「器」
コンビニのレジに並ぼうとしていたら
横から若くてチャラそうな兄ちゃんがやってきた
どっちが先か微妙な感じだったので
咄嗟に自分が先だ!と無言の圧をかけた
そしたら兄ちゃんは声に出さず「どうぞ」
と軽い手振りで譲ってきた。
私は自分のことを「小っさ!」と感じると共に
兄ちゃんのナイスガイっぷりに嬉しくなった
店を出る時、爽やかな風が吹いていた…
後から兄ちゃんも出て来て乗り込んだ車に
「○○ガス」と社名が書かれていた
私はふと思った「車に看板、背負ってるから
印象を良くする為、私に譲ったに違いない!」
急にブラックな部分が出て来て
また自分の「小っささ」を感じてしまった
苦笑いしながら空を仰いだ私を
風も苦笑いしながら通り過ぎた…
私は兄ちゃんに声に出さない「どうも」を
手振りで伝えようと思い、振り返ったが
兄ちゃんはもう居なかった
風はすでに凪いでいた…
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