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ガーネットの首飾り 〜美しい森の物語〜

遠い記憶、たしか小学校低学年の冬の日だった。
つけっぱなしのテレビで唐突に長編の海外アニメが始まって、なんとなく一人で観ていた。


心優しい女の子と、素直になれない意地悪な女の子が出てくる。
二人は姉妹だったかもしれない。
そして、王子様が登場し、心優しい女の子にガーネットの首飾りを贈る。意地悪な女の子はそれを羨む。

トラブルが起きたか何かで、ガーネットの首飾りは井戸に落ちて無くなってしまう。女の子たちはそれを追うことになり、井戸の底へ降りて行く。
すると魔物か妖怪のような者がいて、首飾りを返してほしければ たくさんの赤ちゃんの面倒をみるようにと命じられる。

心優しい女の子はとても上手に赤ちゃんたちの世話をするが、意地悪な女の子は同じようにできず、赤ちゃんにスープを飲ませるのも荒っぽく大泣きさせてしまう。


…こんな話だったけれど、私の記憶はここで途切れてしまっている。この手の物語にありがちな、お決まりのハッピーエンドであろう結末も、まったく憶えていない。


小さな弟がいる私は常に「面倒見のよいお姉ちゃん」で、赤ちゃんに荒っぽくスープを飲ませるシーンに衝撃を受けたのだと思う。
実は、意地悪なシーンにショックというわけではなくて、タブー行為をおこなうキャラクターにうっかり魅了されてしまった、そんな自分に戸惑ったのかもしれない。

おそらくそのせいで、この後のストーリーがまったく頭に残っていない。

物語における「意地悪なキャラ」は、どういうわけか気になる存在だ。真面目で良い子の主人公よりも目が離せなかったり、少し色っぽかったり、ちょっと蓮っ葉な物言いをマネをしてみたくなったりする。


あの作品のことがなんとなく頭の片隅にあって、探したこともあるけれど、タイトルがまったく分からなかった。ディズニーアニメを少し地味にしたような、古い感じがするけれど綺麗な絵柄だった。
最近ふと気になり、「ガーネットの首飾り」「井戸」「赤ちゃんにスープ」などのキーワードでまた検索してみた。

すると…

意外にもあっさり、本当にあっさりと謎が解けてしまった!
あらためて、ネットの力は凄い。

そのタイトルは…


美しい森の物語 王子とマリア姫

1973年製作、旧西ドイツとイタリアの合作映画。
ドイツ語の原題は
「Der Zauberstein」(訳=魔法石)
あるいは
「MARIA D'ORO und Bello Blue」(訳=素敵なマリアと青いベロ)
ウィキペディアにもページがあった。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/美しい森の物語〜王子とマリア姫〜
ビデオやDVD販売は無いので、今のところ視聴は難しいとのこと。
検索してみると、私と同じく子どもの頃に観てタイトルが分からず、ネットで調べてみたという人が ちらほらいるらしい。
30代以上の方なら、もしかするとテレビの放送で一度くらいは観たことがあるかもしれない。


私が初めて「ガーネット」という言葉を耳にしたのが、この作品だった。
ルビーとはまた違った響きの赤い宝石は、幼い想像力によって心に小さな火を灯した。物語の中でしか見たことはないけれど、洋館やお城の暖炉の奥でちろちろと燃える炎はきっとガーネットの色だ。

宝石らしい重みのある語感もいい。
濃い赤色というところもドラマチック。
選ばれた女の子にだけ贈られるという「ガラスの靴」的役割をするところも、子ども心に特別感があった。
和名を柘榴石といい、果実にたとえられるところも魅力的だ。

1月の誕生石として知られるガーネットの連想ノート。


(画像引用元 https://www.sarah-et-louis.com/smp/item/P5393.html)

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inclusion みつい うみ
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