勝手にしやがれ (1959) 仏

ジャン・リュック・ゴダール監督

カッコいい！ と言ったら この映画。
当時のシティボーイや イエイエガール
今や折り紙つきの ジジィもババァも 遠い昔に憧れた。

勿論、ジャスミン(←私よ)も このババァの一人
2回、3回、繰り返し観たなあ。

今どき令和の DQNも ニートも
タイトルだけは知っている？
最高に乾いた この映画。

今回も飛び切りの 大ネタばれ♡

　　　　　　　　　　〇

ハリウッドのギャングスター
ボギーこと ハンフリー・ボガートに憧れている
ミシェル (ジャン・ポール・ベルモンド)には
既成の道徳観念というものが まったく無い。

ボギーの真似して 親指で下唇なぞりながら
欲しいものがあれば かっぱらっても
別段、悪いことをしたとも思わない。

今日もマルセイユで 盗んだ車でパリに向かった。

車を走らせている このシーンで
ミシェルは唐突に カメラ目線になり
観客に こんな言葉を投げつける。

「もしアンタが 海が嫌いで、山も嫌いで
　そして、街も嫌いなら・・・勝手にしやがれ！」

しばらく走ると 白バイが追って来たが
ミシェルは車にあった銃で 警官を射殺した。

パリには夏に知り合った アメリカ人留学生の
パトリシア (ジーン・セバーグ)がいた。

ベリー・ショートが よく似合う彼女は
新聞のライター見習いをしながら
歩道を行ったり、来たり・・
アメリカの新聞を売っている。

このときの ジーン・セバーグのスタイルや
フランス語の売り声が 可愛いい。

恋人同士であるはずの フランス人のミシェルと
アメリカ人のパトリシアの会話が
まったく嚙み合わないところも 妙におしゃれ。

「××って、なんのこと？」

パトリシアは たびたび 尋ねるけれど
それは言葉の意味だけじゃなく
ふたりの "なにもかも"の違い からくる疑問

「これから、シャンを歩いて・・・」
「シャン、って？」
「シャンは、シャンゼリゼさ」

この二枚目から程遠い ベルモンドの
言うこと、やることが すべてカッコよく見える。

さて、
何も考えていないような ミシェルにも
ふたりでイタリアに 行きたいという思いがある。

でも パトリシアの将来の夢は 新聞記者であり
まだ若い今は 自由が欲しい。
警官殺しで指名手配中のミシェルと
この先ずっと 逃避行だなんて！

ミシェルが煩わしくなった パトリシアは
衝動的に 警察に密告した。

「10分もしたら 警察が来るわよ」
ミシェルの顔に 深い疲れと絶望感が走る。
「もう、俺は疲れたよ」

それでも外に走り出たミシェルは逃げる。
警官が追って来た。
バタバタと車道の真ん中を走る
その後ろから 拳銃が発射され ミシェルは路上に倒れた。

パトリシアも走って来た。

ミシェルは煙草を一口吸うと
息を引き取る寸前に つぶやいた。
「まったく、最低だ」

聞き取れなかったパトリシアが
傍の警官に尋ねる。

「今、なんて？」
「おまえは最低だとよ」

美しいパトリシアの顔が 一瞬曇った。
そして カメラ目線になって

「でも、最低って、なに？」

ここで FIN

　　　　　　　　　　〇

このラストには痺れました。
いろいろ いろいろ 思い返しても
このラストを超える ラストは見つからない。

ジャン・リュック・ゴダール・30歳の 監督デビュー作。
既存の映画手法に背を向け 
手持ちカメラで パリの街並みを即興的に撮りまくり
"ヌーヴェル・ヴァーグ"の 代表作品となった。

原案・脚本は
当時『大人は判ってくれない』で脚光を浴びていた
27歳のフランソワ・トリュフォー

この前年には
『死刑台のエレベーター』で監督デビューした
25歳の ルイ・マルもいて
フランス映画界は凄い時代でしたね。

この映画、日本でも大ヒットした訳ですが
このヒットに 大きく貢献したのは
何と言っても 原題の「息切れ」を
『勝手にしやがれ』と命名した 秦早穂子さんだと思います。

秦早穂子さんはこの当時 
映画輸入会社「新外映」に勤務しており
買い付け担当として フランスに行っていた時
パリの撮影所で この映画の20分ほどのラッシュを見て
即、買い付けを決め この時このタイトルを決めたそうです。