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真面目な中年オヤジが静かにぶち切れる映画「アメリカン・ビューティー」

この映画の公開は1999年だったんですね。
私は恐らく20年以上前に見たことがあるんですが
ちょっとヤバいオッサンの物語くらいの記憶でした。

なのですが
中年を過ぎて見ると、中年だからこそ
むちゃくちゃ伝わるものがありました。

誰もがこのヤバいオッサンになる可能性がある。
それぞれに中年の危機に悩んでいるって
思える映画でした。

そして、改めて見ると
最初の5分間が圧巻で
一気に引き込まれました。

まず、冒頭で
思春期の娘が父親に嫌悪感を吐き
殺して欲しいと語っているVTR映像が流れる。

場面は切り替わり
主人公のレスター・バーナムが
死んだようにベットで眠っていて

僕は現在42歳で、
あと1年で死ぬ。
この時はまだ知るよしもない。
けれど、ある意味もう僕は死んでいた。

とはじまる。

そこから
一見幸せそうに見える家族が映る。
ガーデニングに勤しむ妻、
思春期まっただ中の娘。

「昔は幸せな家族だった」と
レスターが語る。

娘と旦那を乗せて出発しようとする妻。
娘と旦那を待ちイライラする妻、
クラクションをけたたましく鳴らす妻。
そんな中、娘がゆっくり車に向かう。
そして、妻は服のダサさについて嫌味を言う。
ようやくレスターが現われ車に乗ろうとしたところで
カバンを派手にぶちまける。

そこで、

2人は私のことを敗北者だという。
それは正しい。

でも、昔はこうじゃなかった。

と畳みかける。
あっという間の5分間。

もう一気に引き込まれます。
こんなにおもしろかったっけ!?
そして、本編がはじまる。

そして、
反抗期の娘のために両親は
娘のチアリーディングを見に行く

そこで、なんと
娘の同級生のアンジェラに一目惚れをする。

それから、
そのアンジェラの一言から
急に筋トレをはじめる。

そして、
ランニングをはじめ
マリファナを吸い、

「何も失う物のない普通の男です。」と
会社を辞めた。

今まで自分だけが我慢して暮らしていて
すっかり言うことを聞かなくなった妻や娘へも
アスパラガス料理ののった皿を壁に投げ付け
「口を挟むな、ハニー」と静かに言い放つ。

もう、むちゃくちゃ。

真面目な中年男性が、静かにぶち切れていく。
そして、長い間忘れていた自分を
猛スピードで取り戻していく。

一方で
成功しなくてはと、強迫観念にかられ
成功するために必死に自己暗示をかけ続ける妻。

隣の家の元軍人は
自己構築と規律の保守の権化のような退役軍人。
暴力で息子をコントロールしようとし、
規律が何よりも大切だと自分を押し殺し続けている。

その元軍人の妻は、
部屋が完璧に片付いているにもかかわらず、
来客に対し「散らかっていてごめんなさい」と
言ってしまうほど自分を押し殺し
旦那のために心を殺して生きている。

と、この映画に出てくる中年は
みんなそれぞれの立場や環境は違えど
一見幸せな家庭を気づいているように見えても
実はそれぞれに悩み、「普通」とは何かと
いわゆる中年の危機に苦しんでいると思える。

少し、ブラックジョーク的要素も大いにあり
見る人に取っては嫌悪感を抱く人もいると思います。

けれど、中年の危機に苦しむ中年男性には
何か感じるものがきっとある映画だと思います。
25年前の映画ですが色あせることなく驚きました。

U-NEXTでどうぞ~。

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