おーい!必ず何処かで誰かが見ているぞ!
郊外のホームセンターには灯油が売っています。
補給の為のタンクローリーが定期的に回って来ますが、お客の混雑時には満杯の駐車場を大型タンクローリーで走るのは、ちょっとテクニックが要るようです。
私が目撃した顛末をお話し致しましょう
その日、ホームセンターに回って来たタンクローリーを運転していたのは恐らく新人で、ズングリした男性の少し鈍臭いけど真面目そうなタイプ。
助手席には意地の悪そうな先輩。何故意地が悪そうかと申しますと「右、気を付けろ!」とか「もっと大回りしろ!」と、注意と言うか怒鳴り散らしていて、開け放した窓から皆んなに聴こえるのです。
確かに駐車場の細い通路を大型のタンクローリーで走るのは少々きつそうで、運転している新人は先輩の容赦ない𠮟責に明らかに舞い上がっており、いつも以上にフラフラあたふた、危なっかしい運転をしているようでした。
そのうちに駐車スペースから少しはみ出して駐車している車にぶつかりそうになり、新人運転手は慌てて急ブレーキを踏みました。
すぐさま意地悪な先輩が降りて来て「ほら、お前が下手くそだからぶつかったじゃないか!」と決め付けて詰るのです。
そこへ、車の持ち主がやって来ました。40代くらいのお父さんと小学生くらいの息子で、即座に先輩は「申し訳有りませーん!うちの新人が擦っちゃったようで」と平身低頭。新人は何も言えずうな垂れています。
遠巻きで私が見ていたところ、ギリギリでぶつかってはいない様な気がしましたが、運悪く相手のバンパーに昔こすった様なキズが付いていたのです!タンクローリーとぶつかりそうになった場所からは少し、ずれていたのですが…
車の持ち主のお父さんは、すかさず「あーあっ!これ、こすっちゃってるなー!」と言い出し、そこに意地悪先輩は「会社で弁償しますから」と勝手に話を進め連絡交換をしてその場を去っていきました。
おそらく会社に帰り新人のダメっぷりを喧伝すると共に自分の新人教育の大変さをアピールする事でしょう。
そんな風に想像しながら、私も後味の悪さを引きずりながら帰ろうとした時、目撃したのです!あの親子の会話を。
父親はニッコリ笑って「どうだ!凄いだろ!うまくいったなー!」
子供は、はしゃぎながら「やったね!お父さん凄い!凄い!」
楽しそうな笑顔でホームセンターを後にする親子に私は背筋がゾッとすると共に
あの新人に「幸あれ」と祈り、溜まっているホームセンターのポイントを全て差し上げても良いとさえ思いました。
おーい!必ず何処かで誰かが見てるからな!腐らずに真面目なままでいてくれなよな!