔と名前を思い出していく作業。そして負の歴史から感じ取った共感から自身のかたちを見つけ出していく。これは「親心」ってやつかもしれないけど、なんだか読んでいて湧き上がってくるものもあった。
まぁ、それは大人目線の感想であって、子どもたちからしたら、無理解な教師や、奇異な目で見てくる人々、スクールカーストの理不尽さと向かい合うきっかけになる本なのかもしれない。
娘にもおすすめしたいけど、彼女には彼女でいまは『文豪ストレイドッグス』という充分すぎるほどに没入できる物語があるから、そのうちお手すきの時にってことで。
おすすめです。