団地物語〜夏の終わりの白い杖
こんにちは「団土也」(だんつちや)と申します。
団地内の歩道の草刈り作業をしていました時のお話しを致しましょう
危険防止の為、歩道に沿って工事用の赤いカラーコーンを数メートル間隔に設置し「草刈り作業中」と看板を立てて作業しておりましたが
そこへ白い杖を持った目の不自由なおじさんがやって来たのです
数十メートルの長さに等間隔で設置されたカラーコーンに何度もぶつかり躓きながら歩いておりましたので、私は「危ない!」と思い近寄って「大丈夫ですか?」と声をかけようとしました
すると、その瞬間おじさんの呟きが聞こえてきたのです
「ちきしょう!こんちくしょう!誰だ、この野郎!クソったれ!」実際はこれに数倍する口汚さで罵っていました
私は、その瞬間までおじさんに優しく声を掛け手を引き、歩く自分を想像してました
お礼を言われた後はなんて返そうか?なんて、ウットリと考えていた所におじさんの呟く罵声!私はまるで雷に撃たれた様に足がすくみ動けなくなってしまいました
今考えれば、きっとおじさんはハンディを背負って想像もつかないような人生を歩んで来られたのだと思います
時には絶望、イジメもあったかもしれません。故にカラーコーンが並んで置かれている事を、誰かにいたずらされているとでも勘違いしたのでしょう
しかしその時の私は「折角優しい気持ちで声をかけようと思ってたのに!」と一気に心が冷め、怒りさえ覚えたことを恥ずかしく思います
「今、草刈り作業中でカラーコーンが並んでいるのでこちらからどうぞ」と何故言えなかったのだろうか…
今年も雷鳴轟く夕立が来るたびに、おじさんの「白い杖」を思い出しながら夏が終わりました…