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「風鈴物語」②


ある日の事だった

どーもグラスとのハモリがしっくりこねぇ
「どーしたんだよ!」って聞いたら

🎐あんた、あたしの体ひび割れてきちゃったよ…
この前の台風の時、激しく歌い過ぎたよ

🎐けっ、ガラスの体ってのは柔に出来てんだなー!
俺なんざ、何ともねぇや!で、いつ治るんだ?治るんだろ?

🎐ゴメンよあんた、あたし分かるんだよ
あたしの体は今夜の風次第って、ところなんだよ
あたしらはぜーんぶ風任せさ、仕方ないだろぅ

🎐おい、待てよ!夢語り合ったじゃねぇかよ!
ずっと二人で歌い続けようってよ!

🎐ゴメンよ、本当にゴメンだよ、あんた…

でもね、ずっと続く夢なんて無いんだよ。夢は壊れて良いんだよ、だから新しい夢を見れんだからさ

あんたは今まで通り透き通った音色で歌っておくれよ、空の上から何時も聴いてるからさ…

あんたにはあんたにしか鳴らせない音があるんだよ

冷たい風や暖かい風、私らは風を選べない
でも、どんな音を鳴らすかは自分次第さ!

生き様ってのはさ、競い合うもんじゃ無い
あんたにしか歌えない音を鳴らすんだよ!

聴かせておくれよ、最後の夜にさぁ!

🎐………………..

俺はそれきり何にも言えなくなっちまった。初めて願ったぜ「風なんか吹かねぇでくれ!」ってな

へっ、風鈴が絶対言っちゃいけねぇセリフだぜ!

だけどよぅ、最後に「サヨナラ」
だけは言わずにいられねぇだろ
でも言う為には風が吹かねぇといけねぇ
そうするとグラスの体は割れちまう…

どうすりゃあ良いのか分かんねぇまま
時間だけが流れたよ…

心なしか風受けの紙も涙で重くなってる気がした
そんな夜だったぜ…

……………………………………….

〜あぁ 悲しいけれど「サヨナラ」言わずにいられない 風はゆっくり動き始めた〜

………………………………………..

壊れて砕け散るグラス最後の歌声「あんた、ありがとう」はアイツの生涯で最高に優しくて美しい歌声だった事は、この俺が何があっても証明できるぜ!

~続く~

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