インドのカリスマ経営者に思いを馳せる
昨日、日経新聞のオンライン記事をみて、思わず声をあげてしまった。
「ラタン・タタ氏が死去 インド・タタ財閥元会長」
ラタン・タタ(Ratan Tata)といえば、インド最大の財閥タタ・グループを20年以上統率し、同社をグローバル企業に押し上げた世界的なカリスマ経営者だ。
記者時代も含め、もちろん会ったことはない。
それでも、M&Aなどの再編や企業ニュースを発信する身として、ラタン・タタがインド、そして世界のビジネス界に多大な影響を与えた人物であることは当然知っていた。
そして、私にとって、ただのカリスマ経営者というだけではない。
憧れの男性像というか、恋焦がれていた。
好みのタイプは?と聞かれると、「ラタン・タタ」と即答していた程だ(ほぼ、誰それ?みたいな反応が戻ってきたが)。
タタ氏はゾロアスター教なので、彼のためならゾロアスター教に改宗してもいい、とまで言っていた(もちろん、冗談ですが)。
彫りの深いルックス、鋭い眼光、圧倒的なオーラ。
寡黙な紳士という感じで、年齢を超越し、人としての魅力が伝わってくる。
日経に2014年に掲載された「私の履歴書」によると、4回結婚を考えたそうだが、結局生涯独身を通した。ちなみにマスコミ嫌いだったらしい。
タタ氏に関心を持ったのは、いつだろう?
2008年のタタ・グループによる英高級車「ジャガー・ランドローバー」買収のときかな。
「私の履歴書」を読んで、知れば知るほど、魅力的な人だな、と感じた。
インドでも有数の由緒ある家柄の出身で、幼少期に両親が離婚し、祖母に育てられたらしい。
アメリカのコーネル大学を卒業後、曽祖父が創業したタタ・グループに入社した。
彼の経営者としての実績はここで語る必要はないだろう。
私がラタン・タタに惹かれたのは、その人柄だ。
国内外の報道やSNSによると、大富豪であるのに質素な生活を送り、慈善家であった。
SNSでも、彼の普通っぽい生活に関するエピソードが多くシェアされている。
運転手付きの高級車には乗らずにホンダのシビックを自分で運転し、ホテルでも特別扱いを嫌った、とか、空港でも一人でスーツケースを運んでいたとか。世界有数の富豪なのに、贅沢を嫌い、貧富の格差が大きいインド人の生活の質を高めるために尽力した。
名門家出身の御曹司なのに、彼自身人生でおそらく体験したことがない弱者の立場で物事をとらえることができるのは、稀有なことだ。本当の意味で品格のある人だったのだろう。
彼はどんなふうに自身の人生をとらえていたのだろうか。
エキサイティングだったものに違いないけれど、リーダーとして孤独だったのではないか、なんて思いをめぐらす。
インドの産業界の先駆者として、カリスマ経営者として、そして一人の人間として、皆から愛され、そして尊敬されたラタン・タタ。
お会いしたことはないけれど、なんだかとても寂しい。
Rest In Peace, Ratan Tata.